今回取り上げたいのは『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』という劇場アニメ。
テレビシリーズを映画化したらしいのだが、当然俺はテレビシリーズの方は見てないんで比較した観方は出来ない。
初観の時は単純に1本の単体の映画として観た。

(ネタバレあり)

ごく普通な小学3年の女のコなのは(CV:田村ゆかり。ラジオ『田村ゆかりのいたずら黒うさぎ』のやさぐれ気味なトーク?(←面白い)と違ってちゃんと普通に仕事してる田村^^)が化け物に襲われてるフェレットみたいなの(ユーノ)助けようとしたらそれが異世界の人間?で、魔法少女に変身して戦うことになるという、妄想全開というかありきたりな魔法少女ものかと思いきや――思いもよらぬ展開をみせる。

まず魔法が異世界の「技術」と説明され、なのはが持つことになる魔法のステッキ的な物(レイジングハート)はデバイスのような扱いで、なのはもユーザーとして認識されるという設定が興味深い。
バトル後、排熱?らしき描写もあり、『仮面ライダーオーズ』 『プリキュア』なんかもそうだけど、(おそらく)90年代までには存在しなかった21世紀型な発想の設定。

変身シーンでは普段の服からヒロインなコスチュームに変化するわけだが、変身途上でマッパになって〇〇がちゃんと描かれてるのに驚いた(笑)。
いや俺は全然構わないんだけど(笑)、いろいろうるせェ時代にあってよくぞやった。

バトルが派手。
『プリキュア』もそうだったけど、意外にハードヒッティングな戦いが展開。
特に音響がキテる! ヘビーな爆破音とかが炸裂しまくる。
魔法バトルといっても、バズーカやロケット弾ぶっ放すような感じなんだよ。それで高層ビルぶっ壊しまくるような。結構迫力ある。アニメで絵なんで音のサポートが重要になってくるわけだけど、音響がかなり効いてる。

なのははユーノと共にこっちの世界に散らばったジュエルシードを全部回収するため、化け物と戦っていくことになる。(このジュエルシードというのも、なんかこうプルトニウム的?な設定)
ところがジュエルシードを回収しているもう1人別の女のコ フェイト(CV:水樹奈々。アニメをそれほど見ない俺的には水樹といえば演歌ベースの実力派シンガーなのだが、本作で初めて声優の仕事してる方の水樹を見たというか聞いた。パワフルなアーティスト水樹とも普段のほわんとした水樹とも違う、陰鬱気味で寂しげなキャラの演技)と遭遇。なのははフェイトが訳ありと察するが、フェイトは手段を選ばず、同じ物を巡って2人は敵対し度重なる激突・大バトルを展開することになる。
戦ってるのは魔法少女だがファンタジックでなく、ハードにドッカンドッカン爆破や破壊が炸裂しまくる!

フェイトに寄り添う荒くれ女的なアルフの忠実ぶり。
なのは&ユーノに対し最初は敵意ムキ出しだが、フェイト&アルフには なのは&ユーノにはない長年の信頼関係があるから。
しかしなのはの歩み寄りに対し徐々に変わってゆく態度も見所。

なのはの家族は平和そのもの、フェイトの殺伐とした親子関係、時空捜査官かなんかと艦長も親子だし…
設定にやたら家族があって、家族というものが希薄になっている現代人へのテーマ性かこれは?
まぁいいことだと思うけど。前にも言ったけど親や教師の言うことは聞かなくても自分の好きなアーティストや作品のいうことは素直に聞くもんだしな。

