■ご質問内容
今週、融解胚移植をしましたが、今朝から生理痛に似た腹痛と下痢の症状があります。生理痛時に服用している鎮痛剤を飲んでも大丈夫でしょうか?
■当院からの回答
★ 着床時期は、排卵から7日目前後であり、分割胚移植からは3-5日後、胚盤胞移植からは1-3日後と推定されます。
★ 排卵期の卵胞壁や着床期の子宮内膜には、軽い炎症反応が生じていることが知られています。
- 排卵期:プロスタグランジンおよびトロンボキサンの合成酵素の一つであるcyclooxygenase(COX) は,排卵前期の卵胞に発現し、排卵を促進させるプロスタグランジンE2の合成に関与しています(採卵時には、排卵防止目的にNSAIDであるインドメタシン坐薬を使用する場合があります)。
- 着床期:胚盤胞周囲にはプロスタグランジンであるプロスタグランジンが増加しており、着床に重要な役割を担っているとされており、特にCOX2が着床に重要とされています。
★ 痛み止めとして使用されることの多いNSAID(非ステロイド性解熱鎮痛薬)はCOXを阻害することにより抗炎症、解熱、鎮痛の効果を示しますが、NSAIDsによるCOX阻害が、着床を障害するかもしれないという懸念があります(動物実験や試験管での実験データは存在するもののヒトでどのようになっているのかについては明らかではありません)。
このためCOX阻害作用のある下記のNSAIDは避けることをおすすめします。
- 成人用アスピリン(バファリンなど)
- ロキソプロフェン(ロキソニンなど)
- イブプロフェン(イブなど)
- ジクロフェナク(ボルタレンなど)
- インドメタシン(インダシンなど)
- メフェナム酸(ポンタールなど)
★ 着床期に使用するのであれば、下記のNSAID以外の解熱鎮痛薬が推奨されます。
- ピリン系:NSAIDsではなく、解熱鎮痛作用はあるが消炎作用はないスルピリン(メチロンなど)、イソプロピルアンチピリン(セデス・ハイなど)
- 非ピリン系:NSAIDsではなく、解熱鎮痛作用はあるが消炎作用はないアセトアミノフェン(アンヒバ、カロナール、小児用バファリンなど)
★ 下痢が続いているようであれば胃腸炎の可能性がありますので、鎮痛剤だけでなく内科的に診てもらって治療を受けてください。