本人の地道な努力や忍耐に裏付けされた競争は、個人の能力を最大限に発揮する手段の1つと言えるでしょう。

 しかし競争の末に形成された社会が今、残酷な現実を私たちに突き付けています。

 

 競争で頑張り続けても、大半の人は途中で脱落していきます。生まれた家、親によっては競争のレールにすら乗ることができません。

 こうしてできた多くの負け組には厳しく、少数の勝ち組にのみ優しいのが格差経済社会で、個体数が増えすぎたケージ内のマウスと人間世界は同じ様相を呈しています。

 

 競争でふるい落とされ、現れたストーカーや引きこもりのオスマウスは、時に仲間に対して卑劣な攻撃を仕掛けるようになりました。

 異性から相手にされない男が女性を見下す、溜まりに溜まった屈辱や劣等感をよくない形で爆発させた事件はニュースでしばし流れてきます。勝ち組を横目に、憎しみや敵意を募らせ、失うものがない「無敵の人」が相手を選ばずに起こす犯罪。「だれでもいいから、人を殺してみたかった」と考え、実行した人間とマウスの行動が近いものに見えます。

 

 今度はメスマウスに目を転じてみます。

 メスは亭主と家付き、家無しの渡り者、引きこもりの3つに分かれました。

 2番目の亭主・家無しのメスは未成熟で、子育て能力も乏しいゆえに妊娠しても適当な場所に子を産み落とし、移動で運ぶ途中では子を放置したまま自分だけ去ってしまいます。見捨てられた子は短い命に終わる運命にありました。

 さらにはオスの役割を担うメスも現れ、テリトリーをつくるために他のマウスを攻撃しだします。

 これらを人に置き換えれば、「育児放棄」「ネグレクト」「女性のオス化」に当たるでしょう。

                           ――次回へ続く――

 

 ふんわり静かに・・・。