厚生労働省は6月26日、薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会に対し、免疫抑制剤3種の妊婦への使用制限を解除する案を示し、了承を得ました 7月中にも、製薬会社に添付文書の改訂を指示し、妊婦への使用を認める方針との報道がありました。


免疫抑制剤3種は、臓器移植の拒絶反応の抑制などに使われる「タクロリムス」「シクロスポリン」「アザチオプリン」です。いずれも過去の動物実験で胎児に奇形を発生させる危険性がある「催奇形性」が報告されたため、妊婦への使用が制限されていました。3種の薬剤は、臓器移植後の拒絶反応抑制のために処方されるほか、膠原(こうげん)病治療薬としても使われており、処方されている15~44歳の女性は推計約3万人程度おられます。今回の決定により「禁忌の項目から妊婦または妊娠している可能性がある婦人が外される」ことになります


 国立成育医療研究センターが3種について海外の研究結果を収集、評価したところ、投与された妊婦の胎児で先天奇形の発生率が有意に上昇したとの報告はなかったことから、今後は、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合、通常の薬剤と同等レベルの扱い」で投与が認められることになります。
 

補足:

妊娠において胎児を受け容れるためには、母体の免疫環境が重要と考えられています。Th1Th2のバランスがTh2になっていることが妊娠維持に必要であるとの報告から、Th1/Th2比増加に着目した研究がいくつかなされています。その中でも近年、体外受精反復着床不全症例のなかで、免疫抑制剤であるタクロリムスによる妊娠率改善の可能性を示した研究結果が報告され、注目を集めています。