■ご質問内容

着床不全のため、子宮内膜の受容能改善と子宮筋腫縮小の目的でリュープリン注射をご提案いただき、月1回トータル3度の注射を凍結胚移植前にしました。


その後の移植結果は、1度目は着床(のちに稽留流産)、2・3度目は陰性でした。

 

3度目の陰性判定時の診察で「現状は着床の妨げになりそうな大きな子宮筋腫もないし、既にリュープリン注射しているので、生理が来たらそのまま次の胚移植周期に入ってもよいのでは」という内容の診断をいただいた(と思う)のですが、帰宅後思い返すと、これは「子宮筋腫に限ってのこと」だったのでしょうか?


もしくは3回目の胚移植前のリュープリン注射は、子宮内膜の受容能改善に対してまだ効果が期待できるのでしょうか?

 

■当院からの回答

リュープリン注射用キット1.88mgは、GnRHアゴニストの注射液で、1ヵ月に1回の注射で卵胞発育を抑え月経を止める作用があり、「子宮内膜症」や「過多月経、下腹痛、腰痛及び貧血等を伴う子宮筋腫における筋腫核の縮小及び症状の改善目的」として保険適用がある薬剤で、着床不全に対しての保険適用はありません。


このリュープロレリン(GnRHアゴニスト)注射{月1回を2~3ヵ月)をして完全に内因性のホルモン分泌を押さえ込んだ状態で胚移植を行うことで妊娠成立が得られる場合があるとの報告(Fertil Steril 2019; 112: 98)があり、母体側の環境変化を期待して、保険適用外なので自費診療として使用することがありました。


3月までは体外受精自体が自費診療であり、少しでも有効と考えられる治療をオプションとして個別に組み合わせて、それら治療費総額に対して助成金がでる制度がありました。


4月からは体外受精などの生殖補助医療が保険適用になったことに伴い、例外として保険診療との併用が認められる先進医療(保険診療外療養、自費)を除いては保険診療と組み合わせることができなくなっています。


先進医療として認められていない治療を併用すると、その治療費だけでなく保険診療とされる治療費も含め「全てを自費」としてしかできなくなっています。


着床不全(胚移植を行っても繰り返し着床しない)の原因は、受精卵(胚)自体にあることも多く、母体(女性)の治療をしても、「残念ながら必ず結果に繋がる」とは言えません。このことも踏まえておく必要があります。


また、「受精卵(胚)に異常がないかを調べてから移植しよう」という試みが移植前胚染色体異数性検査PGT-Aですが、この検査についても当院では全額自費としてしかできなくなっています。


保険適用は自己負担額軽減になり良い面も多々あるのですが、治療内容については制限があり、また「夫婦一緒に受診しなければ治療計画をスタートできない」といった制約もあります。

2年後には保険制度の改定も予定されていますが、医療者からの声はなかなか行政に届きません。
NPO法人Fine などを通じて皆さまのご意見を結集し、より良い望妊治療環境ができればと思います。
よろしくお願いします。


 

下記の記事もご確認ください。

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