『祝日』という映画を観てきた。

新宿でもやってて俺的には新宿の方が行きやすいんだけど、kino cinema 立川髙島屋S.C.館で観てきた。ここは過去2度観に行って印象の良い劇場だったので機会があったらまたここに来たいと思ってたので、あえての新宿でなく立川。

 

(※ネタバレあり)

で観てみて。悪くなかったよ。傑作とか佳作までいかないけど、印象の良い映画。よい心根の愛すべき小品というか。好感度高い。

出演者良かったですよ。それぞれが好感持てた。

映像も悪くなかったし。映像が良くないと、だったら映画でやらずにテレビドラマでやってろってとこなんだけど、本作は映ってるものが――風景も出演者も――結構良かったし。

自殺しようとした主人公の子を自称・天使が引き留め、今日じゃなく明日にしようよ、と。実はこれまでずーっと主人公の傍にいたというこの天使も明日死ぬのだという。この子が自殺しようとしたから現れたが、物質化してしまったので死ぬことになる(ってことだったっけ? 俺の勝手な解釈?)

そこから2人が明日まで1日一緒に過ごすことになる。外ほっつき歩き、近所をまわる小旅行の中で孤独な主人公がいろんな訳ありの人たちと邂逅してゆく――。

この巡ってく場所が大層な場所でなく、小学生の頃(だったっけ?)の通学路とか、小さい頃家族と行った中華料理屋とかなのがむしろいい。

最期を迎える前に、ありふれ過ぎてて忘れ去ってた場所、普段は気にも留めてない地元を巡るのが、道行きとしてかえって印象深い。なんでもないような事が幸せだったと思うって『ロード』じゃねーよ(笑)、でも最期の時にどこ巡るかってときに、ディズニーランドとか観光スポットとかじゃなくて、子供の頃にはありふれた日常だった場所ってのは盲点で、ハッとさせられるものがある。こんなふうになってしまった…という今と、こうなる前の普通に暮らしてた、暮らせてたあの頃…

かつてを巡る。子供の頃に帰る。…なんだか泣ける。

舞台が富山で、実際富山オンリーで撮られた映画らしく。地方都市のうら寂しい感じだったり、自然の良さだったり、シャレた所もちょっと出てきたり。

地元巡りにしたのは低予算だったからなのかもしれないし、富山をフィーチャーしたかったからなのかもしれないし、物語として意図的だったのかもしれないし、どれかはわからない。全部だったのかもしれない。

ともかく人生最後の旅が近所なのが逆にいいんだよ。

映画足り得てた。映画足り得てなくて端からテレビドラマでやるべきだった映画の一例が『野球少女』だったりするんだけど。でも『祝日』は全編大部分映画足り得てる映像だった。町の光景とか(地方都市なのが良かったりする)、あと主人公のマンションの一部が画角に入ってる夕日だっけ、夕日じゃなかったな、夜か否かな微妙な時間帯だっけ、の画なんか見入ったし。マンションの室内場面ですら悪くない感じだった。

この伊林侑香という監督さん、2本目の監督作だそうだけど、1本目の『幻の蛍』という映画の予告編見るとこちらもロードムービーっぽく、映像的に惹かれる感じあって、この人は良い映画監督かもしれない。

監督も主演の子も富山出身・在住とのことで、地元で作り上げた製作の様が、本作の内容の素朴さと相まって、そういうとこも愛すべき作品と感じる。

『祝日』というタイトルは劇中のこの日が祝日だった(これが自殺の引き金になる)というのと、主人公が死ぬのやめて生き続けることを選ぶことになるこの日を祝うべき日と捉えてるという、かけてるのだろう。うまいと思うよ。

 

本編観てた時は泣かなかったけど、帰宅して予告編改めて見たら泣きそうになった。