■質問内容
Q1.
先生に子宮内膜が薄いといわれました。 他の条件がすべて良だったとしても子宮内膜が薄いということで妊娠率はガクッと下がるのでしょうか? では、なぜ子宮外妊娠するのでしょうか?卵管にも10mm以上の内膜ができる場合があるということでしょうか?
Q2.
子宮内膜ポリープの手術をした、翌月から子宮内膜のあつみが7mmもいかないのですが、なぜでしょうか? それまでは、9mm、10mmとあったのですが、 もどるのでしょうか?
■当院からの回答
体外受精の胚移植では、胚の評価と共に、子宮内膜(着床環境)の重要性がしばしば議論されます。
当院では子宮内膜が8mm以上あることを基準として、胚移植を決定しています。
子宮内膜が薄い場合に7mm未満は妊娠低下するとされていますが、複数周期観察をして7mmを超えることがなければ、6mm台でも胚移植を決定することもあります。
5mm台の内膜厚でも妊娠したとする報告もあります。しかし、7mm未満の場合に胚移植を行うことが極めて少ないために、どの程度の確率で妊娠するのか正確なデータはありません。
逆に厚ければ厚いほど妊娠率が高くなるわけではなく、10mm以上ではプラトーになり、厚すぎる場合には子宮内膜ポリープや子宮内膜増殖症なども考慮する必要があります。
これまでに、体外受精胚移植で子宮内膜を厚くする方法として、アスピリン、ビタミンE、アルギニン、バイアグラ、G-CSFなどが報告されています。
G-CSFを除いては、血流を良くすることによって、内膜を増殖させるという考え方です。
子宮内に移植するにも関わらず異所性妊娠=子宮外妊娠(卵管妊娠)が発生するという事実からは、受精卵が着床するためには内膜の厚さ以外の因子も働いていると考えられます。
2016年の当院データでは
- 全妊娠に対する異所性妊娠の割合 0.9%(9/987)
- 胚が子宮内膜に着床する割合(新鮮胚移植29.0%、融解胚移植40.7%)
- 胚が卵管に着床する割合(新鮮胚移植0.6%、融解胚移植0%)
- 全妊娠に対する異所性妊娠の割合 0.9%(9/987)
上記の結果であり、卵管に妊娠すること自体はきわめて低い確率と言えます。
子宮内膜は厚さだけでなく、子宮内膜の状態(着床環境)が大切なのではないかと思われます。「子宮内膜が薄い」と子宮内膜の状態が悪いことが多く、「子宮内膜が厚ければ」ある程度は状態がカバーされるのではないかと考えています。
アッシャーマン症候群(子宮内癒着症)は、およそ4/10,000の確率で認められ、これまでは子宮内操作(手術)による医原性疾患と考えられていました。しかし、子宮手術歴のない方にもアッシャーマン症候群が見られることから、先天性(遺伝的)のケースが存在することが想定されます。従って、流産の掻爬手術などの子宮内操作、子宮奇形に伴う「炎症」、あるいは子宮内膜炎、性器結核などに伴う「感染」を引き金として、「遺伝的要因」も加え、子宮内血管構築の不具合からアッシャーマン症候群になりやすい方がおられるのではないかと推定されます(Hum Reprod 2018; 33: 1374)。
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