ねこまねき
ふるさとの会が毎年開催している「宇治川河川敷ツバメ観察会」に8月3日、長年の念願が叶って、今年ようやく参加することができました。
春、日本列島に渡ってきたツバメたちは、子育てを終えて秋になると、今年生まれた子ツバメたちと共に海を越え東南アジアのフィリピンやマレー半島あたりまで帰って行きます。
その前、日本列島を飛び立つ前に、あちこちに分散して生活していたツバメたちが河川敷などに集結して何万羽という集団でねぐらをつくり〝渡り〟の準備をする、京都盆地では宇治川河川敷が有名、という話は以前から聞いたことがあったのです。しかし私にはずっと以前から一つの疑問がありました……。
4月の初め、山科にやってきたツバメたちは夏の間、巣を作り、優秀なカップルは2回、3回とヒナを育てあげ、6~10羽ぐらいのヒナを大空に羽ばたかせます(もちろんその後、猛禽類の餌になったりして、子ツバメの数は日に日に減っていきます。尾が長く、細くてスタイルがいい親ツバメに比べて、今年生まれた子ツバメは尾が短く全体に丸い体型をしているので一目でわかります)。
そしてちょうどお盆過ぎから8月の終わりにかけて、秋の気配を感じるようになるある朝、一羽残らず一斉にいなくなってしまうのです。つまりツバメが日本列島を離れると言われている時期のギリギリ寸前まで山科で見かけており、いなくなる日も毎年確認していたので、宇治川河川敷で7~8月に集団営巣するという話と時期が合わない、とずっと不思議に思っていたのです。
ところが、現地に行って見て、話を聞いて、そのナゾは解け、あらためてツバメの凄さに驚かされました……。
宇治川観月橋付近河川敷──。西の空が茜いろに染まる夕暮れどきです。明るい時間帯には何もなかった空に、見渡す限り、京都盆地の四方のあちこちから無数のツバメたちが飛んできました。宇治川河川敷の葦原のねぐらの上空が真っ黒になるほどのツバメが集まってきたではありませんか! それは暗くなるまでほんの数分間の、しかしものすごい数のツバメたちによる乱舞でした。
つまり、ツバメたちは日中はそれぞれ子育てをした村、エサ場でエサを摂って日中行動し、夜になると宇治川河川敷の集団営巣地のねぐらまで寝に来るのです。そして朝になるとまたまたそれぞれの村まで移動して私たちの目にふれていたようなのです。この時期は日本を旅立つまでの間、エサをしっかり食べて体力をつける〝渡り〟の準備期間だったのですが……。
それにしても天智天皇陵のある山科御陵から宇治川観月橋付近河川敷までは、車で渋滞を避けてもゆうに30分はかかる距離です。
なんて遠い朝夕の〝通勤〟なんでしょう……(‘_’)
だけど、よくよく考えたら、フィリピン、マレー半島あたりまで海を飛び続けようと思ったら、1日に2回、それぐらいの距離を移動できる飛翔能力と体力が必要なのかもしれません。
それにしてもあの小さな身体のどこにそんな力を秘めているのでしょうか?
集団で黒い塊となって海を渡っていくとき、誰か全体の指揮を取る指導者がいるのでしょうか?
考えれば考えるほど驚かされることばかり。自然の驚異、生き物の偉大さを教えてくれる身近なツバメたち。
その懸命に生きる小さないのちの姿に、便利な文明にどっぷり浸って野生の本能を失いかけている人間のわあしは、毎年、驚かさせられるばかりなのでした……。