80年代後半――
『男たちの挽歌』 『同Ⅱ』 『狼』でチョウ・ユンファ(とジョン・ウー)にヤられ、ハマり、他は? 他は? と追い求めると、
日本のビデオ会社も新しい鉱脈で荒稼ぎとばかりユンファの映画を次々買いつけてくるのだが、前述したようなレベルの作品はそうそうなく、しょーもない作品を、ジャケットをカッコいい香港ノアール風味にデッチあげて売るという東宝東和の宣伝より悪質ないんちきセールスマン仕事を繰り広げ、こちらはそれをレンタルで借りては“ダマされた…”というパターンを繰り返していたのだが、90年、日本でユンファの新作が劇場公開。
コレだ!
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スタイリッシュなユンファの新作だ!
ユンファの神々しいエレガントさ…
しかもタイトルが邦題『ゴッドギャンブラー』 原題『賭神』だぜ?
「愛に傷つき、友に裏切られ… いま伝説の男“賭神”が命懸けの大バクチに挑む!」
キタコレ!
カッコよすぎる映像と男のドラマが観れると期待して観に行くと――
力強いアップテンポ、漢度の高いメロディの勇壮なスコアがガツンとかかりオープニングクレジット、ダークスーツなユンファが賭場に入場!
こいつァ アタリか!? 出だしは快調! (この時期(『狼』も)太ってて丸顔でオールバックがすっげぇ似合わないのが減点ポイントだけどさ)
凄腕のギャンブラー・賭神(ユンファ)が、凄腕ゆえ? 腹心が賭神の妻を横取りしたくての謀略だっけ? ハメられて襲われて頭を強打するけど逃げおおせる。
イメージ 2うだつの上がらないチンピラのアンディ・ラウがたまたま賭神を拾うが(まだ『暗戦』『インファナルアフェア』より前の落ち着きのないアンディだ)、賭神は記憶を失くしたのみならず幼児退行現象を起こしており知能は3才児並みに…という超絶展開。
何コレ?
ユンファがデニーロを上回るのは、デニーロより役の幅がはるかに広い(節操がないともいう)。しかも1年間に10数本(!)出演、1日に3本掛け持ち撮影(!)したりしてたわけだが、ジョン・ウーの映画で神々しさすら漂うハードかつスタイリッシュな男を演じていたユンファが、3才児を怪演… 役者魂か、単に馬鹿ノリか?
…とまぁ堕ちた賭神だが、この男バクチをやらせると必ず勝つ。コイツで儲けて金持ちになろう!とあまりに単純思考なアンディにオマエの精神年齢も似たりよったりだと思うが、ナリは大人だが中身は3才児は鬱陶しいことこの上ないが突き放すと可哀そう…というアンディと賭神の、時に仲良くしたり時にケンカしたりの平和な日々…
ぷらっといなくなった賭神をアンディが探すだけのしょうもない場面を、哀感溢れる曲を流して無理くり必死の捜索から感動の再会という場面にデッチ上げたり…これさぁ尺もとり過ぎだろ! このままクライマックスにする気か!?と空恐ろしくなる(苦笑)。さらにさ…賭神は元からチョコレート好きなんだけど、自分の名前忘れちゃったからアンディが勝手にチョコって名づけるんだけど(ペットじゃねェんだからさ…苦笑)、賭神を探し続けて街ン中でアンディが泣きそうになりながら「チョコ…チョコ―――ッ!」って叫ぶとか観てるコッチが恥ずかしいからヤメテ!(苦笑)
…が続く。
パブリシティの印象から大幅に逸脱。というか日本の配給会社のヤマ師っぷり(まぁ…若干誉め言葉でもある・苦笑)。
またダマされた…とウンザリしつつ、金払って入場してるんで仕方なく観続ける。
そろそろ刺激が欲しいかオマエら?と監督のバリー・ウォン(王晶)はここでアクションシーンをブッ込む。襲われた賭神がジョン・ウー映画のようにアグレッシブかつアクロバティックな2挺拳銃の銃撃戦を展開!(しかもあっさり終了!)
(あと賭神のボディガードの男がカッコいい。この人本作の製作もやってたっけ?)
クライマックスは記憶が戻ってスタイリッシュに戻った賭神が、衆人環視の賭博場で大金賭かった大勝負を繰り広げ、最後はしんみりしたラストに着地する(こんなバカ映画がしんみりラスト!?)。
大人と子供のバディムービー的でありつつ、同時にチンピラ男子が本来知り合うはずのなかった大物と友達になる、男版のシンデレラストーリーでもある(なんだそれ・笑) この全く方向性の違う2つのタイプの話が融合して成立するって、普通ないよ?(笑)
王晶…とんでもねぇ野郎だ(苦笑)。(日本の配給会社もホントいい加減で、パブリシティに「イッツァ トゥルーストーリー」って書いてあんだけど、こんなのが実話なわけがあってたまるか(笑) あ、「愛に傷つき、友に裏切られ…」はホントにある)
要するにこの映画、スタイリッシュさ・バカ・シリアス・アクション・お涙頂戴…なんでもアリの欲張り映画とでもいうか、ユンファの魅力取り揃えました!というか、もう整合性とか化学反応を端から目指してない単なる闇鍋みたいな映画というか(苦笑)、まじめに観てると腹立つんだけど(苦笑)、個人的にヘンなのとかムチャクチャなの割と好きなとこもあるから、そっちの頭の回路で観ると愛すべき映画っつーか。
こんなしょーもない映画を亜州影帝のユンファに役者の引き出し開けさせまくってやらせる、ユンファもやっちゃうっていう、コイツら揃って楽しそうだなってところも好感持てるし。