老化とL-カルニチン

ミトコンドリアの機能の低下は老化の一因と考えられています。年齢とともに組織内のカルニチン濃度が低下するとミトコンドリア膜の状態も悪化するので、カルニチンも老化に関係している可能性があります Ann NY Acad Sci 2004;1033:108) 加齢ラットを使用した研究で、高用量のアセチル‐L-カルチニンとαリポ酸(抗酸化物質)を補給することでミトコンドリア崩壊が減少することが示されています。 

卵子・受精卵とL-カルニチン

L-カルニチンは、長鎖脂肪酸を燃焼の場であるミトコンドリアに運搬する際に必要な生体成分で、ミトコンドリアの機能を改善し、β酸化による効率的燃焼を促進、エネルギー供給を活発にし、種々の細胞の増殖・機能の促進効果を持つことが知られていますHum Reprod. 2017 ;32:2404。また、卵子の質がミトコンドリア数や胚の呼吸(ミトコンドリア機能)と相関し、胚盤胞発生率の向上の可能性も報告されていますFertil Steril. 2009 ;91:589

精子とL-カルニチン

精液中のカルニチン含有量は精子数と精子の運動率に直接関係があることから、男性の不妊治療を行う上で、カルニチンは重要であることが示唆されています。カルニチン補給(23 g/日34カ月間)を行うと精子の質が改善されることや (Fertil Steril. 2006; 85: 1409) ランダム化試験においても、男性不妊症患者100例にカルニチン2 g/日を2カ月間摂取したところ、精子の濃度と精子の総運動率および前進運動率が増加したとの報告があります (Fertil Steril 2003; 79: 292) この研究の利点はミトコンドリアの脂肪酸酸化の増加(より多くのエネルギーを精子に供給)と睾丸中の細胞死の減少に関係する可能性があります (Ann NY Acad Sci 2004; 1033:177.。しかし、男性不妊症患者21例を対象とした最近のランダム化対照試験によると、カルニチン3 g/日を24週間摂取したところ、精子の運動率および総運動性精子数にプラセボ投与群と比べて有意な増加は認められなかったとする反対の報告 (Fertil Steril. 2006 ;85:1409) もあることから、不妊治療としてのカルニチンの在的な価値を評価するには、大規模デザインされた研究が必要です。