大和には群山(むらやま)あれどとりよろふ天(あま)の香具山登り立ち国見をすれば国原は煙(けぶり)立ち立つ海原は鴎立ち立つうまし国ぞあきづ島大和の国は  

                                                                                        舒明天皇

(意訳)奈良にはたくさん山がありますが、何でもそろっている一番の山と言えば、あまの香具山でしょうね。山上からはるかを眺めますと、あちらこちらに人々の生活が見えますし、大きな池には水鳥がやってきています。ほんとにいい県ですねえ、奈良県て。

 

これはかってな無茶苦茶な意訳ですから、口外しないでください。

 

かさなりて四方の枯山(からやま)眠りたり遠山おろし来る音のする   釈迢空

山に囲まれている、その山はすっかり木々が葉を落とし、眠っているように静かだ。遠くから風が来るようだ、その音が響いてくるようだ。私は静かに旅の宿でその音を聞こう。

 

いい加減な訳です。読み過ごしてください。

 

たのしみはとぼしきままに人集め酒飲め物を食へというとき  

                       橘曙覧(たちばなあけみ)

これだけの金しかないが、そんな時でさえ友はやってきてくれた。さあ、飲もう,食おうと勧めることができる私は何と幸せだろうか。

 

江戸時代の歌人です。良寛さんと似ています。

 

其子等に捕へられむと母が魂(たま)蛍と成りて夜(よ)を来たるらし  窪田空穂

目の前を蛍が飛んで行った。あの蛍はきっとこの子どもたちの母に違いない。そっと様子を見に来たのかなあ、元気でいるかとそっと会いに来たのかも。蛍は亡き人の魂だったのだ。

 

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)  栗木京子

あなたと乘った観覧車。忘れられない、なぜならば、あなたにとっては一日のことかもしれないけれど、私にとっては一生のことだもの。

 

カラオケは苦手代わりに手品する我をみな見る歌を忘れて   神田民司

なにがよかったのかわかりません。でも、あの栗木さんがちょっと目に留めてくださった。本当にありがたい。NHK短歌11月号テーマ「カラオケ」佳作。