知る人ぞ知る著名人ですね。

この人が素晴らしい背景を描いて支えてきたのです。

 

山本二三の絵の実物を観に行こうと思えば、山本二三の故郷である五島列島の山本二三美術館を訪れなければなりません。

 

山本二三美術館(長崎県五島市) | 公式サイト (goto-yamamoto-nizo-museum.com)

 

 

ところが、たまたま近くで山本二三展を開催しており、これを逃したらじっくり観る機会がないと思い、展覧会開催中の松坂屋美術館を訪れました。

アニメーション美術の創造者 新・山本二三展 -天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女- | 松坂屋美術館 | 松坂屋名古屋店 (matsuzakaya.co.jp)

 

初めて描かれた実物を観て、作品がとにかく細かいのに驚きました。

小さな画用紙に鉄筆を使用して細かい作業をしています。

 

最も勉強になったのは、ぼかしの方法です。

まず画用紙を裏表ともに水で濡らし、余分な水は吸い取ります。

要するに絵の具がのりやすいように、馴染ませるのですね。そして乾く前に地塗りをしています。

 

下地のデッサンが細かく描かれており、それに合わせて絵の具を載せていくのですが、ぼやかすには、大きな筆で横にサーっとなぜるのです。

このぼやかしが背景の基礎で、ここに微妙に違った色を何重にも重ねていきます。

それが実在感を生み出します。

 

やっぱりプロは違うなと感じさせられました。

 

山本二三の仕事場は、とても合理的です。

細かい作業をするので机上に強い光をあてるためのライト。よく使用する27の絵の具の瓶は蓋を開けたままになっています。不透明色で彩度の高い発色が特徴のニッカーのポスターカラーですね。そのほかに蓋が開けられていない予備の瓶もあります。

絵の具がすでに入った日本画用の15の絵皿、そのほかに21の未使用の皿が積み上げられ、いつでも他の色を使用できるようにされています。

 

細かい作業をするために、各種定規、とくに手元に置かれている直定規はよく使われるのでしょう。

 

筆は、通常の水彩画の平筆に、日本画用の筆やペインティングナイフ、さらにはボールペンやサインペン、色鉛筆があって描くためには何でも使うということですね。

一番上にのっている大きな筆が、ぼかしに使われます。

そのほかエアブラシとドライヤーも机からぶら下がっていますね。よくみると吊りフックの?の形をした頭の輪にエアブラシが突っ込んであります。

 

特徴的なものは一番手前に置かれている水が入った醤油差し。絵の具を薄めるための水の分量をだすのに手頃で使い勝手がいいのでしょうね。そして奥の棚には見慣れたお菓子の箱で小さな棚を作って画用紙が積まれています。作品を乾かしたりするのにも使っているのかな。

身近なものを使って使い勝手の良いように工夫されていてとても面白いです。

 

画用紙が小さいサイズなので、全体に仕事場はコンパクトに収まっています。

なかなかプロの机上の状態をじっくりとは観られないので、とにかく勉強になります。

 

東灘ジャーナルより

 

 

さて、展覧会では写真撮影が出来ませんので、websiteから2点だけ。

 

神戸新聞より「火垂るの墓」の「裏通り」(上)、「疎開先」(下)

 

私はアニメ「火垂るの墓」を観ていません。

戦争のとても悲しい話なので、やるせない気持ちに陥るのがわかっているからです。

ただ、日本の原風景のような、この「裏通り」等は、そんな悲しい物語にかかわらず、山本二三の良さがあらわれていて、いい作品だと思います。

 

付け足しです。

展覧会の出口の売店で販売されていた、100枚限定の超横長の複製画がほしかったですが、残念ながら売約済みでした。