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というムチャクチャな試みを今からやるんだが、結構いけそうな気がしてるんだけどね。
『ランボー 最後の戦場』公開記念スペシャルプライス版とかって 監督のコメンタリー収録バージョンの『ランボー』シリーズDVDが各¥1500とちょい安めで発売されてるんでPART2と3を買ってきたんだが(ちなみに3のピーター・マクドナルドのコメンタリー最悪)、
実に久々に2を観て、いやぁ改めて観てみると意外に結構よく出来た映画だなァと感心し(笑)、ある意味映画の教科書になりそうだとふんだので(その発想が凄いよな)、今回はこの線でいってみっか!



ドガーン!
いきなり爆破から始まるオープニング。作品の一番最初のカットがいきなり爆破映像ときたもんだ。
よくオープニングのアクションってあるだろう、本筋とは関係の無い“ツカミ”としてのオープニングのアクションを5分ぐらい。
『ランボー2』のオープニングはトラウトマン大佐が採石場のランボーに会いに来ただけ、アクションなし。
だがこのオープニング場面には合理性と気合が詰まってる。
まず、たらたらオープニングアクションなんてやってられっか、俺たちは爆破1発でツカミはOKだぜ! 5分? フザけんな3秒ありゃ十分だよ、みたいな。
次いでハンマー振るう野蛮な野郎どもと冷徹な看守を映してマッチョな男っぷりをアピール。
そしてトラウトマンの話がいきなり本題。
スタローンの暗く陰鬱な演技とトラウトマンの深みあり気な上官っぷりで、この作品がただの能天気なアクションとカン違いすんなよ、とさりげなくジャブも入ってる。
ツカミも 本作の姿勢表現も 前作と本作とのクロスブリッジも ストーリーの発端も わずか数分で終了、実に無駄がないオープニング。無駄はないが(ハッタリな)インパクトと重量感(じみたもの)はバッチリ。

そしてタイトルが出るが、RAMBOのロゴの中で炎が燃え盛っているという実にイカした演出で、男のハートを直撃&その後の展開を暗示&冒頭の男っぷりまで補強。
オープニングタイトルで凝った編集して作品の世界観だの伏線だのを見せるとかって映画があるが、タラタラやってんな一発でキメろや! こっちは小細工はいらねェ! RAMBOのロゴに炎、もうこれ一発で表現しきる怒涛のセンス。



…と ここまで打ってきて、ほんとはいつぞやのV2のシングルの話みたいに全体を追っていきながら細かく説明するつもりだったんだが、なんかこの調子でいくと いくら長文傾向の俺でも嫌気がさしてくる(笑)ぐらい字数が膨大になるんで、端折ってトータル的にいくぜ。

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この映画、脚本がいい。いや細かい内容についてどうこうではなく、全体の流れがエンタテインメントとして出来がいいという意味で。

人権無視の極悪地帯への潜入というスリル、
現地に降り立ったランボーの最初の場面の高揚感ある演出、
合流地点での裏切り・置き捨てによる孤独感と絶望感、
その後の拷問シーンで観客に怒りとイライラを募らせ、
満を持した反撃につなぎ(「殺しに行くから待ってろ!」次の瞬間ゴールドスミスのスコアとスタローンのナックルが炸裂する このタイミングの素晴らしさ!)、その後の大虐殺アクションを陰湿なものでなく快感度数の高いものに転化する扇動効果 かつ口うるさいヒューマニストや保守派へ対するエクスキューズも万全。
女との死別=ラブストーリーを入れて女性観客に対するアプローチも忘れない。
またトータル的に展開にアップダウンがあって観客を飽きさせない。
テンポも各シークエンスのバランスもグー。

この流れの緩急の良さは後半のアクションシークエンス自体にもみられ、
ベトコン(=ザコ)を壊滅させ、そのトップの馳ぴーを爆殺アーチェリーで粉々にし、ここで1つのカタルシスの頂点を迎える=押し

