アライバル
ショーン・タン 著
河出書房新社
これは、本の形をした映画だ。
カテゴリーとしては「字のない絵本」になると思うのですが
この圧倒的な情報量は、すごいです。
表紙に描いてある、トカゲのような変な生き物を見てもお分かりのように
ファンタジーな架空の世界ではあるのですが
移民・戦争・強制労働などの事象が分かりやすく描かれています。
主人公が初めての土地で、住まいや仕事を探す様子は、一緒になってドキドキするし
見たことのない食べ物に怯む様子は、ちょっと笑ってしまいます。
見開きいっぱいに描かれた巨神兵のようなものから逃げる人々の様子は、絵とはいえ寒気がするほどです。
ですが、私が一番すごいなぁと思ったのは、
空の絵です。
主人公が船旅をしている間の時間の経過を、60枚の空の絵で表現してあるのですが
文字ではなく、時間が過ぎていく様子を表現するのに、なるほど確かに空を描くというのが
一番分かりやすいな思います。
一瞬たりとも同じ姿はなく、二度と同じ姿にならない空。
それは、切なくもあり、希望でもあるように思います。
物語の最後は、未来への希望を感じる絵で終わっているので、ほっとします。