パッケージ(ポスター・チラシ・広告・DVDジャケット・雑誌やネットで紹介されるスチールなど、中身ではなく“映画の外観”)だけでどうにも観たくなる映画がある。

イメージ 1そんな映画の中に『僕の彼女を紹介します』というのがある。
韓国女優チョン・ジヒョンのアップショット。
なんとなくシャレてるデザイン。
見た瞬間、目が留まる。しばし見入ってしまう。求引力がある。で、思わずどうにも観たくなる(笑)。

彼女の主演作に『猟奇的な彼女』というのがあって、かわいい顔して気が強く乱暴で イラつくと男に「ぶっ殺されたい?」とか言ってのける女と、気の弱い好青年な男の淡ァ~い&狂った恋愛映画。
そんな常軌を逸した女と引っかき回される男の光景が馬鹿ウケ&(じゃじゃ馬なんてもんじゃなく)暴れん坊のくせして弱いトコがポロッと出ちゃったりするとこにヤられちゃったりしてヒットした映画。

その監督とチョン・ジヒョンが職業と相手の男を替えて、まるで『スネーキーモンキー蛇拳』がヒットしたから『ドランクモンキー酔拳』を作ったジャッキーの如く製作した似た物映画が『僕の彼女~』。
こっちのポイントはチョン・ジヒョンが婦人警官である事!
『猟奇的~』同様暴力的キャラクターにプラスして制服姿が萌える萌える(笑)。
警官として強引無茶な仕事をカマしつつ、成り行きで付き合い始めたソフトで節度ある男…職業:女子高の教師なんだが、ジヒョンは制服のまま授業に乱入し!うろたえる男そっちのけで生徒に説教カマしたり「アタシの恋人だから手ェ出さないでね♪」とか言ったりしてやりたい放題。
男と並んで歩いてる時もマイペースで、自分が食いたいと思ったら相手に声もかけずにいつの間にか屋台で足を止めてて、1人で勝手に食っている。しかもなんでアンタそこまでってぐらい口いっぱいほおばって食ってる(口からハミ出してる・笑)。さらに食べ物でパンパンに詰まった口のままで喋る(笑)。
ナイス チョン・ジヒョン! 異性の前だからってまったく取り繕う事ないストレートな姿が見てて気持ちよすぎる(女優として女性としてキレイに見られたいって感情をかなぐり捨ててるのも好感度大)。
そんなバカっぷり全開な前半は最高なんだけど、男が死んで悲嘆に暮れる後半がまったく駄目。展開も演出も観客を泣かせよう泣かせようってあざとすぎてつまんねーのなんのって。
でもこの映画でチョン・ジヒョンは俺の記憶にブッ刻まれた(笑)。

チョン・ジヒョンって美人とか言われてるようだが、彼女のルックスは一般的に言われる美人とかカワイイってタイプじゃない。
モデルとか女優とかアイドル的なかわいさじゃなくて、こういうコってクラスにいるよねみたいな、近所にいそうな、際立ち過ぎてないごく普通のかわいさ。
だからクオリティの高い美人とかかわいいコとかとはちょっと違う魅力がある。
で、そんな彼女が婦人警官の制服着たりファッションモデルみたいな事やってたり大人っぽいテイストの映画に出てたりするギャップ…なんかこう、田舎から都会に出てったあのコを5年ぶりに見かけたら妙に洗練されててドキッとした、みたいな魅力ね(笑)。
そんな女優よ、俺の中の印象としては。
あ、もうひとつ。名前が漢字表記だと「全智賢」。凄い(笑)。素晴らしすぎる名前だ。



