色々と奥様がおっしゃるには


佐々木重役との間には一度も妊娠する事が無かったと


きっと佐々木には子胤が無かったのだと思うのとも


言っておられた


大体において、佐々木重役は若い時から仕事だけで


二人の関係は月に一度くらいしか


無かったとも仰っていた


そして結婚して直ぐから舅と姑から


孫はまだかまだかと催促されて悔しい思いを


一杯している時にあの事があって


11月ころ妊娠している事が判ったので


ひそかに病院に行き検査をしてはっきりした


早苗はこのとき絶対に昇さんの子だと思ったの


だから内緒を通して仮に離婚されても生むつもりでした


幸いに義父が子煩悩で


ひい爺さんに似ていると言ってくれるので


本当に助かったのね


姑は昇一郎が2歳になったとき亡くなったから



でも今日からこうして堂々と逢えるから嬉しくって

でも昇さんの奥さん邦代さんに悪いと思うの


これからどうすれば良いか今日二人で考えましょう


邦代さんご旅行なら昇さん遅くなってもいいでしょ


早苗は大丈夫ですから 昇一郎達も


転勤の準備でしばらく来られないでしょうからね


私は「はい」と言って駅前で買った


モンブランのことを思い出した


「すみません、駅前で買って忘れていました」


仏壇の前においていたケーキ屋が入れてくれた


手提げ袋を奥様の前に差し出した


奥様はあらお土産を下さるの


と言って袋からだし包装紙を丁寧に開き


箱のふたを取ると、あら!


早苗の大好物を何で知っていたのと嬉しそうに


微笑んで立ちあがると皿とフォークを二本を持ってきて


モンブランを一つを皿に入れ二人の間に置き


二人でいただきましょうと言って


フォークを手渡されました


一個のモンブランを両方からつついて食べながら


若い恋人みたいで嬉しいわと


二人は目を見つめながら微笑み食べました

あの時、寮に来た郵便配達の人だけでしょ


あれからもう49年になるのね


来年は昇さんと早苗の金婚式よ


私は昇さんにとっても感謝しているの


そしていつも昇さんのことを考えながら生活していたのね


昇一郎が生まれてから


あの子の顔を見るたびに昇さんに似ているでしょ


日に日に似てくるのが嬉しくてね


お乳をやりながら昇さんのことを考えて


いろんなことを錯覚することがあったわ


昇一郎が生まれてからは義父がね



毎日のように顔を見に来るようになって


昇一郎の顔を見るたびに


ひい爺さんそっくりだと言って


喜んでくれました


だから、佐々木はちっとも疑ってはいなかったと思うのよ


昇さんとのことは佐々木が生きている間は


絶対に知られないように気をつけたの


昇さんに逢いたくて逢いたくて


でも我慢をしたわ