六十八才になっていたお父さんは軽い脳出血で倒れたと母の話でした。
暫く寝ていると快復したので、山崎川に釣りに行くと云い、赤ん坊の頭大のおにぎりと、大きな魚籠、うなぎ用の釣竿を肩に出かけましたと。
うなぎ釣りのうまかったお父さんは何時もするように水中にもぐって泳ぎ、うなぎを捕まえましたと。
何しろ川内川の上流で水は深く、緑に満満と湛えて流れる場所です。岸に上がってみると体は重く、まるで相撲取りのようになっていたと聞きました。
関取のように肥満したお父さんは重い体を引きずって一里の道を歩いていきなさったと。
「ほんにすも取のごとなってなぁ。」と。
荷車の一台も通ってないでほんに不運な日だったのです。それで腎臓が犯され肺浸潤となり都合五つの病名がついたのでした。
病気を知らぬ者の不注意。