自分のテリトリーを持てないオスマウスは、行動がますます不自然になっていきます。

 自然界のマウスの求愛行動は決まったパターンによって行われます。オスは気に入った異性がいると後を追い、メスが自分の巣に入るを確かめると入口付近で求愛行動を取り、出てくるのを待ちます。

 ケージにはこのパターンを無視したオスが増え、メスの後について一緒に巣へ入ってしまうストーカーマウスがいます。さらに成熟していないメスへの交尾行動、オスに交尾を迫るマウスも現れます。

 ケージ内は無差別に強姦が起こるカオス状態に陥ったのです。

 

 実験開始から560日が過ぎると、マウスの人口増加が止まりました。

 2200匹を最大に1日の死亡率と出生率が並び、乳児の死亡率はますます増え、高齢化が急ピッチで進みます。

 600日目に死亡数が出生数を上回ると、乳児の死亡率はもはや100%になっていました。

 920日目にメスに最後の妊娠が確認されるも産まれることはなく、1330日目にはマウスの平均年齢が人間で言うところの76歳と高齢になっていました。

 1444日目まで生き延びたメスは100、オス22匹となりました。マウスの数が激減したとき、自然界ではありうる個体数の揺り戻しもケージ内にいるのが異性に関心の無い、引きこもりのオスでは起こりようがありませんでした。

 1780日目に最後のオスが死ぬとケージ社会は滅亡を待つのみとなりました。それは5年と続くことのなかったパラダイスの、早くも脆い終焉でした。

 

 生き残ったメスは天国と言う名の地獄から抜け出し、健康なマウスと一緒に暮らすことになりました。しかしケージで過ごしたメスは他のマウスと関わることなく、精神を病んだまま孤独な日々を過ごし、命を潰えたのです。

 

 この実験は異なるスケールで25回繰り返されました。

 結果はすべて同じでした。

 人間とマウスは別の生物です。実験の結果と同じ道をたどるとは考えられません。ただしDNAは95%まで似通っており、各種の実験にマウスが使われているのはご存じのとおりです。

 

 ここに書いたのは「Univerce25」の概要に過ぎません。カルフーン博士、実験について書かれた和訳本が日本では1冊も出版されていないなど謎の部分はあります。それでも考えさせられる内容であり、人類の行く末を占う手掛かりとなり、対策を見い出すためにも有益なデータであると僕は思います。

 次回はさらに考察を重ねていきます。

 

 ふんわり静かに・・・。