イメージ 2

チョン・ジヒョンの説明が長くなったが、パッケージが魅力的な映画、そんな映画に久々に出会った(気がする)。
先日ネットでたまたま知った『ラスト・ブラッド』という映画。
このチョン・ジヒョンが観たい。
なんだか猛烈に観たい!
それで官房長官並みに忙しいスケジュールの合間を縫って(ウソつけ・笑)突然観に行く事にした。
映画館に観に行くのは久しぶり。去年の『スカイクロラ』以来じゃないのか?(2度も取り上げた『レッドクリフ』は結局レンタルDVDで済ませた・苦笑)
だって¥1800も払いたくないもの。だからメンズデーとかに¥1000で観たりするんだが、それでも高い気がする。
なんかアトラクションあればね。アクションとかディザスタームービーでシート揺れたり床動いたりとか、ホラームービー観てていきなり天井から死体が落ちてくるとか(笑)、体感度が高ければそれなりのお金払ってもいーけどさ。
ただ黙って映画観てるだけで4ケタの金払うってどうもね…昔と違って映画鑑賞ってのが特別な事でもなくなったしさ。
あと高い金払ってハズすと腹たつよね(苦笑)。期待し過ぎると このパターンがあるんで、観に行く前に心に決めた事がある。
「チョン・ジヒョンを観にいく!」
もうそれだけ。ストーリーはショボそうだったし、ワイヤーアクションがあるって聞いてたし(俺あんまり好きじゃないんだよね…)、トータル的な出来は期待出来そうにないのは端からわかってたし。これは全体的な完成度の高さで観る作品じゃないなっていう。
このパッケージ通りのチョン・ジヒョンが観れればそれでいい。

本作は香港・フランス合作。
プロデューサーが香港で監督がフランス人らしい。
スタッフ・キャスト共、多国籍。
チョン・ジヒョンがハリウッド進出を狙ってるらしい。
ストーリーの説明は端折るよ。どうでもいいから。

イメージ 3▼世界観
“映画において重要なのはストーリーなんかじゃなく世界観だ”とは押井守の持論だが、
映画は映像であるだけでなく、テレビドラマとは質が完全に違う映像である事から、俺も映画をストーリーで観てない。

60年代の日本。古臭い新聞記事や街の光景。所々で見られる日本語の文字は『ブレードランナー』のようなデタラメ文字(苦笑)ではなく普通に読める。
外人が演出した日本でありながら、違和感がない。
それでいてネオンの明かりや暗い裏通り(スモークも漂ってたっけ?)…猥雑で湿った質感のあるダークにファンタジックな街を現出させ、フィクション度の高い光景でもある。
日本らしくて日本っぽくない、それでいて質感はリアルな、映画でしか表現できないリアルな架空の東京。
と思ったら在日米軍基地まで舞台にする。日本(しかもレトロ)とアメリカがごっちゃになる。
日本語と英語、どちらかではなくどちらとも普通に飛び交う。日本人もいればアメリカ人もいる、おまけに主役は韓国人だ(笑)。
「混然一体」な世界感。
それらが、(映画館のデカいスクリーンとド迫力の音響で鑑賞したから体感度が高かったせいか)違和感なく、浸かって観れた。
映像観て言葉聴いてるだけで飽きなかったもの。
この作品に端からストーリーは期待してなかったが、世界観がいいのは予想外だった。
これだけでもこの映画はテレビ画面でなく映画館で観て正解だった。
この映画をストーリーという点から批判してる奴がいるが、それはそもそも映画の観方を間違えてる。テレビドラマ見る気で映画観に行くんじゃないよ。

