Q.

人工授精した後に、立ちっぱなし、歩いたり、軽く走ったり、重いものを持ったりする仕事は大丈夫でしょうか?

 

また、車での長時間の移動などは、大丈夫でしょうか?

 

A.

人工授精後も通常通りの生活で構いません

 

人工授精(子宮腔内精子注入)は、膣洗浄後に子宮腔内にチューブを挿入して0.2ml程度の精子液を注入します。

 

この操作時に伴ない少量出血を認める場合があります。

 

膣からの出血がある場合や下腹痛(排卵痛かも知れませんが)がある場合は、夫婦生活は避けておいた方が良いと思います。 

 

人工授精後の安静の有無が妊娠率に影響するのか?

検討した論文を紹介します。

Hum Reprod 2017; 32: 2218

2010〜2014年に原因不明あるいは軽度男性不妊の方498名を、人工授精後15分安静群非安静群にランダムに分け、妊娠成績を前方視的に検討しました。ランダムに割り付け、6周期全て15分安静あるいは全て非安静で実施しました。また、いずれの周期もHCG 10000単位をトリガーとして使用し、その40〜42時間後に人工授精を実施しました。妊娠継続率は、安静群(32.2%76/236)と非安静群(40.0%98/245)で有意差を認めませんでした。また、流産率、多胎妊娠率、出産率にも有意差はありませんでした。

 本論文は、安静群と非安静群をひとつの施設で同一条件で実施したものであり、妊娠継続率に違いはないことを示しています。したがって、胚移植の場合と同様に、人工授精後の安静も不要と考えられます。

 

ただし、人工授精後5-8日前後で着床の時期を迎えると考えられています。この時期に 激しい運動、性交などの子宮収縮を助長すること、腹部を圧迫するような動きは避けることをお勧めします。