北海道はゴールデンウイーク前のいまが桜の見ごろです。
北海道民は遅い春を数えて、1月は行く、2月は逃げる、3月は去ると春を待ちわびます。
寒冷地の北海道は寒さに晒される日々が五ヶ月も続きますから、これから暖かくなる!と、考えるだけで気持ちも和むというもの。
私は春になると思い出す光景があります。

入院先の病院に咲いていたエゾヤマザクラ。
そして5月になると一斉に鳴きはじめるエゾハルゼミというセミの鳴き声です。
病院の中のことを「寄せ場」病院の外のことを「娑婆」(シャバ)と呼びますが日の当たらない薄暗い病院暮らしのなかで唯一春の訪れを嫌でも感じるのがサクラとハルゼミのコンビネーションでした。
薄暗い寄せ場から燦々(さんさん)と日の当たる眩(まぶ)しい娑婆を見て、ある者は遠い故郷を思い出して、ある者は春の穏やかさを感じて、二度と出られないであろう窓の外に思いを馳せていました。
外の世界と病院の敷地を分ける防風林にエゾハルゼミは力の限り一斉に鳴く。
そのとき、我々は春の終りと初夏の始まりを知ったのです。
そんな春を20年、30年と繰り返した猛者たちもほとんどが鬼籍に入りました。
遠い寄せ場の記憶と共にサクラは今年も見事に咲いています。