ドラフト指名寸評 広島編 | 広島カープデータベース【別館】

ドラフト指名寸評 広島編

広島指名の全9選手(支配下6名、育成3名)の詳細スペック、プレースタイル、そして球団の編成意図と課題を分析していきます。

 

1位:山里 宝(やまさと・たから) 内野手 / 亜細亜大

  • ポジション:内野手

  • 投打:右投右打

  • 体格:174cm / 78kg

  • 経歴:神戸国際大付高 〜 亜細亜大(主将)
     

【選手寸評】
亜細亜大で主将を務め、今夏は自らのバットとリーダーシップでチームを東都制覇に導いた攻守の要。
174cmとプロの内野手としては決して大柄ではありませんが、東都1部通算10本塁打を記録したパンチ力ある打撃が最大の持ち味です。
プレースタイルを分かりやすく例えるなら、菊池涼介からケタ違いの守備力だけ引いた感じぐらいですね。
さすがに菊池選手ほどの規格外の守備範囲を求めるのは酷ですが、ある程度プロの一軍でやっていける守備力加え、強い打球を弾き返せる打力は大きな魅力です。

 

【編成評価】
不祥事絡みで壊滅状態に陥った「二遊間の即戦力補充」という明確なニーズに基づく指名です。
山里選手自身の実力は文句なしにハイレベルですが、ドラフト全体の相場としては「2位中盤〜3位」が適正ラインでした。
楽天・中日の2球団競合にとどまった渡部海捕手(青学大)への特攻を回避し、消去法的な単独1位として繰り上げた点は、フロントの極めて弱気なリスク回避姿勢の表れと言えます。
1位のプレッシャーを背負うことになりますが、開幕から即座に二遊間の定位置争いに割って入る活躍が義務付けられます。
 

2位:西野 啓也(にしの・けいや) 捕手 / 立命館大

  • ポジション:捕手

  • 投打:右投右打

  • 体格:180cm / 85kg

  • 経歴:高知高 〜 立命館大
     

【選手寸評】
関西学生野球リーグを代表する強肩強打の大型捕手。
二塁送球1.8秒〜1.9秒台を計測する強肩など捕手としての基礎能力も高いですが、特筆すべきは何と言ってもその「打撃力」です。
3年秋の明治神宮大会で一発を放ち、4年春のリーグ戦では打率.348で首位打者とベストナインを獲得。
さらに本日行われた立同戦でも、2本の2点タイムリーを放ってチームを勝利に導くなど、大舞台での勝負強さは折り紙付きです。
 

【編成評価】
スカスカの捕手陣において、打撃力だけで今すぐ一軍のベンチに入れる実力を持っています。
坂倉選手の負担軽減はもちろん、ポスト坂倉を睨んだ捕手補強として西野選手自体の価値は間違いなく高いです。
ただし、他球団の需要を見極めれば3位(全体31番目)まで残っていた可能性は十分にありこの2位(全体18番目)で即戦力投手の有馬伽久(ソフトバンク2位)や平田玲翔(巨人2位)を見送って前倒し指名した「指名順のマネジメント」には疑問が残ります。

 

3位:野原 元気(のはら・げんき) 投手 / 京都産業大

  • ポジション:投手

  • 投打:右投右打

  • 体格:182cm / 85kg

  • 経歴:塔南高(現・開建高) 〜 京都産業大
     

【選手寸評】
恵まれた体躯から投げ下ろす角度あるストレートは最速152キロを計測。
大学進学後も右肩の手術など2度の故障を乗り越えて這い上がってきた本格派右腕です。
直球にカットボールやツーシームを交え、今秋は完投能力を取り戻しました。
 

【編成評価】
度重なる故障歴とリーグ実績を考慮すると、客観的なドラフト相場としては「5位〜下位、あるいは育成枠」の評価にとどまる素材でした。
もともとポテンシャルは高い投手ですが、4年秋の登板を見ても、この3位という上位枠に見合うだけの劇的な球威の復活や大きな飛躍の兆候を私は見出せませんでした。
前評判より高い3位指名で1年目から一軍戦力となった岡本駿投手の前例があるだけに、スカウト陣の「隠れた眼力」が正しかったと証明されることを祈るばかりです。

 

