未来派宣言
僕にとって、数少ない、今でも聴いてるブリット・ポップの生き残りバンド。
マニック・ストリート・プリーチャーズの新作です。
ブラーが空中分解して、オアシスが喧嘩別れして、レディオヘッドがロックを辞め、スウェードが失速して……この20年でほぼ消滅した90年代イギリス・ロック・バンド。
その中の生き残りが、マニック・ストリート・プリーチャーズなのね。
未来派宣言
正式名はFUTUROLOGYです。
え?
2014年の現在でダサい邦題がつくの?
そんな気もしないではないけど、マニックスの場合、この手の邦題は毎回付いてた特に気にはならないね、うん。
でね、僕にとっては、今回のアルバム。
思いっきり、肩透かしをくって期待を裏切られたアルバムです。
ええと、ちょっとさ、
その前に、マニックスを知らない人も増えてるだろうから、バンドの紹介ね。
デビューは1991年イギリスね。
時代錯誤のパンク・ロック(悪い意味で)でインディーズから登場。
ほんと、酷い演奏と音です……とほほ。
彼らが注目されたのは、音楽面より、そのビジュアルとビッグマウスでした。
とにかく、メンバーの
リッチー・ジェームス・エドワードの妖艶で繊細で壊れそうで、それでいてカミソリのように危なそうな感じは最高にカッコよかったよ。
でもリッチーはほとんど楽器演奏できなかったんだよ。
ヴォーカル&ギターは、ジェームス・ディーン・ブラッドフィールド(左)、ベースのニッキー・ワイヤー(右後)、ドラムスのショーン(右)、それに楽器が弾けないギターのエドワード(中)。
全員、幼馴染。
俺たちは2枚組のデビューアルバムを全世界で1位にして解散する!
デビュー前からそんな宣言。
記者会見でそれをからかわれた時、リッチーは自分の腕をカミソリで「4RIAL」って切り刻んで、そのまま病院送り、17針を縫う大怪我……。
デビュー時の時代錯誤感が嘘だったように洗練されていくバンド・サウンド。
そしてデビューアルバム発売。
ガンズ&ローゼズとブリット・ポップが合体したような勢いのあるパンク系ポップ作品。
結果は……全英13位。
ごめんなさい、やっぱり解散はしませんって、あっさり解散撤回。
マスコミから袋叩き……。
と、まあ、デビューの時からお騒がせしてたバンドです。
でもね、続く2ndアルバム「ゴールド・アゲインスト・ソウル」の完成度の高さはぶっ飛びました。
僕は大好きで今でも聴いてるけど、メンバー自身は「嫌いな作品」だって言ってたよ。
デビューアルバムの反省から、一般ウケする作品を敢えて作ったんだってさ。
2枚目から、何がカッコいいかって言うと、繊細で危ない雰囲気が全開ってとこだね。
ガンズ&パンクな雰囲気が無くなり、洗練された英国ロックです。
そして3作目「ホーリーバイブル」
まるで氷のように冷たくて、カミソリのように危なくて、でも触ると壊れそうで、感情が欠落したような無機質なアルバム……なのに、感動的に美しいパンク・ロック・ポップ。
初めて聴いた時の感想ね。
今でもそう感じるよ。
そして、マニックス作の中で、他の作品とは完全に異質な雰囲気をもった特殊なアルバム。
リッチー・ジェームス・エドワード色が濃厚です。
英語発音の綺麗なイギリス・バンドが作った作品なのに、何と唄ってるのか一切わかりません……。
いや、英語が話せるとか、理解できるとかじゃなく、普段、洋楽で耳にするような歌詞が一切出てこないんです。
天才詩人リッチー・ジェームス・エドワード!
もうね、危険すぎて、近寄れないバンドに感じてました。
ところが、この後、大事件が勃発!
リッチーが……謎の失踪。
行方不明になってしまいました。
今も見つかっていません。
もともと、かなり精神が不安定なリッチーだったから……。
リッチーが戻ってくるのを待ち続けるメンバー(幼馴染で親友だからさ)、解散する?
