精巣機能障害の20-30% を占める精索静脈瘤は、治療可能な疾患です。

 

精巣のすぐ上の静脈叢の血流がうっ滞し、こぶ状のシコリが作られることがあります。解剖学的な位置関係から左側にみられること多いです。

 

この精索静脈瘤による血流不全が熱ストレスや酸化ストレスになり、造精機能障害の原因になると考えられています。また造精機能障害だけでなく、陰嚢や鼠径部に痛みや違和感を訴える方もいます。

 

触診と超音波カラードプラー法で検査し、静脈瘤の大きさで次の3つに分けグレード診断します。

 

グレード1   立位腹圧負荷で触って確認できる

グレード2   立位で触って確認できる

グレード3   視診で静脈瘤を確認できる

 

一般に、挙児を希望する男性に精液所見異常がありグレード2 以上の精索静脈瘤が認められとき、手術適応と考えられます。またグレードと精液所見や他の身体所見、血液検査所見から総合的に判断して、手術を勧める場合があります。

 

手術は局所麻酔下に鼠蹊部の皮膚を約2.5㎝小切開し、顕微鏡で観察しながら、こぶ状の静脈を精巣に比較的に近い位置で処理する精索静脈瘤低位結紮術です。およそ1時間で手術は完了します。

 

翌日からは仕事復帰可能で傷はほとんど目立たなくなります。基本的には保険診療で手術が行えます。

 

合併症と術後の静脈瘤再発は5%以下ですが無いとは言えません。また手術効果には個人差がありますので、必ず改善するとは言えませんが、手術によって精液所見は、精子濃度で約75 %、運動率で約40%、精子形態率で約50% 改善すると言われています。

 

最も重要な妊娠率ですが、手術後の自然妊娠率は  25-60%と報告されています。WHO (世界保健機構) の追跡調査でも、手術をした群が手術しなかった群より妊娠率が良好であったと報告されています。

 

当院の調査では、夫の精索静脈瘤手術後の妻の治療成績は、妊娠率69.2%、生産率51.6% と良好な成績が得られています。

 

最近のトピックスとして、精索静脈瘤の治療は体外受精の成績にも寄与することが分ってきました。当院での精索静脈瘤治療後の顕微授精成績について後方視的に検討しましたが、手術を行うことで、顕微授精の成績が改善することが示唆されています。

 

岡山二人クリニックでは川崎医科大学附属病院泌尿器科に精索静脈瘤手術をお願いしています。