過去エントリで、予告編がすごい良くて本編観たらハズレでもそれはそれでよいみたいな、本編と予告は別物・映画本編だけでなく予告編も1つの作品として見ているって話をしたことがあるけど、
映画の宣材…チラシ・ポスター、映画のパッケージビジュアルもまた作品だね。
絵画や写真みたいなもんなんだけど、でもそれらよりドラマティックというか複層的。
写真、コラージュ、宣伝文句、タイトルとそのロゴ、全体のデザイン、書体、配色、その他諸々…で表現される1枚。様々な要素で総合的に1つに実現される「作品」というか。
映画のポスターというのもアートでありエンタメであると思う。
ナイスな宣材はすごく想像力や期待を喚起したり、感動させられたりする。ただの宣材=宣伝で済んでない。
あの1つの“絵”の中にいろんなドラマティックが詰まってる。
それを見てその映画を観に行きたいと思わせるだけでなく、そのポスターorチラシが欲しい・持っていたいと思わせる魅力あるデザイン。
本編とは切り離して、宣材単体で楽しむ。宣材を観て喚起されるもの、それを味わう・楽しむ。宣材を見て期待して観に行って映画本編がハズレであっても、それはそれであって、宣材自体を1つの芸術もしくはエンタメとして楽しむというか。



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全然違うじゃねーか系・東宝東和やり過ぎハシリ過ぎオーバーヒートセンス
『ランボー』
このポスターorチラシAタイプから どうみてもニューヨークを独りで戦場に変える男の話だと思い込んで興奮して戦闘態勢前傾姿勢で観るとケンタッキー州かどっかの田舎町や山中で小競り合いという…(苦笑) (←その地味っぽさが、それはそれでいいんだけどね!)
たった独りで戦争を起こす、それもニューヨークで、って革命的なロマンだろう。
東宝東和の本領発揮(笑)。大げさ。盛り過ぎ。嘘っぱち。
…でもそこに夢があったんだよ、夢みせてくれたんだよ!(笑)
この1枚の中に限りないロマンがある。
これさ、この背景の夕陽は東宝東和宣伝部かな、が社員旅行に行った時に熱海で撮った夕陽、ニューヨークの摩天楼は他所から流用した写真、M16(マシンガン)を持つ手はスタローン本人ではなくこの宣材を手掛けたデザイナーの手を合成して作成したもの…らしいんだよ。
最早ねつ造のクロワッサン。
責めているのではない、誉めちぎっている。
そういうコスい手作業で、この壮大な大ウソを創り上げた。やり方はショボいのに、壮大なモノを創り上げた。こういうのをグッジョブという。
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こちらポスターB。
これも…(苦笑)
アメリカ都心部のハイウェイに火の手が上がるカーチェイスがあると思うじゃん。
ねーし(苦笑)。
タイトルの下に並ぶパトカーの数(笑)。盛り過ぎ超えて悪ノリ(笑)。ヒューンって空まで飛ばしてるし(笑)。
そしてこの巨大感3D感満載のタイトルロゴね。これよくあったなー80年代。ジャッキー・チェンの映画でもやってたよね。
鑑賞欲をそそりまくって宣伝として大成功なわけだが、それだけならただのインチキだが、東宝東和のポスター及び宣伝には夢がある、そしてコレ重要、(宣材とは違うけど)本編も良い、という。


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日本版のセンスの良さ
『男たちの挽歌』
映画の宣材って、日本のやつが出来が秀でてるように思う。
その一例としてコレを。
センスが素晴らしい! これはカッコいい。
白と黒を基調にしたカラー…
シック&フォーマル&ダークでアダルトな雰囲気、
写真のチョイス・配置バランス、
出演者名の表示(筆記体だぜ!)、
H&K(写ってるマシンガン)の配置も絶妙だね。
一番下のユンファの写真、上目遣いの写真をチョイスしたのも絶妙! 位置とバッチリ合ってるもん。
部屋のインテリアにいいぐらいだよ(笑)。ダンディな部屋にコレ貼ってあっても遜色ないだろう。
もう映画会社の宣伝部じゃなくてファッション雑誌の編集部が作ったんじゃないかってぐらいクールだよ。
ところでこのH&K、これももしかして『ランボー』みたいに合成じゃないの? 実は日本ヘラルド(本作の配給会社)の宣伝部が合成した東京マルイ(日本のエアガン(オモチャの銃)のメーカー)のH&K MP5A3じゃないの?(笑)

