1996年の発売当時、世界的に話題となり、日本でもベストセラーとなったアメリカの政治学者サミュエル・ハンチントンが書いた「文明の衝突」を久しぶりに読み返しました。

というのもいま起きているウクライナ戦争は、ハンチントンがこの本で冷戦終結後の世界は文明と文明との衝突が対立の主要な軸となり、特に文明と文明が接する断層線(フォルト・ライン)での紛争が激化しやすいと指摘した、その断層線で起きている戦争ではないかと思ったからです。

ハンチントンは「ウクライナは異なる二つの文化からなる分裂国だ。西欧文明と東方正教会系の文明をへだてる断層線がウクライナの中心部を走っており、しかもその状態は何世紀も続いている」と述べ、今後の行方について三つの可能性を上げ、そのひとつとして「ウクライナが断層線に沿って分裂し、二つの独立した存在となって東側がロシアに吸収される」という、まさにいまロシアが実現しようとしている選択肢を示すなど、本を読み返してハンチントンが今回の事態を起きうる事態として予測していたことがわかりました。

この本では、こうした断層線での紛争が起きると、それを終息させるのは容易ではないことも述べています。

これまた停戦の糸口さえ見えないウクライナ戦争の現状を見れば、当たっています。

発売から25年以上経っていますが、あらためてこの本は世界のいまと今後を考える上で、重要な視点を提示していると思いました。

大部な本ですが、興味ある方は読んでみて下さい。