でもリッチーの母親から、息子が帰った時に居場所が無くなるからって後押しされて、残った3人で活動再開。
リッチーが居なくなったバンドは……、今までの危険な雰囲気が一切ない好青年バンドになってました。
もちろん、メディアもファンも健気な若者バンドを応援!
皮肉にも、この後、マニック・ストリート・プリーチャーズはイギリスを代表する国民的バンドにまで成長しちゃいました……とさ。
僕はさ、リッチー失踪後の作品が好きになれず、一時(5~6年くらい)、バンドに対する熱が消えてました。
まあ、アルバムが出るたびに聴いてはいたけど、「ああ、やっぱりマニックスは終わったわ」ってずっと思ってたんだよ。
でもね、10年位前の「ライフ・ブラッド」って作品から、彼らの作品がだんだん好きになってきたんだよ。
他のバンドが解散したりデジタルに移行して行く中、デビュー当時からの雰囲気を残したまま活動するマニックス。
改めて作品を聴きなおすと、当時、僕がぞっこんだった「ホーリーバイブル」が異質だったことに気が付いたよ。リッチー失踪後、毒が抜けたって思ったのは、ホーリーバイブルが毒々し過ぎただけで、他の作品はどれもマニックスでした。
でね、
2009年に発表された
「ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ」
リッチーが失踪して、イギリスの法的な死亡宣告が確定したのを切っ掛けに、彼の残した詞を使って全楽曲を制作したアルバム。
ホーリーバイブルの続編。
今のマニックスの音に、あの危険な雰囲気がプラスされた、近年稀に見る傑作でした。
で、次の作品が、メディアへの最後の挑戦状?
「ポストカーズ・フロム・ア・ヤングマン」
リッチーの死亡が宣告され、彼が残した詩をほぼ全て出しきったことで、ここで一先ずバンドの区切り。
バンドとしては、自分たちの音楽が今の世の中に通用するのか?
って、そんな意味もこめてたのかな?
僕的には、マニックス史上で最も嫌いな、聴くに堪えられない史上最悪なアルバムでした。
毒が抜けたどころか、爽やかすぎる……、ハッピーで陽気な音。
世間的には、どうなのさ?
結果は……惜しくも敗退でした。
もはや、今の時代にロックバンドは必要とされていないって。
無期限の活動休止!です。
でもね、働き者のバンドなので、ライブこそは演ってなかったけど、作品は作っててくれました。
活動休止から3年後(洋楽なら普通のサイクル)には新作を発表。
そう、これが今回の「未来派宣言」の序章です。
アルバム「リワインド・ザ・フィルム」ね。
今までのバンド・サウンドを無くし、アコースティックなバラード・アルバム。
渋い、渋すぎるよマニックス。洗練された美しいメロディ!
え?
何やってんのマニックス!
ってさ、怒りを感じたよ、あまりのアコースティックぶりにさ。
マニックスのトレード・マークだったフックの効いたロックを聴きたいよ!
でもね、実は、別のアルバムを同時制作してますだって。
最初は完全アコースティックな静アルバム。
次は完全エレクトリックな動アルバム。
そう、それが今回の「未来派宣言」です。
聴きました。
買っちゃいました、初回限定デラックス・エディション2枚組。
……あれ?
エレクトリック?
エレクトリックって?
ギター・バンド・サウンドじゃなく……
電子音かよ!ってさ、肩透かし!
いや、別に作品の質が低いわけじゃありません。
マニックスの音楽です。
レディオヘッドのように、90年代とは別バンドってほど電子音じゃないしさ。
相変わらず、いつものフックが聴いたマニックス音楽全開です。
どちらかというと、カッコ良い部類の作品。
ただね、電子音が多い……
いやいや、この程度なら過去にもやってるわ、マニックス。
ああ、なるほど、そうか。
電子音が多いんじゃなく、バンド・サウンドじゃなくなってるんだわ。
ギターの音の主張が小さく、ドラムスが機械的。
メディアへの挑戦状で敗退したことで、バンド・サウンドに拘ってたマニックスから、新たな冒険の旅に出発したんだね。静と動もその一環?
って、僕はさ、やっぱりバンド・サウンドを聴きたかったんだけどね。
エレクトリックな作品って、ギター・ロック全開を期待してたんだもん。