…ただね、2つだけ微妙なのは、
まずキャッチコピーがポスター&チラシAタイプは「生きろ、死に急ぐな。」、Bタイプは「恥じて生きるより熱く死ね!」なんだけど(つまり矛盾してる・笑)、映画の内容としては間違いなく「恥じて生きるより熱く死ね!」なんだよ。そこがいいわけだし。
デザインがカッコいいのはAタイプで、キャッチが良いのはBタイプ。でもAタイプのキャッチが「生きろ~」の方になったのもわかるんだけどね。AデザインにBキャッチはテイストが合わないもんね。
もう1つは、左下の街の夜景が、もっとビルが林立してるとよかったんだけどな!
…そこが個人的に「微妙」なんだけど、まぁそんなのは余談の域だよね。『挽歌』の日本版ポスター(Aタイプ)は間違いなく完成度が高い。


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問答無用のインパクト系
『ターミネーター』
これは凄い。ガツンと一発。何がどうこうじゃない、シュワルツェネッガーのビジュアル。これ一発。
ド迫力。凄み。問答無用。
一発で根こそぎ持ってくインパクト! パワー!
さらにバックの赤外線&コンピュータ表示・レーザーサイト付きのシルバーメタリックの拳銃(ステンレス製の拳銃がメジャーになるのはもっと後だよね? 当時は目新しかった)でSF感・最先端感トッピング。
バイオレントとSF感の(当時としては)通常ならあり得ない組み合わせ(昔はジャンルの区分がもっとハッキリしてたんでね)が得体の知れない魅力も生んでいる。
ターミネーターという語感もカッコいいが(伸びる語感はカッコいい)、それを金属的質感バキバキのタイトルロゴにしたのもナイス。シルバーメタリックの拳銃とも相まって冷たく硬質な印象。
「冷酷!非情!残虐!史上最強《悪》のヒーロー!!」という宣伝文句は“凄い悪”を“ヒーロー”として打ち出すという、これも常識を逸脱&パワー主義というか。
っつーか主演はリンダ・ハミルトンとマイケル・ビーンなのに、出演者は「アーノルド・シュワルツェネッガー」推し! 一本槍!
悪役かつ当時あまり名前の知られてなかったシュワルツェネッガーで勝負してくるという、これもインパクト優先したんだろうね。「シュワルツェネッガー」って名前の暴力的語感(笑)。硬すぎ。しかも「伸びる語感はカッコいい」。
役者の名前すらも宣伝に活かす…ネームバリューではない、語感で決める(笑)。
全ての要素がインパクト勝負。しかも大正解。
結果、映画史に残るポスターになった。


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まさに作品の内容を100%過不足なく伝えきったもの
『プロジェクトA子』
まさにこういう作品。宣材と本編にズレがなくて素晴らしい。
同時に、本作は「問答無用のインパクト系」でもある。
この宣材の有無を言わさぬ爽やかさのインパクト! 勢いのある爽やかさ!

…それにしても、改めて思うけど『プロジェクトA子』ってタイトル、ほんとナメてるよな(爆笑)。
タイトルロゴもブッちぎってるよなー(笑)。半ばやぶれかぶれ感すらある(笑)。


