■質問内容

貴院に凍結保存してある受精卵を、海外で着床前診断するために業者に依頼し輸送することは可能なのでしょうか?

 

■当院からの回答

 

★ 凍結受精卵移送に伴う受精卵ダメージのリスクがあります(当院ボンベから移動用容器に移し替え⇒移動(委託業者・航空便)⇒他施設での移動用容器からタンクへの移し替え⇒実際に使用する際の融解)

 

★ 凍結受精卵の移送は、これまで日本産科婦人科学会の体外受精登録機関を相手先医療機関として行ってきた実績はあります

 

★ 融解後に胚盤胞が凍結前の状態に復帰する率(生存率)は院内データでは99%程度ですが、実際には融解して確認するまで分かりません

 

 PGT-Aは、受精卵の染色体数を調べ、数の異常がない受精卵を子宮に戻すことで、流産を減らし、妊娠率や出産率を高める方法として考えられています。現在、「反復体外受精・胚移植(ART)不成功症例および反復流産症例および染色体構造異常例を対象として、着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性を検討する多施設共同研究」が進行中です。当院も参加して実施していますが、PGT-A結果によっては「移植できない」「モザイク胚である」といった場合もありますし、また「胚移植できる」と判定されても出産にいたる割合は60~70%と考えられています。

 

★ PGT-Aを産み分けに利用することは我が国では倫理的に認められていません。PGT-Aに関する臨床研究では数的異常、一部の構造異常の解析結果のみを説明し、性別に関する情報は開示しないことが明記されています

 

上記のことからおすすめできませんが、受精卵はカップルに帰属するため、受精卵の搬出・移送を拒否することはできません。受精卵の移送に際しては、①受精卵の受け入れ先施設の確保、②移送業者の確保、③配偶子・受精卵移送の同意書提出など全て、ご自身で行っていただくしかありません。なお受精卵移送の当院費用も発生します