米中対立をはじめ、以前から世界各地で対立や緊張が高まりつつありましたが、ロシアのウクライナ侵攻を契機にそのレベルが一気に高まっています。

こうした中で米中首脳会談が行われ、お互い考え方に大きな違いはあるものの、対話は続けていくことで合意しました。

この「対話」。

対立や緊張が高まっている時だからこそ、より一層、大切になってきていると思います。

ちょうど90年前の1932年5月15日、犬養毅首相が海軍青年将校らに殺害される、いわゆる5.15事件が起きました。

犬養首相は襲撃された際に「話せばわかる」と言ったのに対し、襲った側の山岸宏海軍中尉が「問答無用」と言って拳銃の引き金を引くことを命令したと言われています。

犬養首相は直前の5月1日、「内憂外患の対策」という演説を行い、その中で「極端の右傾と極端な左傾が問題である。両極端は正反対の体形ではあるが、実はその感覚は毛髪の差であり、ともに革命的針路を取るもので実に危険至極である」と述べるなど、きわめて真っ当な見識を持った人でした。

もし犬養首相と青年将校らとの間で対話が行われて、その結果、首相を殺害することを思いとどまり、犬養首相が生き続けていれば、その後の歴史は変わっていたかもしれません。

もちろん誰でも「話せばわかる」というわけでは必ずしもないことは十分承知しています。

しかしまずは話をしてみなければ、わかるかわからないかさえもわかりません。

だからこそ「問答無用」ではなく、まずは「対話」をすることが重要なのです。

世界各地で高まる対立や緊張が「対話」によって少しでも緩んでいくことを切に望みたいと思います。