奥様は立ち上がると仏壇の前に座り
先ほど灯したローソクの灯明を消し
襖を閉めてしまわれました
そして席に戻ると、あそこが開いていると
落ち着かないのよね
今日は眠ってていただきますからと言って
脇においてあるビール瓶の栓を抜き
グラスを持ち上げて私に注いでくれと差し出された
既に大分飲んでおられるのにと思ったが注いであげた
昇さんも飲んでねと言って注いでいただいた
「昇さんごめんなさいね」と言って頭を下げ
早苗は昇さんの将来をだいなしにしたのではと
ずっと後悔していましたの
実は昇一郎は昇さん貴方の子供ですの
と言われた
私はなんと返事をして良いのか判らず
奥様の顔をじっと見つめているだけでした
「奥様それはご主人佐々木重役はご存知だったのですか」
私はやっとそれを聞いてみた
奥様は首を横に振って「知らないで逝ってくれたの」
「でも昇一郎さんという名前はどうしたのですか」
私は聞いてみた
「それはね、佐々木の父がつけた名前なの」
「佐々木の祖父が昇衛門という名前だったそうなの」
私もね義父から名前を昇一郎にしたと聞かされたとき
本当にびっくりしたのよ
だってね
私と昇さんの仲など誰も知らないはずでしょ