が、ソ連軍のヘリ登場&ナパーム弾投下で一転して危機を迎える=引き

ヘリを強奪してベトコンの村を急襲、大破壊の果て捕虜救出=押し

離陸するがソ連軍のガンシップが大げさに出現(威厳すら漂わせる登場&重量感ある離陸・ゴールドスミスの仰々しいスコア・しかもソ連軍司令官操縦)、ランボー機を追撃・爆撃、ランボー最大の窮地!=引き

ランボー、ロケットランチャーでソ連ガンシップを破壊&ゴールドスミスの勇ましいスコアに乗って離脱!=押し
といったように、攻勢と危機=押しと引きが交互に訪れ、しかもクリアする度にスケールが増大していく、盛り上がりまくりの展開。

基本に則ったオーソドックスなプロレスの試合の構成のように、段階を踏まえて盛り上げていけば 人間の感情というものはおのずとテンションがあがり興奮する。
それをマーケティングだの5分に一発見せ場を入れるだのってバカな事やって、意味もなくせわしなくて逆に興奮しようがない今の映画からすると、『ランボー2』は手本にすらなるよ。
本作は展開に段階がある。だからベトコンの村での大暴れで力の入ったカタルシスが得られるのは、理に適ってるんだよ。

…さて、散々やりたい放題やりつつ、しかしラストシーンで湿ったアジテーションをぶちカマして社会派・人間ドラマとして重厚な仕上げに(強引に)着地させ、
フランク・スタローンのセンチメンタルなバラード(結構悪くないメロディとフランクのあざといヴォーカル(笑)、グラミー賞獲るレベルには遠く しかしアマチュアバンドレベルでもなく 中途半端なクオリティが作品自体のレベルにもなかなか相応しい)を流すことで、
“あぁ、いい映画観たなぁ”と誤解させて観客を劇場の外に送り出すこのイカサマ…じゃねーや、エンタテインメントとして手堅く良く出来た締め括り。

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さらに分解してアクションそのものも、実はアクション演出の手本となる基本的、かつエキサイティングな手腕が振るわれている。
改めてよく観てると、ちゃんと編集されてるアクションである事が解かる。

ロングショットとアップショットの両方をきちんと使い俯瞰の視点を忘れてないから、
ここしばらくのアクションのように、アップばっかだから状況がよくわかんねーとかアップばっかでつまんねーという失態が無い(アップなら迫力出るって小学生みたいなカン違いはどうにかなんないのかね?)。
例えば飛行中のヘリ内でのランボーとユーシンの格闘では、飛行するヘリのロングショットとヘリ内部でのショットを織り交ぜているので、実に危険な状況で格闘している事が観客によく伝わっている。

また、つながりのある編集から生まれる迫力と臨場感がある。例えばある建物が吹っ飛ばされて藁みたいな屋根が散らばって吹っ飛ぶんだが、この時の使用カットがランボー側、ベトコン側、捕虜から見た檻越し、この計3カットにまたがって飛び散る藁が映っていて、流れと迫力が出ている。
ランボーのヘリの飛行カットでも、特徴的な岩の段差のある所を通過する場面で俯瞰とコクピット内、この2カットにまたがって岩の段差が映っており、流れと臨場感がある。

あと、なんつーかな…今の映画のアクションは、前のカットでこうだから次のカットでこうなるじゃなくて、ただ派手なカットと説明カット、ブツ切りの細かいカットの断片並べただけで センスも理屈もへったくれもない。
映画でPVやるんじゃないよっていうか、やっても別にいいけどさ、『ロッキー4』のトレーニングシーンやクライマックスの試合のシーン、ほとんどPV状態だけど、あれはいい。超カッコいいし、見てて非常に気持ちのいい作りにもなってるし。
でも大半のPVがセンスない。何箇所かで別撮りした映像を細切れに切り刻んでやたらめたら継ぎ接ぎしてるだけ。それを映画でもやってる。だから常に映像はガチャガチャしてんだけど、つまんねェっていうね。
いじくってりゃ凝ってるってわけじゃないんだから。スタイリッシュな素材用意してもそれでスタイリッシュなPVが出来るわけじゃねーんだよってのと同じで、カット細かくすりゃエキサイティングな映像になるわけじゃないんだからさ。

