イメージ 1先日話した映画『問題のない私たち』だが、
主題歌である『青いナイフ』という佳曲、歌ってるjunior sizeがインディーズらしく、このなかなか素晴らしい曲はCDが出ておらず、
フル収録されてる音源はサントラのみらしいので、先日サントラを入手。

――――――――――――――――――――――――――――――
『青いナイフ』
作詞・作曲:junior size
編曲:ジュニアサイズバンド


大人になって罪の重さも忘れ
美化されていく青い時代

青く茂る芝生に 切ないやり場のない思いを埋めていた
四角い教室にイビツな形をした幾つものナイフが見える

自分を守るためにあの子の悪口を言った
皆で笑った あの子は泣いていた

傷つけ合って友情を確かめた モロく汚いやり方で
大人になって罪の重さも忘れ
美化されていく青い時代

自分さえ守れない臆病な心が今日も支配してくるんだ
本当の気持ちは何処にある? 惨めな仮面で誤魔化している

ジャングルジムの頂上 空に一番近い場所
いつも先を越されて悔しくて見上げた

居場所だなんて死ぬ気で得る物だろう 勇気を持った魂で
大人になっても戦いは続いてく
戦場はここだ 目を逸らすな

青いナイフよ 決して人を切ってしまわないで
鋭さでくじけそうなこの心切り裂いて

傷つけ合って友情を確かめた モロく汚いやり方で
大人になって罪の重さも忘れ
美化されていく青い時代
――――――――――――――――――――――――――――――

映画を離れて曲単体として聴いてもやはり(限りなく傑作に近い)佳曲。ドラマティック。
淡々としてない。曲のバイオリズムを折れ線グラフで示したなら、緩やかなアップダウンではなくガクガクとでっかく上へ下へ尖りまくったラインになりそうな、
激しく心を揺さぶるメロディ・歌詞・アレンジ(特にピアノ)・ボーカル。
なんか篠原美也子のドラマティックさに近い。
…俺がラップを低くみているのは、あれってメロディなんかないようなもんだし、歌唱力も要らねーだろ。
聴き所・歌い所がまったく違うんだよ。音楽というものの中であれはあれでアリだけど、あぁいうのばっか聴き慣れてる&歌い慣れてると、本物の音楽の良さを感じ取れる感性を手に入れられないぞ。
ちなみにラップのバイオリズムを折れ線グラフで示したなら、俺に言わせりゃ人が死んだ時の心電図みたいなさ(笑)、ピーッて横一直線で起伏のないフラットラインに限りなく近いと思うけど?
この『青いナイフ』という曲は生きている。感情があって魂がある。人の心を打つ。
メロディ・歌詞・アレンジ・ボーカルが一体となってほとばしる感動がある。
「エネルギー」というものは目に見えなくても確かに在るし、この世で必要不可欠なもの。
顔の表情というのもそうだね。表情というのは物ではない。でも存在するもの。そして無表情にはハートが無い。
人が作り出すアートやエンタテインメントには、エネルギーの有るものと無いものとがある。
『青いナイフ』にはエネルギーがある。グッとくる、人の心を揺さぶる、感動がある……エネルギーだよ。
…ラップがグラフで示すとフラットラインってのは、それと密接な関係があると思う。ラップはある種の気持ちよさとかカッコよさはあるかもしらんけど、心は打たないんだよ。

この映画には挿入歌があり(『アルイテク…』)、これはなんと主演の黒川芽以自身の作詞・作曲・ボーカル。
どういう経緯で彼女が書くことになったのか知らないが、ちゃんと映画の内容を踏襲してて、さらに感心したのは、
この年頃のコ…というかどんな年代でも、曲を書かせたら基本的にラブソングを書く。ほとんど間違いなく。それだけ精神年齢が低いとか精神が弱い人間が多いことの証明なわけだが(そういう浅い意識でしか頭がまわってない&依存心が強い)、
黒川芽以はラブソングを書かなかった。
流されて乗って過ぎ去ってくのではなく、時に立ち止まって 時に振り返ってみようというような内容の歌詞を、
緩やかなテンポとセンチメンタル気味なメロディに乗せて歌う。
佳曲とまではいわないけど、なかなか悪くないんだよこれが。世間に溢れてるくだらない曲よりはずっといいよ。
黒川芽以の歌は普通にうまい。
このコはなんというか、堅実に才能があるというか。演技もそうだし曲作りや歌も。突出はしてないけど、ちゃんとやって、平均点以上を出すみたいな。好感の持てるコである。

その後はスコアが続く。
本作のスコアは特別良いというんでもないんだけど、こうして曲のみ聴いてて、聴いていられるってことは、
ただ映像に付けただけの退屈な劇伴ではなく、音楽として悪くはないってことだろう。
本編観てる時はあまりピンとこないスコアなんだよ。映像と相乗効果で超ドラマティック!とかいうのはないんだけど。

ブックレットにはスチールがかなり多く載ってて嬉しい。監督と原作者のメッセージもあり。