※フェースブック 2016.3.11 に投稿した。

 

【格差の実証研究と政策】

最近集中的に読んでいる格差の実態に関する手元の著作・翻訳6冊を紹介します。

いろいろな雑件を終えてこのような本を基礎に日本における介護政策という長くフォローしてきたテーマに結びつけば、という思いです。左から。

 

1 ピケティ

2014年暮れ、フランス人の「21世紀の資本」(みすず書房)の翻訳が話題になった。著者のピケティは、来日してテレビでも紹介された。本屋の経済学のコーナーでは「ピケティ」本が沢山ならんでいます。英語版も50万部売れたという。易しくはないです。

翻訳は本文だけで600ページを超しますが、格差の実態を長期にわたるデーターで明らかにした。第13章「21世紀の社会国家」では、医療と教育の公共性を訴えています。

 

2 アトキンソン

イギリスのアトキンソンは、格差研究の先駆者でピケティの先生格です。2015年暮れに邦訳(東洋経済)が刊行された。冒頭で、ピケティが本書の意義を強調しています。

終わりの方p354-357では、イギリスを念頭に15の政策が提案されています。

2015年のノーベル経済学賞は、ディートン(アメリカ)が受賞したが、これも格差研究(開発途上国の)で、一部下馬評ではアトキンソンも同時受賞かといわれていた。

そのアメリカで民主党の大統領候補にサンダースが健闘していることを見ても、アメリカでの格差論は、現実の政策課題になっています。

 

3 ドイツ

ベルガ―の本は、2016年1月に邦訳が刊行された。社会保障がしっかりしているとの印象のドイツでも、格差が拡大しているという実証研究です。個別の大金持ちのルポも加わっています。「ドイツ版ピケティ」で、ドイツの社会保障政策を若いころからフォローしてきた私には新鮮な内容です。

 

4 国際比較研究での日本

フランスのルシュバリエの本は、2015年岩波書店から刊行された。専門的な研究書ですが、第4章「現代日本の社会的和解の特質」は、日本の研究者との討論を経て、日本における格差の増加とその政治的な要因を分析しています。

 

5 橘木俊詔の著作

これまでも、多数の格差研究を発表し、「格差社会―何が問題なのか」(岩波新書、2006)などの啓蒙書も多い。

「21世紀日本の格差」(岩波書店、2016年2月〉の方は、1及び2を踏まえて、日本の格差の現実をまとめ、経済政策との関連や高齢者の貧困に触れています。

「日本人と経済」(東洋経済、2015)は、啓蒙的なもので、労働者・生活者の視点で研究成果を平易に紹介しています。教育、女性、社会保障に関する分析と提言に著者の一貫した思想を見ることが出来ます。