オーナー
「さてさて、オルトロスの連れてきたアイツは何分持つかのう!
わしの『戦いの美学』に泥を塗るように、あっさりと無様な姿で負けようもんなら…
オルトロスもろとも借金の形にしちょるからなぁ~」
人手が足りていない事もあり、オーナーとしては人件費の必要としない人材はかなり欲しい手駒であった。
オルトロスの『でまかせ』と思えた言葉で、クラウドが強かろうが弱かろうがも、
正直どちらでも良かったのである。
そんなさまざまな思惑が重なりながら、
《クライドvs.グラシャラボラス》
の幕は切って落とされた。
グラシャラボラス
「グヘヘヘ…
さて、どういたぶってやるかなぁ~
俺達はな、オーナーの大事な装備を守ることで金が発生するんだが、
それ以外にお客さまから『ボーナス』がもらえるんだよ。
まぁ、いろんな趣味の金持ちはいるからなぁ…
だからアッサリ倒れるんじゃあねえぞ!
グフフ…」
グラシャラボラスの言うように、オーナーからの給料以外に、
『タニマチ』のような人もいて、グラシャラボラスはコロシアムでもかなりの人気があり、
タニマチも多く、活躍に比例してご祝儀も貰ったりしていた。
クラウド
「お前の事情も、オーナーも、観客も俺には興味ない…
…俺は早くヤツに会わなくてはならないんだ…
そう…早く……
(…どうして俺は……こんなに………焦っている??)
………また……間に合わなくなってしまう……。
(そうなんだ……間に合わなくなるのが……
怖いんだ……。)」
またしてもクラウドの意識が遠退く…。
その瞬間を意図していたワケではなかったが、グラシャラボラスは拳をふり降ろしてクラウドに襲いかかった。
ガッギィィィイイインッ!!
クラウド
「クッ……!!」
間一髪、クラウドは意識を取り戻し、バスターソードでのガードが間に合う。
「おおおおおおおぉぉぉぉ!!」
「ワー!!ワー!!」
その時、ものすごい大きな歓声がコロシアムを覆った。
グラシャラボラス
「グヘヘヘ~!!
俺の一撃をガードするとはなぁ~、
聞こえるだろ、この地鳴りの様な歓声が!!
だいたいの挑戦者が今の一撃で終わっていたと言うことだ。
俺様の一撃耐えただけでも珍しいんだぜぇ!!
いいねぇ~
この注目の中でお前をいたぶる…
いったいいくらになるかねぇ~
そのボロボロの剣であと何発耐えられるかなぁ!!。」
グラシャラボラスはゾゾのスラム、そして世界崩壊後を生き抜いてきた生命力、
さらにコロシアムに来てからも名うての実力者やモンスターを相手に勝ちを重ねていただけあり、
巨体に見合うパワーはもちろん、巨体に似合わぬスピードに回避能力、
そして戦いを勝ち抜いてきた事で得た威圧感も纏っていて、
口だけではなく、かなりの実力も持っていた。
ただ、この時グラシャラボラスは、
クラウドがその身にバスターソードひとつで、
肉体に見合わぬ大剣、
堅い装備をしているワケでもない、
「そもそもあの剣を扱えるのか?」
「振れるとしても当たるのか?」
「ボロボロの剣で俺にダメージが入るか?」
「俺の攻撃をヤツが耐えられるのか?」
と言う思考、
そこから見定めたクラウドの力量、
「ふふっ…負ける要素は一ミリもない。」
と、完全にナメてかかっていた。
グラシャラボラス
(ただ、一撃を"まぐれ"とはいえ防がれてしまったなぁ~
客からのオレの評判が落ちるのはいただけんし…
ここは決まっちまうが大技でハデに吹っ飛ばすかぁ!!)
「その大剣ごとぶち抜いてやるぜぇぇぇ!!」
『みぎアッパーぁぁぁあ!!』
ありったけを込めた右拳、
そしていままでの相手にはまったく反応できなかったスピードで一気に距離を詰め、
クラウドの腹部めがけて鋭いアッパーを繰り出した。
が…
クラウドは、何度も拳を交えてきたタークスのルードの格闘術、
そして、いつも傍で見てきたティファの拳や体術、
ジェノバの細胞がそうさせたのか、
あるいはここまで培ってきた実戦経験が生きたのか、
このグラシャラボラスの『みぎアッパー』も
実際のスピードやパワーはかなりのモノなのだが、
初動の筋肉の動き、
所作、
そして"クラウドをナメてかかっていた"事、
この一撃で決めにいった事、
大振りに力任せに振るう拳は、
クラウドにとっては『素人の拳』に他ならなかった。
ブゥウォォォンッッ!!
空を切るグラシャラボラスの右拳。
グラシャラボラス
「な、なにぃっ!」
半身になったグラシャラボラスの身体と交差して、横からボソボソっと声が聞こえる。
クラウド
「今まで相手に恵まれてきたようだな」
そういうとクラウドは横に避けた反動を利用して身を翻し、
そのままグラシャラボラスの首筋にバスターソードで一撃入れた。
『ズンッッ!!…』
グラシャラボラス
「カハッッ…
…バ…バカな………」
ズズゥゥゥゥンン…!!