イメージ 4▼アクション
最初イラついたんだよね、ガチャガチャした映像で。
カット割り過ぎ。アップ多過ぎ。何が起こってるかよくわからない。
そんな映像なんでジヒョンのアクションも彼女の運動能力は見られず、編集で演出されたアクションという。
さらにショボい(と俺は感じた)CG。
ワイヤーを使うと必然的に出てくるわざとらしさ(ウソ臭い)。
なんか「テレビゲームみてェなアクションだな」と思った。
俺はこういうアクションは基本的に嫌い。運動とか肉体にこだわりがあるんでフィジカルなアクションが好きだから。
でもね。
例えば殴るというアクションの場合、①振りかぶって→②腕(拳)を振りおろして→③バコンとヒットして→④腕にくる反動とか殴られた相手が倒れるなどの事後動作――と、一連の流れとか動きというものがある。
その連続した動作が流れる動きとして視覚に知覚されて 殴った感を動的に感じるわけだが、
本作のアクションは①の次にいきなり③とか④がきたりする。飛んでるんだよね。
“いくぞ”っていうモーションの次の瞬間、もう③の打撃感や④の残されたあり余った勢いな感覚に襲われている。
こういうアクション演出というのは過去の映像作品にも存在するんだが、本作はやり過ぎなんだよ(苦笑)。
もうドッカドカにカマす。
オーソドックスに一連のムーヴがないと気持ち良くないという人にはガチャガチャしててムカつくアクションなんだが(苦笑)、
このアクションスタイル・この映像スタイルにノレた人的には結構気持ちいいというか、ガツンガツン来るインパクトのデカいアクション感覚を味わえる。
俺は途中から頭切り替えてノッてみたんで楽しんだ。…年輩の観客(も劇場内にいた)は「疲れる…」と思いながら観てるんだろうな、とたまに気になりながら(俺が作った映画じゃないんだからそんな事 俺が気にするこたァないんだよ・笑)。

イメージ 5▼チョン・ジヒョン
そしてこういう世界のド真ん中にチョン・ジヒョンがいる!という
物珍しさ♪
興奮♪
快感♪
ただ「(パッケージ通りの)チョン・ジヒョンが観れればいい」と観にいったわけだが、チョン・ジヒョンそのものだけでなく、
“置かれてる状況に対比する”という見え方としてのチョン・ジヒョンというのがすごく良かった!
異世界の中のチョン・ジヒョン、
アクション映画の中のチョン・ジヒョン、
多国籍の中で主役張るチョン・ジヒョン、
日本語も英語も喋るチョン・ジヒョン(日本語と英語をスムーズに喋るジヒョンに萌え・笑)。
もちろん単純に見たチョン・ジヒョンそのものとしても、
苛立ち・暗さ・哀しみetcに満ちた陰鬱なチョン・ジヒョン、
そうなる前の明るい&子どもっぽい かわいい(田舎臭いとも言う)チョン・ジヒョン、
そしてセーラー服のチョン・ジヒョン(笑)。
斬る。走る。空を駆ける。回し蹴りでスカートの中(ブルマみたいなさぁ、スパッツだと思うけど)モロ見え。
いわゆる「セーラー服祭り」(笑)。
……というわけでチョン・ジヒョンたまんねーっス!(爆笑)

イメージ 6▼その他
この映画での小雪はもうルックスが全てというか、小雪をキャスティングした時点でオニゲンの演出は終わってるっていうか(笑)、小雪のルックスって幽霊とか似合いそうじゃん?(笑) オニ(だかヴァンパイアだかよく知らないが)の首領にピッタシ。
小雪をキャスティングして正解じゃないの?
オニの親玉だからっていかにもいかついのが出てくるより、幽鬼のような女の方が安っぽくなくていい感じ。
このオニゲンのキャラクターとかサヤとオニゲンのドラマについて単純で物足りないって言う奴もいるんだろうけど、俺はビジュアルしか観てなかったからね。

サヤを育てたジイちゃん、よく見たら倉田保昭じゃん。こんな子泣きジジイみたいなジイちゃん(笑)演じても違和感なくなったところに、時の流れを感じたり(余計なお世話だっつーの・笑)。

ところでこの映画、日本の『ブラッド・ザ・ラストバンパイア』とかいうアニメの実写化らしいんだけど(観てない)、原作が押井守って誤記してるとこが見受けられるんだけど、違うからね。
これは押井が若い人材を育てようと“押井塾”ってのをやった時、最後の締めが参加者に企画書出させて1つ選んで本当に作品化するっていう、それで選ばれたのが『ブラッド~』であって、押井はアドバイスしただけで内容には関与してないはずだけど。
(ただ、『ブラッド~』を元ネタに『獣たちの夜』という小説は書いた。これは相当面白い! でもアニメ版とはまるっきり違う内容。)