イメージ 1 イメージ 2
『女校怪談』シリーズ。韓国映画。
ストーリーにつながりはなく、毎回スタッフもキャストもタイトルも違うんだが、
コンセプトが同じ(“女子高” “怪談” “女同士の愛憎”)というシリーズ。
これが結構面白くて。
面白くてっていうか要するにオマエが“幽霊”と“レズ”が良かっただけだろってその通りなんだけどさ(笑)。

 

邦画でも女のコがウジャウジャ出てくるホラー映画は結構あるようだが、質が全然違う。
いや邦画のその手の作品はほとんど観たことないんだけど。ショボい幽霊出てきて薄っぺらい登場人物がキャーッとか叫んでるだけでどうせつまんねーんだろ?(決めつけてるし・笑)
『女校怪談』シリーズはホラー要素を丸ごと抜いちゃっても成立する。

 

 

このシリーズって、ホラー的な部分はイマイチなんだよ。だからホラー観るぞ!って意気込んで観た人には評判悪い。
でもちょっと待て。他にひっかかる部分がある。
俺も最初はホラーだと思って観始めたわけ。実際ホラー部分は物足りない。
ところが女同士のどうこうとか、学生のフザケっぷりとか、ホラーと関係ない部分が結構面白い。
そうするとホラーとしては評価薄くても、別の系統では生き残る作品なんだよ。
学校もの(“青春映画”って今時言うのか? 他にどう言ったらいいかわかんないから、学校生活だから“学校もの”と言っておこう)とか女もの(なんだそりゃ・笑)って系統で。
このシリーズ、学校ものとしてはちょっとたまんないけどな。フザケまくってて、親友がいて、ケンカもあって、自分たちだけの秘密の場所があって、幽霊騒動まである。こんな学校生活送れたら楽し過ぎだろ(笑)。
1つのベクトルだけで映画を観ない。そうするとこのシリーズの作品は「ダメだこのホラー」じゃなくて、「お!?結構面白い学校映画だな。拾い物じゃん」みたいになる。
ついでに、ストーリーから難癖つける奴いるだろうけど、映画をストーリーで観るのもやめろと言いたい(もうこれまで散々言ってるけどさ)。

 

 

 

 

イメージ 3◆『女校怪談/囁く廊下』
日本での劇場公開タイトルは『女校怪談』(上画像・左)だが、ビデオは『囁く廊下』(上画像・右)って違うタイトルでリリースされている。
…売る気さっぱりねーだろ(笑) なんだ囁く廊下って。
丸投げな邦題はともかく、映画自体はなかなかいいんだコレが。

 

 

 

 

初っ端、夜の学校で殺される中年女教師=通称・古狐の遺体の扱いのぞんざいさ。
翌朝、性格キツそうなコ=ジオと大人しいコ=ジェイが友達っぽくなる。
教室に入ると不気味なコ=ジョンスクがいる。
外では初冬っぽい寒空の下 渡り廊下から古狐の遺体が首吊りでブラ下がっている。
――冒頭から快調。
さらに、顔はキツいが性格は優しい新人女教師=ウニョンの登場&その高校時代、自殺した親友=ジンジュの記憶。
ジオの隣りの席の、丸い顔して愛煙家で成績ナンバー1のコ=ソヨン。
6人の女たち、友達以上レズ未満のドラマ…
並行して忍び寄る死と学校の怪談…
幽霊の意外な正体。

 

 

 

▼女優/キャラクター
みんなそれぞれキャラ立ちしてる。
性格の描き分けもいいキャラしてるうえ、演じてる女優が皆 ルックスや表情が見てて飽きない。
コイツ要らねーよってコが1人もいないんだよ。ユニット結成してくんねーかな(笑)みたいな。

 

 

 

相容れなさそうなタイプが怪しく絡む人間関係にも惹かれる。
女同士の友情の始まりや軋轢・対決が、観てて面白いのは(というかハッキリ言って萌え?・笑)男の意識から観てるからか?