なのは&ユーノがジュエルシードを回収しようとするのはまともな理由なのだが、フェイトにはフェイトで事情がある。
勧善懲悪でなくそれぞれ理由のある者たちが戦い合うというのは『ザ・ロック』しかりジョン・ウーの映画しかり それだけでドラマ足り得るのだが、
本作が素晴らしいのは、後半フェイトに壮絶な裏切りというか衝撃の真実が待っている。
ここまで母親の為に尽くし命を削って戦ってきたが、本当の娘ではなかったうえ、実は嫌われていたことを知る。
これまでやってきたことがすべて無と化す。
フェイトと友達になりたいと思っていたなのは。精神的に廃人になりかけるフェイト――
なのは&ユーノをアシストするためにアルフがフェイトの元を一旦去る時、このコ(フェイト)は自殺するのではないか? 1人にしちゃダメだよと感じるのだが…
「ほんとの自分を始めるために、今までの自分を終わらせよう」とズタズタになったバルディッシュ(=ステッキ)を手にもう一度立ち上がるフェイト。
ここは感動する! 燃える!
“過去を引きずらない。昨日までの自分とは、まったく別の今日の自分がいる。そう思うことで限りなく自由になれるはずだ。”って言葉があるが、その通りなんである。
実は終わってなくても自分で終わったと思ったら、もう終わりなのだ。
もう1つ、他人(=誰々の為)を動機に生きるのは危険だ。それが成立しなくなった時、抜け殻になる。あるいは破滅する。
自分自身が在らねばならない。
フェイトは一度は魂の淵にいってしまうが、自力で帰還する。(『男たちの挽歌Ⅱ』みたいな)
そして皆がバトッてる真っ只中、再起したフェイトが現れる!
なのはとフェイトの共闘は表面上は萌えとか百合要素でオタを興奮させつつ、内実はジョン・ウー映画などの男同士の至高の友情のようで一般人でも燃える。
現実では本音を言わず陰口叩き表面上だけうまくやっている波風立てない浅ましい人間関係が横溢してるが、本作は容赦なく激突して築かれてく友情。
愛機ともいえるレイジングハートやバルディッシュはジョン・ウー映画における銃器のように主人公と運命を共にする。

自殺を考えてる人に勧めたい、また単純に子供にも勧めたい、素晴らしい物語。
文部科学省推薦にすべき映画だろコレ!

文句なしに傑作というわけでもないんだけどね、どう考えても要らないカットがあったり手落ちもあるんだけど、
それを補って余りある物語の素晴らしさ。
って、テレビドラマ(テレビアニメ)ならそれでもいいけど映画としてどうなのよ?っつーと、迫力があるので映画としても成立しているといっていいでしょう。
実際バトルシーンでの爆裂音を聞いてると、これ映画館で観たかったなって思う。



DVDは2枚組で、特典映像は
1:予告編やCM
2:東京国際アニメフェア2009(田村ゆかりがビッグサイトのイベントで劇場版製作開始についてプロデューサーとダベる)
3:スコアのレコーディング風景
4:劇場公開初日舞台挨拶の模様
5:JAPAN EXPO 2010(フランスのイベントで上映された時に招かれた田村ゆかりの模様)
6:出演声優座談会
で、1はCMがユーモアあって笑える。
2や4は田村ゆかりの幼女発言が笑える。あと本編ではフェイトの冷酷な母親役だった五十嵐麗の「リニスが好きです」発言は好感度大!(フェイトの母親はリニスというキャラを酷い扱いしてるんである・苦笑)
5を見てて思ったのは、こういう作品が日本代表というかね、上映されるのは素晴らしいことだなと。いやコレは映画祭ではなくフランスのアニメイベントかなんかのようなんだけど、日本のアニメが海外で人気ある理由はかわいかったり彩りあったり、内容が子供向けのカートゥーンではなかったりといったあたりだと思うが、本作はまさにそれらを網羅しており、これが海外で披露されるのは誇るべきことだと思う。メイドインジャパンの威力。
6は(4もだけど)アニメって声の演技で、演ってる人の顔は表に出ないからさ、興味深いから見たいと思うか、見てしまうと本編の印象や思い入れが薄れるから見ない方がいいか、微妙なとこなんだけど、俺は声優が好きなんで構わないんだけど。進行の段取りで激突する田村ゆかりと水樹奈々が可笑しい! 本編とは違う五十嵐麗の穏やかなトークが見れたり。
本編にはオーディオコメンタリーがあるのだが、これが面白いか引くか、オタでなく一般人の感覚からするとなんとも言い難い(苦笑)。
過去にコメンタリーについて取り上げたことがあるが、俺、本作のようなコメンタリーは初めて聞いた。
というのも声優の素のコメンタリーでなく、役のまんまのコメンタリーという(アニメファン的には珍しくない? でも一般人からしたら)驚くべきもの(苦笑)。
演じてる声優が、でなく、劇中の登場人物がコメンタリーやってるという体裁になってるのだ。
例えばなのはvsフェイトの場面で、フェイト自身が戦ってる時どんな気持ちだったかとか話してるという(笑)。



続編の2ndもなかなかいいらしいんで観てみたい。
そして1st・2ndには乗り遅れたが、今年7月22日にパート3『魔法少女リリカルなのは Reflection』が劇場公開されるそうなんで、これには思いっきり乗ってみようかと思ってる(笑)。