8月27日

『もち』という映画を観たいと思った。もう都内でやってるのが立川の映画館しかなく、しかも今日で最終日だ。

 

立川はたまに行く街。

そもそも最初入寮可の派遣の仕事で都内移住した時、その会社の立川の事務所で手続きしたり、入社前の健康診断も立川の施設でやったし、その後もドンキで買いたい物は立川のドンキに買いに行ってた。

立川って不思議だと思ってるんだけど… 中央線じゃん? 新宿から中野、吉祥寺、三鷹、国分寺…と郊外になってくにしたがって地味ィになってくが、立川でいきなり都会になる。そして立川過ぎるとまた地味…。

なぜ立川だけポツンと都会なのか?

都内でとりたてて人口が多い自治体というわけでもない。

Wiki読むと説明が書いてはあるのだが、にしてもなぜに立川?と。

 

kino cinéma立川髙島屋S.C.館。高島屋の上階にある映画館。

カウンターで席のチョイス。一番前の列は観づらいスか?と聞くと、そんな観づらくないと思いますよとのことなので一番前の真ん中をチョイス。

(これまでずーっと後ろの方の席がベストだと思い込んでたのだが、こないだ前の席で観てて没入感が非常に良かったので。)

60数分しかないんだよねこの映画。だから料金も¥1900でなく¥1500だったんだけど。

パンフレットありますかと聞くと、『もち』はパンフレット出してないみたいなんですよ、みたいな。残念。

劇場内出入口の所にパネルに入れた『もち』のポスターがあったんで撮る。

席に着く。スクリーンは小さすぎることなく。見上げる感じだがここのイス、背もたれがグラインドする! ちょっとのけぞるとスクリーンに対して目線の具合がよろしい。

 

上映開始。

初っ端の雪の降りしきる映像でもう合格みたいな。雪の降る映像は空間性がある。それを劇場のスクリーンで観る。それも最前列なので、臨場感が高い。

やっぱ映画の体感度の高さは4Dとかでなく、スクリーンの大きさと、映ってるものだ。

ストーリーはあってないような感じで、“忘れていってしまうのなら、それは大事なことではない!?”

岩手県一関市の女子中学生の主人公を通して、廃れてゆくもの・廃れさせない努力…学校の閉校、引っ越し、神楽、あえて撤去せずに残されている岩手・宮城内陸地震で崩落した橋、そして一関は餅文化だそうで年間を通して生活のいろんな場面で餅が出てくる日常がスクリーンに映る。

つき手・返し手による餅つき。出来た餅を女性たちでちぎってく。共同作業。そしてみんなで食べる。

ばあさんの葬式で自動餅つき器で餅を作ってる皆に対し、自分でつくと頑なに通すジイさん。

人と人との繋がり。廃れてゆく風習。過去のできごと。忘れたくないこと、忘れてゆくこと、忘れちゃいけないこと。

その狭間で、考え込むというほどではなく、といってなんだか引っかかっている、そんな主人公と一関の日常風景が撮られてゆく。

「描かれてゆく」と言わず「撮られてゆく」と書いたのは、ストーリーで展開していくのではなく、その生活・光景を見ている感じだからだ。(ドキュメンタリーではないのだがストーリーものという感じでもない)

映画鑑賞――

雪景色もいいのだが、夏の花火大会の場面も映像に加え音響も臨場感あって2.5次元で一関の花火を見上げてるような感覚。

田園風景や山間な景色、橋の場面、遺構…といった映像も劇場のスクリーンで観るにふさわしい。

前回取り上げた『LA MUJER DE LOS PERROS』という映画を観てて、普段観てるいわゆる“劇映画”がいかに虚飾に溢れているか非常に感じたのだが、『もち』も あの作品ほどではないにしろ劇映画離れしたテイストであるが故になおさら好感度が高かった。物語で楽しむ作品ではなく、ただただ観続けていたい作品、というかな。

シリアス一辺倒ではなくほのぼのしたシーンもある。というかほのぼのしてないシーンも空気が優しいというか、ずっとリラックスして観てられる映画。

社会問題を扱うというようなテイストではない。

主役のコはかわいすぎずにかわいい(=素朴でいい)。

穏やかに寂しそうなジイさんの横顔がいい。

主人公はジイさんの餅つきの手伝いをちょっと面倒くさく思ったりはするが、拒否することはなく一緒にやる。

2人で話してる時に好きな子はいないの?と聞かれ、親や親戚のおっさんおばさんから聞かれたらうっせーほっとけってなもんだが(苦笑)、年寄りに聞かれてるからこのコもはにかみながらいないよーと答える。に対するジイさんの もういいんだよーあってもねという言葉も優しい。

この主人公と祖父であるジイさんの距離感がいい感じ。疎んじるでもべったりでもなく。

俳優が出てないそうで。実際に一関の人に出てもらってると。主人公も地元のコだし、その友人役も実際の友人らしい。

脚本は監督(女性)が一応書いたんだけど脚本に沿う撮り方はしなかったらしく。

会話のシーンはジイさんに“あの時私にした話をしてください” 主役のコには“おじいちゃんが結婚式の話をするからそれを聞いてあげてほしいんだよね”とかそういう感じで撮ってったそうで。

 

風景も人も、作品のテイストや姿勢も穏やか。心地良い。

劇場で観てよかった。劇場で観るべき作品。

あと劇場で観てよかったと思うのは、本作たぶんソフト化はないと思うんだよねぇ… 地味な作品なうえに中編だし。(もしソフト化されたら買うよ)

このkino cinéma立川髙島屋S.C.館って映画館もこじんまりとしてて静かで、従業員の人も気遣いがあって印象が良かった。機会があったらまたここに観にきたいね。