イメージ 1ルチオ・フルチ。(←監督)
ホラーというジャンル自体がB級(~Z級)臭プンプンなわけだが、
その中でもフルチの映画は特に怪しい。
そして地味。
ショックシーンはバッキバキにやり過ぎなんだけど、舞台とか役者とかは限りなく地味じゃない? 雰囲気がどうにもこうにも地味。
秋は、そんなうら寂しいフルチの映画がよく合う。
フルチ映画の中で、さらに存在感が薄いのが今回お届けする『マンハッタンベイビー』。
フルチと言えばゾンビ、ゾンビと言えばフルチ。
しかし本作はゾンビ系でなくネタが超能力モノって事で、フルチ作品の中でもどうも派手さに欠けるような、人気もないような。
でもコレがなかなか悪くないのよ。
っつっても期待して観たらダメだけど、期待しないで観ると面白いよ。

グロテスク、理解不能、妙に耳に残る音楽、ストーリー性無し。
ゾンビは出てこないけど、フルチホラーのツボはほとんどしっかり押さえてる。
音楽ちょっと弱いかな。半分くらい他のフルチ作品の使いまわしみたいだし。それでも『地獄の門』の音楽よりはいいよ。
メロが印象的なのが少しあるし、あと中盤あたりでかかる変な曲あるだろ、トコトコッ、タカタカッ、ズドドドド!みたいな曲(笑)、
あの曲作った人、酒飲みながら作ったのかな(笑)、なんかいいよアレ。音楽的な文法からいってもムチャクチャだろ。ナイスよ。

ストーリーもわかんないけど人の死に方もよくわかんなくて、フルチファンとしては嬉しい限り、相変わらずのフルチワールドが展開。
アメリカ(イタリアだっけ?)の普通の家で、ドアが開かなくて、愉快な男が「俺にまかせとけ」っておどけて「アブラカダブラ」とかっつったらあっさりドア開いて、開いた瞬間「アァァァァァ―――ッ!」とか絶叫して、いきなり砂漠で死んでる(爆笑)。
演出とか特殊メイク関係は相変わらずケレン味と悪趣味っぷり満点で、
特に男が鳥に食い殺されるとこなんか(カメラワークといい、ズブズブ刺すとこといい、しつこさといい)やり過ぎで観応えあるし、
その遺体のカットにカン違いなサックス流れるとこなんてわけわかんなくて最高じゃん! 笑ったもん、何コレ?って。
壁から突き出た腕はゾンビ風味で観応えあり(あの質感はフルチならではだよねぇ)。
冒頭出てくる盲目のおばさん(また出た白目!)不気味過ぎ。
ショボいビームで「ウワァァァァァ!」とか、幼女の絶叫ドアップとか、突如口から耳から頭から血ィ流してのたうちまわってたり(脈絡なくいきなり始まる)、
看護婦のメガネのフレームが‘80年代に流行ったアラレちゃんメガネよりさらに2まわりぐらいデカかったり、ヘンなとこ挙げ出したらキリがない。観所たっぷりだよ(笑)。
相変わらず今回も役者の顔は憶えらんないし、ガキ(♂)はちんちくりんだし、こんな笑える状況ないってのに登場人物たちは苦悩してるし。

ところで、ルチオ・フルチって現場で思いつきで撮ってねーか? フルチの映画観るたびに思うんだけどさ(笑)。
ストーリードラマじゃなくてイマジネーションの羅列なんだとか擁護する隙も無いくらい、なんか行き当たりばったりだろ全編。
脚本ねーのかな? あるんだろうけど、いやーフルチ映画のシナリオって押井守の映画より企画会議通りづらいだろ(笑)。
押井守はわかる人はわかるけど、フルチ映画は誰が観たってわかんねーもの(笑)。
でもなんかフルチ作品って、映画鑑賞入門編としてはある意味適してんのかな? フルチ作品から映画入ったら、ストーリー中心の鑑賞方法なんか吹っ飛ぶよな。理解不能で、でも部分部分が奇っ怪で妙に面白い。
フルチ映画でストーリーに頼らない映画鑑賞を体得、みたいな。