イギリスのグラム・ロック・バンド
T.REX の
オリジナル・アルバムBOXセット
THE STUDIO ALBUMS
を聴いたのでレビューしようと思います。
VIDEO
先ず、率直な感想から言わせてもらうと。
現在のT.REX作品の中では、
最高のBOXセットです。
何と言っても音が良いっ!
そしてそれ以上に、オリジナル全8作品の音量が(ほぼ)均一に揃えられているBOXセット はこれが初めてではないでしょうか?
収録作品はオリジナル・アルバム8枚。
1.T.REX
2.ELECTRIC WARRIORS
3.THE SLIDER
4.TANX
5.ZINC ALLOY
6.BOLAN'S ZIP GUN
7.FUTURISTIC DRAGON
8.DANDY IN THE UNDERWORLD
1970年~1977年までに発売されたスタジオ・アルバム全8枚に、当時のアルバム未収録の人気曲10曲が、関連の近い作品にボーナス・トラックとして追加収録されています。
オリジナル至上主義の方からは、その10曲を別のCD1枚にまとめろよ……なんて意見が出そうですが、こればっかりは、販売コストやレーベルの所有しているマスターの問題などもあるのでしょう。個人的には、どんな形であれ、こうやってリマスター音質で聴けるのは嬉しい限りです。
ここに、ティラノザウルス・レックス時代の4枚が入っていれば完璧だったのですが……多分、版権などの問題で不可能だったのでしょうね。
さて、本題です。
今回のBOXセットのリマスター音質 について、です。
聴き比べに使用したのは、
2014年発売の「THE ALUBUMS COLLECTION」 の音質です。
最初の2枚、
1.T.REX
2.ELECTRIC WARRIORS
これは、2000~14年頃に発売された30周年記念盤やデラックス・エディションとほぼ同じ音質です。2014年BOXにもこの音質のリマスターが収録されています。
今回、簡易的にですが、聴き比べをしてみましたが、僕の試聴環境ではまるで同じ音に聴こえます。
ただ、冒頭や曲終の無音部分がカット されていたり、曲間の区切りが微妙に変わっていたり と、細かな調整が入っているので、もしかすると今回のBOXセット用に新たなリマスターが施されているのでは……と、ちょっと期待したりしています。
これに関しては、使用マスターが公開されていないので何とも言えません……。
ただ、この2作に関しては、個人的にはこれ以上音質を変える必要が無いと思うくらい、30周年記念盤の音がある意味での完成形ではないのかと思います。
これ以上のリマスターになると、ハイレゾだったり新技術のリマスターが必要になりそう……。
でも、そこまで追求しだすと、もはや「音楽作品を聴く」という純粋な行為を逸脱して「音を分析する」というワケノワカラナイ領域に踏み込んでしまいそうなので、これ以上の音質改善は、どうでもいいかな……って思います。
音質が劇的に変化 していたのは
3.THE SLIDER
4.TANX
です。これはもう、聴き比べるまでもなく、聴いた瞬間に「うわぁ、マジかっ!」って驚くべきレベルの変化でした。
「THE ALUBUMS COLLECTION」収録の「THE SLIDER」 は2012年リマスター、「TANX」 は2014年リマスターですが、この時点でかなり音質は良かった気がしていました。
まさか、この音質の上を行くリマスターが聴けるとは……。
具体的には、「THE SLIDER」 は旧盤CD※便宜上これをオリジナル盤とさせて頂きます の時から気になっていた、モッサリ籠った音質が解消されています。各楽器の音にメリハリがあり、音がタイトになった印象です。
これは、2012年盤と聴き比べするまでもなく、オープニング曲の「METAL GURU」 の最初の1音目を聴いた瞬間に分かりました。
使用マスターは未公開ですが、50周年盤の音なのかも?
僕は50周年盤は全て未試聴なので分かりません。
ただ、50周年盤の発売は2022年だった気がするのですが……、2024年に発売された最新ベスト盤に収録された「METAL GURU」はモッサリ籠った音質のままなので、やはりBOX用に新リマスターが施されたのでしょうか?
「TANX」 に関しては、これは更に驚きだったのですが。
2014年リマスターは、オープニングの「TENEMENT LADY」 のベース音が分厚く、他の楽曲よりも音量が大きく聴こえる……なんて状態だったのが、今回のBOXセットでは解消されています。
これも聴いた瞬間に分かる劇的な変化でした。
そして、曲によっては2014年盤と差がないものがあったり、明らかに音量やアタック感が変化しているものがあったり……などなど。楽曲ごとに細かな調整がかけられていて、まさに愛のあるリマスターの見本 のような仕上がりになっていました。
代表曲「BORN TO BOOGIE」 は、最新ベスト盤ではスッキリとタイトな音質だったのに対し、このBOXセットの音は厚みのある、言い方は悪いですがモッサリ音質になっています。
思わず、ベスト盤は「シングル・ヴァージョンの音なのかな?」なんて思いましたが、よくよく考えると、2025年発売のBサイド集に「BORN TO BOOGIE」のシングル・ヴァージョンが収録されているので……やはり、今回のBOXセット用にリマスターされた音、なのでしょうか?
