『韓国に帰ろう』
そうドンヘに約束した
けれど
今、目の前にある
全ての問題を解決しなきゃ
無理だ。
「マスター?」
「なんだ?」
「ドンヘが金を渡したん女って誰だったのか掴んでいるんですか?」
「イ・ジュンギの差し向けた人間らしい」
「え?イ・ジュンギの…?」
「ああ」
「だから、コウキがオレには見つけることが出来ないって言ってたんだ…」
「イ・ジュンギがドンヘがジングォン派の構成員になっている事を知ったのはいつなんですか?」
「ドンヘとお前が所属していた組はジングォン派の末端の末端の事務所だっただろ?」
「はい」
「そんな末端の組の事まで把握なんか出来るわけがないからな。本当に最近まで知らなかったらしい。けど、本当にたまたまイジュンギがあの街に来た、ドンヘの住むあの街に、それでドンヘを見かけたんだ」
「見かけた?それだけで父違いの弟だと分かった、と?」
「それだけドンヘが母親に似てたからだよ。ドンヘの母親は本当に美人だったらしいからな。ドンヘを見かけたイジュンギはドンヘの素性を調べ始めた。そして確信した。あのガキは俺から母親を奪った憎い男、巌田壮介の息子だとな」
「、、、」
「イジュンギの計画は簡単だった。ドンヘに組の金を持ち逃げするように仕向ける。組に捕まったどんへを組が処分する。シンプルな計画だった」
「そんな計画…ドンヘが金を持ち逃げしないかもしれないのに?」
「するよ。ヒョクチェの母親だと名乗られたら、ドンヘは自分がヤバい立場になると分かっていても、ヒョクチェの母親と難病だというヒョクチェの弟を救ってやりたいって思う子だろ?」
「、、、イジュンギは本当にその女にヒョクチェの母親だと名乗らせた?」
「だから言ったろ?イジュンギはドンヘを見かけてからドンヘのことを徹底的に調べたって、ドンヘがイヒョクチェという人間をどれだけ大切に思い、愛情にも似た感情を抱いているという事も調べ上げていたんだよ。ならヒョクチェの母親だと名乗らせるのが一番効くはずだってな。実際ドンヘは組の金を持ち出した」
ドンヘ、、、
「イジュンギの計画が破綻したのは、そこに東陽連合の巌田平蔵が差し向けた吉田悠太がいた事だった」
「まさか、、、イワタヘイゾウはドンヘが窮地に立たされる事を見越してヨシダって人を韓国に送り込んだんですか?」
「いや、吉田悠太はドンヘが23歳になった年に韓国に渡ったんだ。その頃から急激に巌田平蔵と息子の巌田義鷹の溝が修復可能なほど深くなってしまっていたからな。吉田に課せられた任務は、ドンヘに接触し、ゆっくりと時間をかけてドンヘの生い立ちを説明して彼を日本に連れてくる事だったんだ。」
「ずっと監視していたわけじゃなかったんだ?」
「吉田がドンヘへの接触に手こずっている間にイジュンギにドンヘの素性がバレ、イジュンギの計画が動き出してしまった。けど、吉田に取ったらそれは寧ろ、渡に船だった。ドンヘにロクな説明をしないまま日本に連れてくることに成功したんだからな」
「そして、ここでドンヘは安全に暮らしてる。」
「それが大友一家の役割だからな。、、、甘やかされ過ぎじゃね?って思うけどね(笑)」
そんなことを言って笑うマスターの顔は優しかった。
「ドンヘは?」
その日もドンヘを迎えにオオトモイッカの事務所に顔を出し、ソファーでスマホをいじっていたコウキに声をかけた。
「あれ?今日は早いな。」
「マスターが夜は予定があるんだって。だから5時で店を閉めたんだ」
「ふぅ〜ん。そうなんだ?」
マスターとコウキから ドンヘがジングォン派とヨトウヨウレンゴウカイ、、、いや、イワタゾウセンの連中から命を狙われていると言う話を聞いても
「ドンヘさんは今日もカシラと散歩行ってるよ。最近散歩が楽しくて仕方ないらしい」
ここは平和
「散歩が?」
「んーー…まあ、散歩というより…」
「言うより?」
「駅近くに《おやつとやまねこ》っていうケーキ屋があるんだけど、そこのプリンが気に入っちゃったみたいで、ほぼ毎日カシラと一緒にプリンを買いに行ってるらしい(笑)」
そんなことを言って笑っているコウキを見ると、ドンヘが狙われているなんて話は嘘だったんじゃないかと思ってしまう。
「そんなに美味いんだ?」
「観光客とかからも めちゃめちゃ人気がある店なんだよ」
「けど、オヤブンさんといい、カシラといい甘やかし過ぎなような、、、」
「仕方ないんだよ。カシラがドンヘさんの事を孫みたいに甘やかすんだもん(笑)下っ端の俺が注意なんかできねえし。」
「孫って(笑)カシラって、まだ、40代くらいだろ?」
「まあね。でも、俺だってドンヘさんの笑顔が見たいし」
オレもそうだよ
ドンヘの笑顔がオレの癒しだ。
つづく