じゃ こっちはクラシカルなアクションかというととんでもなく、やり過ぎなぐらいミサイルをブッ放し続け、建物を壊し続け、爆炎を上げ続け、爆破で人が吹っ飛ぶのを短い3カットでしつこく かつ迫力ある見せ方をカマし、スタローンが吼え猛るカットが入り(笑)、次の瞬間ドッドッドドドドン!と音楽がかかり始め(興奮!)、さらに爆撃が続き、村をこれ以上ないぐらい壊滅させてからやっと着陸(この時も、遠景カットとコクピット内のカットがリンクしている編集で(しかも機体は旋回している)、さっきは藁だが今度は爆炎がつながっている)。

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小道具・大道具・ファッションなどもいいセンスで、これが作品のビジュアル面に多大な貢献をしている。

まずランボーナイフ。この片側普通の刃で もう片側がギザギザのコレさ、こんなナイフ見たことなかったもんな。カッコよすぎ。

それからアーチェリー。アーチェリーってどうも古臭いというか垢抜けないイメージがあったんだが(失礼)、このアーチェリーは凄い! 黒い金属(陽極処理?)で組立式のハイテクアーチェリーって感じで、さらに弓の先端に爆弾セット可能。機能性と破壊力を兼ね備えた(もはや)兵器! このアイディア、デザインは凄いよ。アーチェリーの常識を変えた傑作。

捕虜救出の際ヘリから出たスタローンはヘリに据付けの機関銃を手に村へ乗り込んでくんだが、この機関銃も素晴らしい。あの鋭角的かつ暴力的そして近未来的なデザイン! これが当時のスリムにマッチョなスタローンの肉体フォルムにすごいマッチしてて超カッコいいんだが、さらにこれを片手撃ちするというアクション史に残る暴挙、間違った、快挙に出る! あぁいうデカいタイプの機関銃を片手撃ちしたのはスタローンが最初じゃないか?

こうした武器群もナイスだが、それを扱うスタローンの見事にシェイプされたスマートなマッチョボディ、それを覆う黒づくめのファッションがカッコ良すぎるって! 特にあの黒タンクトップがナイスよ。

最後にランボーを追い詰めるソ連軍のガンシップは、ヘリに翼を付ける(翼の下にはこれ見よがしのミサイル群)という凄いデザインで、作品の興奮や重量感にスケールアップをもたらしている。
一方ランボー機は攻撃用戦闘ヘリではありながら 本作のスタローンのグッドシェイプな肉体フォルムを踏まえたスマートな機体をチョイス、相互にマッチしてベストな組み合わせになっている。

『ランボー2』は(ウェットで暗いっていう ストーリーやキャラクターに拠る印象の方ではなく、アクション映画として)戦闘的で機動力が高くスマートである印象が強い映画だが、
その印象は間違いなくスタローンのボディとアイテムからきている。
作品の“ビジュアル面”というのは舞台の風景や役者のルックスだけでなく 大道具・小道具・ファッションといったアイテムもダイレクトに絡んでいる。
『ランボー2』以前に「戦闘的で機動力が高くスマート」な映画というのはなかったはず。映画の印象を決める要素の中でビジュアルが占める割合は決して低くはなく、映画の中のビジュアルというものについて、『ランボー2』はひとつの指針となるものだ。
(ついでに 冒頭に出てくるタイの仏像、あれコメンタリーで実は発泡スチロールで作ってどっかの駐車場で撮影したって聞いてビックリしたよ!)



何か賞を獲れる作品じゃないけど(アボリアッツのアクション版があったら間違いなくグランプリだよ)、いろんな意味で実は良く出来てる映画だよ。評価低過ぎだろ。