4位:吉川 凌平(よしかわ・りょうへい) 投手 / 千葉商科大

  • ポジション:投手

  • 投打:右投右打

  • 体格:186cm / 90kg

  • 経歴:習志野高 〜 千葉商科大
     

【選手寸評】
2部に低迷していたチームを1部昇格へ牽引し、昇格を果たした3年春から千葉県大学野球連盟で圧倒的な投球を披露してきた186cmの大型本格派右腕。
大学進学後の肉体改造で最速156キロまで球速を伸ばし、鋭く落ちるフォークやスライダーで三振の山を築きます。
最大の武器は「先発完投能力」。
1試合150球超を投げても140キロ台後半を維持する強靭なスタミナを備え、メジャーリーグのスカウトも視察に訪れたスケールの大きさを誇ります。
 

【編成評価】
上位3枠のドタバタ劇から一転、今ドラフトにおけるカープ最大のファインプレーと言える指名です。
すでに高い奪三振能力を持っていますが、プロの環境でもう一段、二段とスケールアップできる余白を残しています。
床田投手・森下投手の流出を見据えると、素材型ではあるものん速いうちから先発に入ることを求められます。

 

5位:光弘 帆高(みつひろ・ほたか) 内野手 / 明治大

  • ポジション:内野手

  • 投打:右投左打

  • 体格:178cm / 84kg

  • 経歴:履正社高 〜 明治大(副将)
     

【選手寸評】
高校時代にU-18日本代表を経験し、名門・明治大でも副将としてチームを牽引したエリート内野手。
東京六大学でベストナインを受賞した実績を持ち、がっしりした体格から広角に強い打球を放つ左の強打が最大の武器です。
直球に力負けしないスイングスピードと選球眼の良さを誇り、打撃の完成度は大学屈指のレベルにあります。
 

【編成評価】
打撃力そのものは魅力十分ですが、プロの一軍基準に照らした際、「守備範囲と送球の安定感の面で遊撃手を守り切れるか」という守備位置の適性には疑問符がつきます。
将来的には二塁手や三塁手へのコンバートが現実的であり、1位の山里選手や既存戦力とのポジション重複をどう整理するのかが課題となります。

 

6位:森 煌誠(もり・こうだい) 投手 / NTT東日本

  • ポジション:投手

  • 投打:右投右打

  • 体格:184cm / 90kg

  • 経歴:徳島商高 〜 NTT東日本(3年目)
     

【選手寸評】
2023年夏の甲子園で徳島商を牽引し、初戦の愛工大名電戦で10奪三振完投勝利を挙げるなど日本中を沸かせた本格派右腕。
社会人の名門・NTT東日本で体づくりと実戦経験を重ね、高卒3年目の解禁年を迎えました。
3年間を通じて公式戦で登板する機会は多くなく、解禁年の今年も目立った登板実績を残せたわけではありませんが、恵まれた体格から投げ込む重い直球とフォークの威力は依然としてプロ級です。
 

【編成評価】
今ドラフトで指名された大卒選手よりも1歳若い21歳で獲得できた点は大きなメリットです。
名門企業からの6位指名となるため入団交渉の難易度は高いですが、NTT東日本の指揮を執るのは新井監督の駒澤大学の1学年後輩にあたる北道監督です。
強固な大学パイプを通じ、この順位でもプロ入りへの道筋が事前に整っていたからこその指名である可能性が高いと見ています。


育成1位:車谷 仁(くるまたに・じん) 内野手 / 茨城アストロプラネッツ

  • ポジション:内野手(遊撃手)

  • 投打:右投右打

  • 体格:178cm / 75kg

  • 経歴:福井工大福井高 〜 福井工大(中退) 〜 堺シュライクス 〜 茨城アストロプラネッツ
     

【選手寸評】
遠投115mの強肩と50m6秒2の俊足を誇る身体能力抜群の大型遊撃手。
関西独立リーグの堺からBC茨城へと渡り歩き、今季フォーム改良と肉体改造に着手した結果、打率.306、6本塁打、14盗塁、OPS.883をマークし「打てる大型ショート」へと化けました。

【編成評価】
大卒2年目世代にあたる満24歳であり、高校生のように時間をかけて育てる素材ではなく明確な即戦力指名です。
支配下枠の出し惜しみによって二軍の試合運用すらままならない二遊間の頭数不足を、独立リーグ屈指の苦労人のハングリー精神で埋めにいく狙いです。
持ち前の長打力を春先からアピールし、早期の支配下昇格を狙いたいところです。

