犬がイタズラなどの問題行動をした時に、「無視をする」という方法はよく聞く手段です。

 

しかし、実際に試してみてもなかなかうまくいかないことも多いのではないでしょうか。

 

 

この、うまくいかない理由を2つの観点から考えてみます。

 

ひとつめは、どうして犬がその行動をしているのか?ということです。

 

結論からいえば、「飼い主のあなたにかまってほしいから」です。

 

少しでも自分に注意を向けてほしくて、悪さをしているのです。

 

人が注意を向けてしまったら、犬としては「しめたもの」。

 

「これをすると、自分に注目してくれる」「かまってくれる」と思います。

 

 

このように犬が覚えてしまうと、悪循環に陥るのは予想がつきます。

 

かまってほしい→

イタズラをする、困った行動をとる→

飼い主が反応してくれる→

自分に注目してくれる→

かまってくれた経験として記憶→

(かまってほしいときに繰り返し)

 

これは子どもが、気になる人にちょっかいをかけたり、イタズラをしているケースにも似ています。

 

悪気があってその行動をしているのではなく、かまってもらえるからその行動をするのです。

 

ですから、期待通りの反応が得られない時は、その行動を繰り返すことをやめます。

 

 

 

例えば、家族が出かける時には吠えて騒ぐのに、家族がいなくなって留守番をする時に静かになるのは、吠えても仕方ない・期待通りにならない、とあきらめている証拠です。

 

良くない行動に、反応してはいけません。

反応すべきは、良い行動に対してです。

 

さて、もうひとつの観点は、しつけでいうところの「無視」とはどのようなものか?ということです。

 

人は日常のコミュニケーションにおいて、言葉を重視します。

 

言葉でのコミュニケーションが大部分を占めているので、「無視」というと、話をしない、声をかけない、ということをイメージしがちです。

 

ただ、犬にとっては話をするかどうかはあまり問題ではありません。

 

なぜなら、犬は喋ることができないので、言葉を聞くことで「かまわれている」、話しかけてもらえないから「無視されている」と言葉に重きをおいて判断しているわけではないからです。

 

犬は視線やしぐさなど、非言語のコミュニケーションに敏感です。

 

ですから、目が合えばもう、かまっていることになります。犬の前で立ち止まったときも、かまっています。

 

もっと言えば、意識を向けたということは、かまっているということです。

 

その子に意識を向けた時点で、無意識に人の表情にでることもあるでしょう。

 

 

 

これらのことから考えると、無視をすることをしつけの場面で使うとするなら、「本当に気にもかけないくらいの無視」をすることが必要です。

 

そうなって初めて、犬はあきらめます。

 

人の常識の中での「無視している」は、犬の常識には通用しません。

 

無視という方法がなかなかうまくいかないのは、このような理由があるからです。

 

もし、しつけのために無視をするなら、強い意思をもって無視をしなくてはなりません。

 

ホントの無視。

 

そこまでやって初めて成果がでるものです。

 

「無視」は優しいやり方のように見えて、実は簡単ではないのです。