かなりマズい状況に置かれている。
“どうしてもマズい時はあの手で切り抜けよう”と思っていた手が使えない状況になっており、
しかもタイムリミットが迫っている。あと1週間以内ぐらいに解決しないとならないんだが、見通しは暗く、クリア出来ないとちょっとした死活問題になるんで、気分はかなり沈痛。
焦ったり閉塞感に囚われるとロクな事にならないのは経験上わかってるし、もっと大きな人生の危機を乗り越えてきてるから手に負えないって程ではないんだが、キツいものはキツい。

今さら自分に活を入れる必要もないんだが、苦境に自力で挑む人間の作品でも振り返って少し気を落ち着けたい。

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『男たちの挽歌』
イメージ 2シンジケートの幹部であるホーと親友のマーク。
裏切りと謀略に遭いホーは逮捕・収監される。
3年後、街へ戻るとマークは障害者になっており、2人を踏み台にしてボスにのし上がった部下に屈辱的な目に遭い、浮浪者として暮らしているのだった…

人としての尊厳と人生の清算がスタイリッシュに、ハードに、センチメンタルに、そして神々しく描かれる。




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マークは映画史上に残るキャラクターになった。
スーツ・コート・サングラス姿で、燃やした100ドル札でタバコに火をつけるダンディかつスタイリッシュな登場。
今や伝説となった楓林閣の銃撃戦。
その後 障害者として再登場する衝撃。
痛ましい、逆転した上下関係と浮浪者じみた生活。
やがて怒りはマックスに達し、惨めさとプライド渦巻く心情を絶叫するシーンは映画史上屈指のシーンだろう。
「俺が神だ。人間こそ神だ」のシーンには神々しさすら漂う。
クライマックス、もう逃げおおせるという海上でボートのハンドルをきって親友の窮地に舞い戻るシーンは熱血度500%!
そしてここで見せる万感の笑みは思い出しても胸が熱くなる。
生き延びる事よりも魂に忠実である事を選ぶ。それ故 命を落とすことになるのだが、これでいいんだ――誰でも必ず命を捨て去る日が来る。問題は、捨て方だ。

イメージ 5人間のプライドを懸けた生き様がアツい!
社内の派閥闘争に端を発したドラマが、いつしか運命と死に挑む生命の闘争にまで発展してゆく。
憤怒に満ちた日々、朽ちないプライド、爆発する感情、アツい友情、命運を決する壮絶な銃撃戦、砕け散る生命。
これは自分が生きているかどうかの――魂の――確認だ。





イメージ 6ヤクザ映画ではなくサラリーマンの話だよ。だからスーツなんだ。
あれはヤクザではなく企業の幹部だ。だがサラリーマンでは命賭けの戦いや情念が積もり積もって炸裂する大アクションにはならないからね。
監督ジョン・ウーは我慢ならない怒りや悲しみを持ち続けていた。それを発露させたくもあったし、決着も着けたかったし、それをやらねば先へは進めなかった。本当に暴れるわけにはいかないから映画でやった。






イメージ 7そして会社員の話では命賭けの戦いは出来ないし
(昔だったらクンフー映画として作っただろう。この時代にはもう暗くてシリアスなクンフーものは絶滅していた。
この時代の戦い・アクションは、ジャッキー・チェンを別にすればハリウッド系アクション=銃撃戦や爆破になっていた)、
エンタテインメントとしても絵的にもまるで足りない。
だから表向きは企業で裏ではシンジケートという設定。
ウー本人の本心は知らないが、俺はそうも見るし、そういう見方も可能だ。



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仕事の不振、会社との衝突、左遷、そのうえ友人の裏切りに遭いズタズタになったジョン・ウーが放った起死回生の作品。
左遷から3年後――かつてウーに借りのあったツイ・ハーク(監督・プロデューサー。たまに俳優)が手をさしのべ、当時クンフーとコメディがメインだった香港映画界であったにも関わらず、この作品を撮らせた。
古い映画のリメイクだが、オリジナルで脇役同然だったキャラクターに自分の思いを投入し、主役同然にまで持ってきた(=マーク)。
恨みつらみや思いのたけを込めたウー本人による脚本・演出と、それに呼応したかのようなマーク役チョウ・ユンファの演技が、もうとんでもなく凄まじい。
ウーの思いと至高のプライドのドラマに打たれたか、音楽を担当したジョセフ・クーも時に切なく 時に凄みあり 時にヒロイックなスコアを提供してグッジョブをみせ、この作品を真摯にサポートしてみせた。

イメージ 10怒りとプライドを焼きつけたフィルム。
人としての進退を懸けた戦い。
作品内だけでなく現実にもドラマティックだった男の友情。
映画は本国で大ヒットし、香港映画界の流れを変え、人々に圧倒的影響を与え街の文化にすらなり、やがて世界中に波及してウーフォロワーを生み、神話となった。
ジョン・ウー復活、ユンファ快進撃スタート、さらに2人が後にハリウッドへ上陸する礎の最初の一撃。
俺が最も生きるのが辛かった時期に観て心の支えになった作品の1本。
この映画は、いろんな人間にとって永遠の出発点――