 

育成2位:田代 旭(たしろ・あさひ) 捕手 / 筑波大

  • ポジション:捕手

  • 投打:右投左打

  • 体格:180cm / 84kg

  • 経歴:花巻東高 〜 筑波大
     

【選手寸評】
花巻東高校時代、佐々木麟太郎選手の1学年下で「4番・捕手」を務め、高校通算52本塁打を記録した左の強打者。
二塁送球1.8秒台前半を叩き出す強肩と、思い切り良く振り切るスイングから放つ長打力が最大の武器です。

【編成評価】
高校時代の強烈なインパクトに比べ、筑波大進学後は全国大会の露出が少なかったこともあり、直近のコンディションや実戦感覚の詳細は未知数な部分があります。
プロで捕手一本として勝負させるのか、それとも持ち前の打力を生かして内外野のコンバートも視野に入れるのか、球団が描く育成方針が明日以降注目されます。

 

育成3位:皆吉 海翔(みなよし・かいと) 内野手 / 長崎国際大

  • ポジション:内野手(二塁手、三塁手、中堅手など内外野ユーティリティ)

  • 投打:右投左打

  • 体格:168cm / 75kg

  • 経歴:矢上高 〜 長崎国際大
     

【選手寸評】
168cmと小柄ながら、スタンドへ放り込むパンチ力を秘めた左打者。
大学3年春に打率.353をマークしたミート力に加え、最大の武器は二塁を中心に内外野の複数ポジションをこなすユーティリティ性の高さです。

【編成評価】
ファームの野手運用を正常化させるための実戦派として、二軍公式戦で即座に出場機会を得られるはずです。

 

指名全体を俯瞰すると、不祥事による戦力崩壊に怯えたフロントが「1位・山里、2位・西野、3位・野原」と相場を1〜2ランク飛び越えた繰り上げ指名を連発した歪みは最後まで拭えませんでした。

全9名の指名を振り返っても、野手6名のうち「内野手4名、捕手2名、外野手ゼロ」であり、さらに、「高校生指名が本指名・育成ともに完全ゼロ」という、極端にバランスを欠いた近視眼的な構成となりました。

例年であれば、希望を込めて「100点」や「120点」といった景気の良い採点をつけるのが恒例でしたが、今年ばかりはその採点を行うことすら控えたいと思います。

明日以降、各メディアや評論家からドラフト採点が出揃うはずですが、間違いなく広島東洋カープは「12球団最低の評価」を受けることになるでしょう。

  • 目先の穴埋めに終始した高値づかみドラフト

  • チームの未来を育てる高校生を1人も指名できなかった編成の怠慢

球団首脳や編成部は、この歪んだ指名結果を極めて重く受け止めなければなりません。
「言葉」では危機感を口にしながらも、第二次戦力外通告の状況や、首脳陣の去就を含めた抜本的な改革が見えてこない現状を考えると、フロントの体質が変わる兆しは見出せません。

ドラフトにのめり込んで28年が経ちますが、これほどドラフト当日にやる気を失い、深い虚無感を覚えたのは初めてのことです。


明日以降、他球団のドラフト分析も含めて書きたいネタは山ほどあります。

  • 読売による織田翔希(横浜高)の強行単独指名

  • ソフトバンクが支配下最後で敢行した佐藤幻暎(投手)の指名

  • 育成枠における中学生指名や韓国独立リーグからの獲得劇

自ら縮こまり「自粛ドラフト」に終始した広島とは対照的に、他球団のテーブルにはプロ野球ドラフトが本来持つべき「ロマンとドラマ」が溢れていました。
個別球団の指名寸評や興味深いトピックについては、日を改めてじっくりと更新していきます。

 

長時間にわたり、リアルタイム速報にお付き合いいただき本当にありがとうございました。
今日もですが、ここ数日は強い口調で球団を批判しているためか、批判コメントと煽りが結構な数来ています(苦笑)

おそらく、私と同じように今日の結果に強いショックとやるせなさを抱えているファンの方も多いかと思います。

今夜は暖かくして、ゆっくりとお休みください。