5年に一度行われる年金財政検証で、国民年金保険料の納付期間を5年延長して65歳までとした場合の効果の試算を行う方針を厚生労働省が決めたことで、年金に関する世の中の関心が高まっています。

岸田総理は試算はあくまで参考で「制度改正の方向性について何ら予断を与えるものでもなければ、私の意思が反映されているものでもない」と答弁で述べましたが、はたしてどうでしょうか。

やる気もないことを厚労省が試算するわけもないので、実際に提案されるかどうかはわかりませんが、一案として考えているのは間違いありません。

2004年に激しい議論の末に実施された「100年安心」と称する制度改正で、いまの年金制度は財政的には破綻しないようにはなりました。

なぜならマクロ経済スライドの導入によって、年金財政が維持できるように給付額を減額するようになったからです。

当時、私は国会で「政府案は『勘定』としては持続可能でも、国民『感情』としてはとても持続可能なものとは言えず、国民『感情』として安心できるような制度改革を行うべきだ」と主張しました。

あれから20年。

年金を頼りに生活している人が増える一方で、公的年金制度に対する信頼は以前より低下しているのではないでしょうか。

特に若い人たちを中心に「保険料を払っても将来、年金はもらえないだろう」と思う人が増えています。

どんなに計算上は制度が維持できても、年金制度に対する国民の信頼が失われてしまえば、その制度は持続可能ではありません。

来るべき年金制度改正では、今度こそ年金「勘定」だけでなく、どうしたら国民「感情」として安心できる制度になるかという観点からの議論を行い、それを実現したいと思います。