フルムーン・パーティー 第7話 | 大村あつしオフィシャルブログ「ボクは不死鳥」Powered by Ameba

フルムーン・パーティー 第7話

所詮、俺なんて(2)

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「うーん。この香り、いいかもな。でもなぁ……」

 俺が苦手なのは、俺自身がそんな物を付ける資格がないというか、似あわないというか、ちょっと、自分はそういうレベルに達してないんじゃないか、という気持ちが先に立ってしまうからだ。

 サクラは、俺がそんな事を考えてるのを見透かしたように、肩をすくめてため息をついた。

「あー、また『俺には合わないから』ってやつか? でもさ、『ひと夏の体験』があれば、お前のその性格も変わるかもしれないぜ? フルムーン・パーティ。音楽好きの女の子がわんさかの開放的な夏のビーチ。だったら、さすがのお前でも、なんか声かけちゃうような雰囲気になるんじゃないの?」

「いやー、無理だろー」

 すると、サクラはクスクスと笑った。

「でもさ、ここでこうしてるよりは、新しい出会いもあれば、チャンスもあるよな? 正直、お前が変われるいいチャンスになるといいなあ、なんて思ってるんだよ。幼馴染としてはさ」

 なんだかんだ言って、やっぱりサクラは俺の事を気にかけてくれている。

確かにそうかもしれない。

環境が変われば、夏のビーチの勢いがあれば、俺もちょっとノリで自分の実力以上の事ができるかもしれない。

「おし、行くか。タイ」

 俺はサクラに、拳を突き出した。

その拳に、サクラも拳をぶつけてくる。

「そうこなくっちゃな」


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ハートフルな「現代のプロレタリア文学」との評価をいただいております(*^_^*)

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