23.僕ってさ

エンジニアで採用されたんだよ

 

どこへ住もうかな?

ということで日本の名だたる

サーフィンスポットを

旅したシュウちゃんは

宮崎に居を決めて、動き出した。

住むところを決めたら次は仕事

思いっきり生物学から

離れてしまったのか

 

「僕ね、仕事を始めたんだよ」

「プラズマテレビって知ってるよね?

それを作る工場に勤務しているんだよ。

凄いんだよ

僕ってさエンジニアで採用されたんだよ」

 

あらまぁ、エンジニアですかぁ?

すごいし。

 

研究はどうしたの?って話になったら

「今はね、海洋生物に

お金を出すスポンサーがいないんだよ」

なんてこと言ってたような…。

 

当時プラズマテレビが話題になり

宮崎に「富士通のプラズマ工場」が

あったのだそうで

後から調べたら

日立と富士通がタイアップをした

開発だったようです。

 

ところが・・・

お給料が1/10ほどになった。

「僕ってさ、ビンボーになったよ」と

笑ってた。

スーパーへ行って

オレンジを買うとするでしょ?

前はね、袋に入ったオレンジを

買っていたけれど

今は

一つか二つ買うだけにしている。

買い物も必要なものだけを

買うようになった。

 

『でも、なんか悲壮感はないでしょ?』と

尋ねたら

「そう、なんか逆に幸せなんだよね」と

返してきた。

それでいいんじゃないの?

倖せって

ものやお金じゃないからね

その時その人が幸せって思えれば、ね。

そう言ったら

「その通りだね」って笑っていた。

 

バックパッカーで海外を旅していても

必ず帰りのチケット代だけは

しっかりと残す。

例えどんなことがあっても死守する。

それは、パスポートと同様

日本へ戻るという

一つの思いがあった。

 

お金はね、大事だよ。

でも、無くなったら働けばいいんだよ。

働けばお金は手に載る

これは万国共通だから…

そういう時代も終わったのかも

知れないなって

ここ数年の世界経済状況は

決してノー天気ではいられない。

 

そういう時代となった今、

シュウちゃんはどうしているのだろうか?

そんな時に必ず

耳の奥で声が聴こえた。

 

『ひっさしぶりぃ~シュウだよぉ~』

 

プラズマテレビは主流でなくなり

液晶テレビが

とって変わる時代が来ました。

プラズマテレビ工場は

その後ソニーの手に遷り

省電力型テレビが主流となった今は

プラズマテレビは

影をひそめた感ありとなりました。

 

エンジニアで

仕事をしていたシュウちゃんは

また海の上の人に

なっているのだろうか?

 

『僕の事、知りたければ

サーファー協会へ連絡するとわかるよ』

って笑いながら

言っていたけれど

シュウちゃん、今はね

個人情報保護法があって

教えてもらえないよ。

 

その反面

シュウちゃんの今を知ったところで

どうってことはないのです。

ただ、あんなにかるーくすごいことを

どんどん放り込んできた人が

ふつーの人になっているとは思えない。

 

いつか、ノーベル賞を取るような

科学者になったらね

わたし、大きな花束を抱えて

お祝いに駆けつけるからね

そんな約束を忘れずにいる私。

 

さて、夢はかなうのだろうか?

 

ただひとつ、わかるのは

とてつもない動きをしていた人が

私のネットワークに

一時的に存在をしたということでしょう。

それだけでも

何故か人生のご褒美のようです。

 

次は、いよいよ最終話

 

「シュウちゃんは、宇宙人かも?!のお話。

 

 

…つづく