アラン著 古賀照一訳 「3」 白水社

 

感情・情念・表徴

 

第4章 アキレウスの怒り

 

 

 

アキレウスは、ギリシア神話に登場する大英雄で、ホメロスの叙事詩「イリアス」の主人公である。

 

アキレウスはさまざまな怒りの中で最も怒ったと言われるのが、美しい奴隷の「プリセイス」を奴隷並みに

 

奪われたことに対して怒った物語だ。

 

美しい奴隷の「プリセイス」を奪われただけではなく、「奴隷並みに」扱われたことが精神を悪化させたのだ。

 

 

恋は、富と貧しさの間に生まれた「息子」であると戯れにプラトンは言った。

 

 

この高邁な高貴な人間でさえ、予想外のことにはめ落ちると、相手を軽蔑しているかと思うと

 

たちまちに変わって大変尊敬すると言った具合で、こうなると四六時中「屈辱」にまみれることとなる。

 

はじめ自分が投げかける「非難の言葉」がことごとく

 

そのまま自分自身に返って来るのである。

 

そして

 

自分自身を見下したところで何の役にも立たないこと。

 

自分自身を見下すことに他ならないのである。

 

これを「自縄自縛」というのだ。

 

 

人間の情念は、富と貧しさとの間にあり、常に「葛藤」している。

 

精神の気高さ、自律力の強さ、高邁な達児の情念(富)と

 

弱さ、奴隷的従順さ、無分別、愚かさの情念(貧しさ)の

 

両方を持っているのだ。

 

野心が失望となり、嫉妬となり、屈辱に見舞われ、自縄自縛に陥ってしまうのだ。

 

 

人間は

 

アキレウスのように高邁な心を持っていても裏腹に嫉妬心の強い心も同時に持っているのだ。

 

どちらが先に生まれても、自縄自縛に陥るのであるから

 

自己を如何にコントロールすることが大事であるかを知るべきであること。

 

 

プラトンが

 

「恋は、富と貧しさの間に生まれた「息子」である」といったのは

 

自縄自縛するなという戒めである。

 

 

 

2024.04.07愛知県入鹿池にて