膝からグラシャラボラスは崩れ落ち、
クラウドは観客に背を向け、いつものポーズでバスターソードを回した。
"1倍台"の本命が負ける大波乱、
まさに『大金星』扱いで、
観客たちも損した人間の方が多いのだが、
その"勝ちっぷりの派手さ"に、クラウドにものすごい大歓声が沸き起こった。
オルトロス
「…(パクパク)…
クラウドのヤツ………やりおった!!
し、しかもあのグラシャラボラスを一撃で…。」
ジークフリード
「フッ…
な?あながちお前は間違ってなかったと言うことだ。
(まぁ…運も良かったがな。)
それじゃオレは払い戻し行ってくる。」
ジークフリードの言う通り、
グラシャラボラスが冷静に、クラウドをナメてかからず勝負していればもっと善戦出来たのである。
結果、断然人気のグラシャラボラスを一撃で沈めるカタチになり、
クラウドは衝撃のコロシアムデビューを果たすのであった。
オーナー
「……………これは………!!
タダで人材が手に入るくらいに考えておったら…
とんだめっけもんだ!!
オルトロスのヤツなかなかいい仕事するじゃあないか。
"ジークフリード一本かぶり"の試合ではオッズが偏ってしまいヤツの扱いには困っておったんじゃ。
このクライドをここから祭り上げて行けば……」
そう考えるとオーナーは早速オルトロスの元に駆け寄ってきた。
オーナー
「オ~ルト~ロス~!!
よくやった!
正直お前の適当な言い逃れくらいに思っとったんじゃが、『ジークフリードに匹敵する』と言うのも分かる強さじゃったなぁ!!」
オルトロス
「は、はぁ…ありがとうございます…」
オーナー
「なんじゃ?あんまり喜んでないのぅ。
お前が連れてきたんじゃ、このままクライドが稼いでいけばお前の借金も減っていくじゃろうに。」
オルトロス
「ええ…そうなんですが…正直びっくりしまして…
ワイがこのまま押さえられるかどうか分かりまへんねや…」
オーナー
「なーに弱気になっとるんじゃ!
お前の借金を減らすまたとないチャンスじゃろ!!
第一、今回はしっかり参戦しとるじゃないか??
ヤツもここで稼ぐつもりなんじゃろ?利害は一致しとる!」
オルトロス
「それはまぁ…そうやったんですけど…
アイツ"正宗"を持ってるヤツが目的だったみたいで、そのグラシャラボラスを倒しちまったんで…
もうここには用はないんですよ…。」
オーナー
「"正宗"を??
なんじゃ、グラシャラボラスは"担当してた"だけで正宗を使ったことはないじゃろ。
正宗は『わしの所有物』じゃ。
だが…わしはクライドとは面識はないのう…。
帝国兵なら制服でも顔は分かるんじゃがの…」
顎に手をやり、オーナーは少し考えた。
オーナー
「そうだ!、それを利用するんじゃ!
"正宗を持っている男"、いや、"持っていた男"に用があるんじゃろ?、
『正宗は《預かりモノ》、
ここにいずれ持ち主は取りに来る』と。
『それを他の挑戦者に渡すわけにはいかない。
だからクライド、お前が挑戦者を阻止して正宗を守り続ければ、いずれ持ち主が現れる』
こう伝えるんじゃ!!」
オルトロス
「なるほど…
今グラシャラボラスにいくらクライドが問いただした所で、
出てくるのはオーナーの名前ですもんね!!」
オーナー
「そうじゃ!わしのところに来たらそう話しておく。
お前のところに来てもそう言うんじゃ!
逃がすなよぉオルトロス!
クライドは最終的にコロシアムの主役まで持っていき、ジークフリードに当てる!!。
ただ、オッズが拮抗する位まで他の試合を重ねて無敗で行かせるんじゃ!!」
かくしてクラウドは、
特に行く宛もなかった事と、手掛かりである"正宗"がこのコロシアムにある事実から、
この話乗り、ここからコロシアムで連戦連勝を重ねていった。
《記憶を無くした剣士クライド》
そのウワサはたちまち広がっていく。
~コーリンゲンの村の酒場~
男A
「ゾゾにはもう戻りたくねぇよ。」
男B
「だがまぁ威張ってたグラシャラボラスはコロシアムにスカウトされたんだろ?
昔よりは過ごしやすいんじゃねえか?」
男A
「バカ言うな。人一人いなくなった所であそこは変わらねーよ!
…そういやアイツ、グラシャラボラスは負けたんだってな。」
男B
「らしいな、アイツを倒すヤツがいるんだから世の中広いよなぁ~、
しかも一撃でらしいぜ。」
男A
「コロシアムには物凄く強いヤツがいるんだなぁ~、
そいつはそこから無敗か、
『ある男』を探してるって言ってたな。」
男B
「《記憶を無くした剣士クライド》ねぇ、
一辺見に行ってみるかなぁ~。」
シャドウ
「…………………。」
つづく。