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勝手に開発系
『ロックアップ』
キタコレ東宝東和。
あそこはありもしないものを勝手に既成事実のように打ち出したりもしてたんだけど(笑)、
その中から、そうだな…「ビジュラマ」とか「キュービックショック」が代表的なんだけど、ちょっと字数がかかるんで、今回は単純な「スーパー・バンドッグ」いってみるか。
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チラシ裏面。
「巨大メイズ(迷路)のハイテク要塞」「時限装置」「高圧電流の海」「デス・ファイト」「解き放たれた5000人の凶悪犯!」「殺人コントロールタワー」などと何やらいろいろスゴイこと書いてあるんだけどね…
10個中5個ウソ、2個盛り過ぎだから(笑)、前にも言ったけど
「迫りくる完全武装の猛走車!」なんて本編では主人公たちが共にコツコツ作り上げた友情と協力・辛い中でのささやかな生きる楽しみ、その結晶の車という、ヒューマンな産物だからね。それを「迫りくる完全武装の猛走車!」ってアンタ…歪曲にも程があるだろ(笑)。
しかも「スーパー・バンドッグ」って結局なんなのかよくわからない(笑)。今まで見たこともないアクションなのかと期待すると、
本編はなんつーかな…“寂れた工業都市みたいな感じ”だよ。寒々しいテイスト。辛い人生模様。アクションはあるけどド派手ではなく、やるべきところでガツンとカマす男気溢れる映画であり、SFデスマッチアクションではまったくない(笑)。
「スーパーバンドッグ上陸!」って、上陸してねーし(笑)。
実はなかなか心に沁みるヒューマンドラマであり、「スーパー・バンドッグ」のカケラもないが、いい映画なんで許されるし、逆にこの地味な映画をこんなふうに装飾してくれて東宝東和よ夢をありがとうってなもんだよ。
…今にしてみればね(笑)。
ってか このチラシ通りの映画観てみたいよ(笑)。誰か作ればいいのに。プロットここにあるじゃん、一から考えなくていいんだから楽チンだろ(笑)。
この通りの映画作ったらオリバー・グラナーでもロン・クリストフでも高嶋兄でも傑作になるよ(笑)。
…「(笑)」ばっかだな(笑)。


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傑作
『ロッキー・ザ・ファイナル』
寒々しい雪景色の中で拳を突き上げるスタローン、レザーグローブ、
「自分をあきらめない」のキャッチ、
…この1枚に限りなく力強いドラマがある。
最早映画の宣材を超えて、1つの芸術作品として額に入れて飾っておきたいぐらいの完成度。
感動的。
コレはホント素晴らしいと思う。


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ヤリ過ぎで最早幻の作品の域
『ダブルボーダー』
またキタ東宝東和。
アメリカとメキシコの国境付近の町で展開する画策とバイオレンスのアクション映画で、テイストがとにかくクソ暑い!ムサ苦しい!っていう。
暑い町でジトーッと全編汗ばんでるような、バイオレンスは結構強烈だけど雰囲気的には地味ィな、埃臭い汗臭い田舎臭い貧乏臭い、まぁそんな映画。
ところが宣伝文は「ハイパーバイオレンス」「超法規映像」「構想10年! 製作費40億!」「想像を絶するドラマを秘めていま<バイオレンス>は最後の領域に踏み込んだ!」
ミラーグラスの男(それも仰角)、近未来感バリバリな銃(大人になってから見るとなぜにショットガンにスコープ?という疑問・苦笑)、迫力と底知れなさの赤の飛沫的背景、
「ダブルボーダー」というカッコよすぎるタイトル(濁点と伸ばしのあるタイトルは語感がカッコいい)、
それにちょっと左下見てもらえるかな? わかりにくいんだけど…拡大↓
イメージ 10「全米が震えた戦慄の“二重国境” その地からは誰も還れない――」という文と、そびえ立つガウディの塔の如き巨大な建造物(というか もしかしてコレまるっきりガウディの塔流用してない!?・苦笑)。←しかもこんなの本編に出てこないし(苦笑)。
孕む底知れなさ。
SFバイオレンスアクションなのか!? いやそれすら超えて前人未踏の映画なのか!? どんな新次元映像か? と思うじゃん? 得体の知れない期待で胸ハチ切れるじゃん?
…詐欺だよね(苦笑)。
しかァーし!
最早映画の内容をさっぱり正確に伝えてない(最早「誇張」ですらない)が、パッと見カッコよく、しっかり見ると底知れない。最早傑作の域。
これ自体が味わい深い、これ自体に魅力がある、これ自体が1つの絵画や写真のような作品というか。
絵画でも想像を具現化することはできる。でも映画の宣材の魅力は写真と文字でリアルかつ複層的に表現できることだ。
ここまでくると最早「本編」が単に「素材」に後退して本末転倒だが(爆笑)、俺はこの宣材の魅力ってのが大好きなんだよ。
そしてそこに本編の良し悪しはまったく関係してないわけよ。
宣材はもう映画や写真、絵画などと並ぶアートの1ジャンルだ。

ついでに一番下読んでくれ、「血のりブリット付前売り券 絶賛発売中!」って…(笑) いやぁー楽しかったなァ80年代!