マイナンバーに別人の情報が誤ってひも付けられるトラブルが相次いでいることを受けて、個人情報保護委員会がデジタル庁に立ち入り検査に入りました。

マイナンバーを所管する官庁がこうした事態に立ち至ったことを岸田政権は深刻に受け止めるべきです。

マイナンバーを活用して国民の利便性を高めると同時に行政の効率化を図ることは間違っていません。

ただこれまで連携していない情報をマイナンバーにひも付ける過程では、どうしても人の手による作業が必要で、膨大な情報を正確にひも付けるためには、相当な時間と労力が必要です。

特に健康保険証のような医療関係の情報は、プライバシーの観点からも命に関わるという観点からも、その内容の秘匿性・正確性の重要度はきわめて高く、その情報とマイナンバーとをひも付けるにあたっては、慎重の上にも慎重な対応をすべきです。

ところが昨年10月に河野大臣が突然、「2024年秋の保険証廃止」を表明し、ひも付け終了期限を設定しました。

本来なら現在の健康保険証の情報を誤りなくマイナンバーにひも付けするのにはどれくらいの時間と人員がかかるのか、きちんと確認した上で行うべき終了期限の設定を、それなしで行ったために現場が混乱し、ミスが相次いだというのが実態ではないでしょうか。

今回の問題を起こした責任は、ミスをした現場というより、無理な指示を出したデジタル庁の方にあります。

ここはいったん来年10月の健康保険証廃止の方針を見直し、当分の間、現在の健康保険証を引き続き使えるようにすべきです。

さもないとマイナンバー制度そのものに対する国民の信頼が失われ、マイナンバー制度を導入した目的自体が達成できないという事態にも陥りかねません。

「過ちては改むるにはばかることなかれ」です。