 

 

ちなみに俺の一番好みは不気味なジョンスク(爆笑)。
常に独りで、目つきも異様な、不気味なコ。成績ナンバー2。
あぁいう正体不明なコって逆に興味深くて付き合いたくなるんだよ。
実は哀しみ抱えてるのがまた萌えるしさ(笑)。
倉庫でソヨンと対峙するシーンで初めて(そしてここだけ)ジョンスクのセリフがあるんだが、喋るとイメージぴったりの低音ヴォイスで、グッときちゃったね(笑)。

 

 

 

▼楽しさ
本作は硬い寒々しさとシリアスモードが通奏低音でほとんどフザけたシーンはないんだが、
授業中に隣同士で無駄話してるくだり(机持って廊下に出される2人)はクスッと微笑ましい。

 

 

 

 

▼♀×♀
なんかね…全部いいね(爆笑)。
ジオとジェイが友達になってく過程・ジェイに絵を教わるジオや、元親友だったジョンスクとソヨンの軋轢もいいが、
単なる日常的な関わり――ソヨンがジオとウニョンにアクセスとか、ウニョンとジオの関わりとか――や、
古狐の死の秘密に感づいたウニョンが図書室内をズンズン歩いてくる場面、誰かいるのに気づき凄い険しい顔で振り向くと、そんなウニョンを見てなんとも言い難い表情を浮かべているソヨン…
などの場面も、妙に惹かれる。

 

 

 

 

▼今回のアジト
毎回、彼女らだけのアジト的な秘密の場所が登場するのが魅力の1つでもあるんだが、
今回は行き場所のなくなったジオがジェイの勧めで使い始める、学校の外れにある廃屋みたいな、元は部室か何からしい倉庫。
ソヨンがタバコを吸いに来る場所でもある。
幽霊話があり教師は近づかず、不吉な事が起こる為取り壊せず放置されている場所。
ついでに校舎からそこへつながる渡り廊下(首吊り2件発生)も枯葉が積もる寒々しい道で、印象に残る。

 

 

 

 

▼今回のアイテム
今回は特にない。強いていえばジオの絵、ジェイのノート、卒業アルバムってことになるのかもしれないが、後のシリーズのようなアイテムの印象深さはあまりない。

 

 

 

 

▼哀しさ・切なさ
これもこのシリーズの共通要素だが、
誰にでもあるかもしれない、過去のちょっとしたすれ違いが後に決定的な決裂になるとか、軋轢がやがて取り返しのつかない事になるとか、
永遠に?彷徨う彼女らの霊魂など、
大人の世界じゃなく希少感の強い青春時代だから切なさ1.5倍増みたいな。

 

 

 

 

▼怖さ/グロさ
既述したように、ホラー的な部分ではパンチが足りないが、
首吊り死体の映像は高さと寒々しさとで、かなりインパクトある。
何気にふと見た床の、外れた床板の間から何か見えてる場面も不気味。
ウニョンがジンジュから逃げてるシーンの、ジンジュが廊下の向こうからドドドドドンッ!と迫ってくるとこは誰でもギョッとする(笑)。
ってゆーかさ、全編を覆う暗さ・寒々しさが、ホラー映画として既に高得点じゃない?
何がどうこうじゃなくて醸し出してる「雰囲気」が素晴らしい。

 

 

 

 

▼パワフル・暴力的
韓国映画特有なのか、少なくとも俺がこれまで観た韓国映画って、
バイオレンス映画なわけでもないのに必ずといっていいほどガツンとした描写がある。
『ほえる犬は噛まない』の犬の扱いとか、『僕の彼女を紹介します』『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンそのものとか。
本作では何人かいる暴力教師の描写がドン引きもの。
あとこの映画は窓ガラスの割れ方が凄い。爆発するような割れ方。

 

 

 

 

▼その他
クライマックスの女たちのやたらテラテラした涙はなんなんだろーな?
気持ち悪いというかエロいというか(笑)。

 

 

 

繰り返し鑑賞に耐えられる映画だね。
それはホラー以外の見所が多いから。

 

 

あと、この映画は季節の設定や撮り方のせいで映像がやけに寒々しく、カットによっては寂寥感も感じさせ、オカルト映画である事と相まって深夜映画の要素が強く、秋や初冬の深夜にはもってこいの作品。