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「壮絶」とか「超弩級」という言葉はまさにこういう映画のことを指す。

動乱のベトナムに新天地を求めた幼なじみ達。
そこで友情も未来も粉々になる彼らの運命を凄まじい戦闘アクションを背景に描く激動の大河ドラマ。
マフィア・軍隊から追われ、逃避行、愛する人は死に、友情は砕け、さらに殺人、拷問、裏切り、死線、生き別れ、障害者、廃人…まだまだ続くんだぜ。
各々紆余曲折を経てある者は命を落とし、ある者は生き延びていくが、
彼らにはさらなる激闘が待ち受けていた――

崩れていく信頼と人生。全編死と精神崩壊との隣り合わせ。
ドラマ・アクション共に凄絶。
まったく情け容赦ない想像を絶する展開とあまりにもハイテンションな演出。
本物の軍隊動員のアクション、俳優の魂入った演技、剥き出しのジョン・ウー、超弩級のアクション映画。
そして人生の辛さ、無慈悲な展開が続くからこそ、激動と大混乱の世界でもスタイリッシュでクールなスタイルを貫く元CIAの殺し屋ルークや、出会い、信頼、別離、再会、鎮魂、反撃などのロマンティシズムとドラマティックなシーンが胸を打つ。
ちなみに俺はベトコンの村で主人公たちが絶体絶命の時にアメリカ軍の救出部隊が飛来するシーンが最高に興奮する!(この場面に突入するまでの暗さ&重さが凄い。それを一気に打開する感動と興奮の名シーン!)
あとトニー・レオンがジャッキー・チュンを逝かせてやる場面は号泣もの。

トニー・レオンはどうもアクが弱くてちょっと印象に残りにくいんだが(他の出演者がインパクトありすぎ)、この異常な世界の中で人間性を失わない、でも場合によっちゃ非情になるという素敵にバランスの取れた青年を凛としたテイストで演じていて、観客の精神的な支柱になっている。
ジャッキー・チュンは文句ナシに助演男優賞モノだろ。本作での彼の演技は凄すぎ! 愚直なぐらいな好青年から精神に異常をきたし&ジャンキーに変わり果てた姿まで演じきる爆演!
リー・チェーハン(『男たちの挽歌』の裏切る部下役。英語名ウェイス・リー)は“コイツ絶対裏切るぞ”と思って観てると、案の定カマしてくれる(笑)。実際の本人はいい人らしいけど。
そしてルーク役のサイモン・ヤム! 超カッコよすぎ!
劇場公開当時、今回はチョウ・ユンファが出てないんで(カッコよさという意味での)期待度が正直低かったが、これがとんでもない!
観てもらえばわかるけど、このルークって役は凄いカッコいいし、サイモン・ヤムの生涯最高のグッジョブだし、本人も代表作を聞かれると必ずこのルーク役を挙げるらしい。
香港とフランスのハーフという設定がハマりまくりのイカしたルックス。
ビジュアルも戦時下のベトナムで白スーツ(笑)、怒涛の逃避行でも白スーツ(笑)、しかし主人公たちの救出に駆けつける時は戦闘服!
投げナイフ、葉巻爆弾、銃撃戦…アクションもカッコいいが、ドラマ場面でもロマンティシズムや人間的な思い遣りを見せ、同性が見ても異性が見てもシビれるスマートなタフ&ナイスガイ。

映像的には、ジョン・ウー監督作品でありながら基本的に美しいとか流れるような映像はなく、ひたすらガツガツしたゴリ押しな力技の映像が展開。
(とはいってもスタイリッシュとかクールって部分もあるからそっち系のウー好きも満足よ。そっちはルークが一手に引き受けている。)
あと音楽がいいね! ジェームス・ウォン。
…って誰だか知らないけど(笑)、これはサントラ出して欲しかったなー!
ハード&メロウにドラマティックなスコアで、この映画に対するジョン・ウーのほとばしる思いのたけを汲んだ素晴らしいグッジョブ!

イメージ 2この常軌を逸した奇怪作(だが感動作)が製作された経緯はこの記事のコメント欄を読んでもらうとして、
まったく遺憾極まりないのは、100人中100人がこの映画を観て「キッツイ」「疲れる」と のたまうことだよ(苦笑)。
この映画は魂が宿ってる数少ない映画の1本だよ。それを素晴らしいと思うどころか「疲れる」とか言って片づけて、それじゃどんなのが好きなのかっていうとヌルい作品ばっか観てる。
そんなだからヌルい人間なんだって。まぁいいや。
俺的には好きな映画ベスト10にブッ込みたい1本(って、ベスト10やろうとしたら軽く30本はリストアップされるけどな)。

ちなみにこの映画を観る時はDVDではなく是非ビデオテープで観てもらいたい。画質が悪い方が生々しく観れるから。
これをクリーンな映像で観ちゃダメだよ。ビデオテープで、デカいテレビ画面で、音声は重低音の効いたスピーカーにつないで、汗と埃と血にまみれてどっぷり浸かって観て欲しい。
で、再起不能になるんじゃなくて(笑)、グシャグシャでズタズタな隙間にある感動的な情感やカッコよさを感じてくれ。