そして、これは続く、
5.ZINC ALLOY
でも同様でした。
2014年リマスターと聴き比べて、差がないものや、明らかに変化しているものがあり、全体的にブラッシュ・アップされて音質が向上した印象を受けました。
6.BOLAN'S ZIP GUN
7.FUTURISTIC DRAGON
8.DANDY IN THE UNDERWORLD
に関しては、2014年の時点での最新リマスターが2000年代初めのものしかなく、音量が小さく音がドンシャリな状態でした。
確か、2015年以降に上記3枚はリマスター盤が発売されていたと思います。残念ながら、僕は未試聴です……。
そういうこともあり、この3枚は正直、音質が向上しているのか判断に迷うところです。ただ、音量が上がっているので何らかの手は加えられていると思いたいところです。
ただ、唯一
6.BOLAN'S ZIP GUN
のみ、今回のBOXセットもシャリ感が強い傾向に感じました。2000年代初めのリマスター盤と聴き比べても違いが無いようにも感じます。
データベース・サイト「Discogs」で調べてみたところ、2002年と2015年にリマスター盤が再発されているので、多分、2015年リマスターが採用されているとは思うのですが。
【追記】
ちょっと気になって、「BOLAN'S ZIP GUN」 を無料の波形編集ソフトで調べてみたところ、2014年BOXと最新BOXセットのマスターは別物のようです。
最新BOXセットの音は2014年BOXに比べて高音部分が抑えられた上で音量がアップした波形になっていました。あくまで、素人が調べた結果なので、それでどれくらい音質が変わるのかは分かりません。実際に聴くと同じに聴こえるので。
残念ながら、3~5までのアルバムの音質向上が凄すぎて、この3枚に関してはちょっと遅れをとっている印象を感じました。
もしかすると、1~2は2000年頃、3~5は50周年記念盤で、6~8は2015年あたりのリマスター音源かもしれません。
2017年に日本独自で新技術※ハイレゾ音質をCDで再現する を採用したリマスター盤が発売されてますが、まさか、輸入盤には採用されないだろうから……。
ただ、
8.DANDY IN THE UNDERWORLD
は、明らかに音量がアップしているので、全作このBOXセット用に音量は調整しているのかも?
※音質を変えずに音量を上げるのもリマスターに含まれる、なんて解説を読んだことがあります。
とまあ、リマスターの音質については色々と思うところもあったりしますが、何と言っても今回のBOXセットは、8作品の音量がほぼ均一に揃っていて、全曲シャッフルで聴いてもまるで違和感なく気持ちよく聴けるのが最大のポイントです。
このBOXセットの音質・統一された音量なら、純粋に「T.REXのアルバムを聴く」という音楽鑑賞欲求は充分に満たされると個人的には思っています。
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そしてここからは、僕のCDコレクターとしての「収集癖」 がもたらす悪い部分です……。
実は、T.REXはアルバム未収録の楽曲 が多く、2014年発売の「THE ALBUM COLLECTION」では27曲が収録された2枚組のボーナス・ディスクがついていたのですが……。※個人的にはそれ目的で買った部分があります。 それでも完全コンプリートとはいかないのがコレクターにはモドカシイところだったりします。
でもまあ、これについては、ベスト盤およびBサイド集に全て収録されているので、コチラを買って下さいってことなのかな?
ただ、実は……
これでもT.REXの公式楽曲はコンプリートとはなりません。
旧盤では、結成25周年記念と銘打ってティラノザウルス・レックス時代からT.REX時代のアルバム、ベスト盤、死後に発売されたアウトテイクなど、ほとんど全ての音源がシリーズ的に一気に発売されましたが、今は……版権が分かれているのでしょうか?
※僕が今でも30年前に買った旧盤を大切に保管しているのは、音質・音量が統一されたT.REX(ティラノザウルス時代を含む)全アルバムをこれ以外に知らないからです。
例えば、リマスター盤では、
T.REX改名後の1stシングル「RIDE A WHITE SWAN」のカップリング曲「Summertime Blues」 は「T.REX(デラックス・エディション)」にしか収録されていないし、「ELECTORIC WARRIOR」期のシングル・カップリング曲「King Of The Mountain Cometh」 は「ELECTORIC WARRIOR(30周年記念エディション)」にしか収録されていません。
僕が知っている限りでは……です。
旧盤では、普通にシングル・コレクションに収録されていたと思うのですが……今は大人の事情でもあるのでしょうね?
それでも、2025年12月時点で、この「THE STUDIO ALBUMS」を超えるT.REXの全作BOXセットは存在しないのは確かです。
価格的にも1枚当たり2000円以下とお買い得だし。
注意点としては……
タワレコ、アマゾン、ディスクユニオン、他サイトと、販売価格が違っていることです。
個人的にはタワレコの14090円が定価だと思っています。
ただし、タワレコは「お取り寄せ商品」となっているので、注文して2週間以上は待たされることになるとは思いますが……。
そして……T.REXは、日本では人気のバンドですが、なぜかiTunesのダウンロード販売には最新リマスターがありません。
サブスクはとっくに解禁されていると思うのですが……。
なぜなのか?
そういう意味では、
T.REXファンには嬉しいBOXセットなのかもしれませんね。
興味のある方は、是非、聴いてみて下さいね。