ここ最近……、
X世代のオジサンの心を鷲掴みにしている
イタリア出身のZ世代ロック・バンド
マネスキンをご紹介です。
まるで「ジョジョの奇妙な冒険~黄金の風~」の世界から飛び出してきたような、ロック・スター然としたグラマラスな佇まいが「そこにシビれる憧れるっ!」って感じの新世代ロック・バンドです。
そんな彼らが2018年にリリースした1stアルバム
Il Ballo Della Vita
アルバム発売当時、ボーカルで最年長のダミアーノが19歳、他のメンバーは17歳~18歳という若さだったのには驚きです……。
現在、このアルバムに収録された「Fear For Nobody」がホンダSUV ZR-VのCMソングに起用されてますね。先日、TVで流れていました。
さて、この作品
「イル・バッロ・デッラ・ヴィータ」ですが、内容的にはデビュー作ということもあり、2021年に世界的ブレイクを果たして以降のロック・サウンドとは微妙に違う、全体的にポップな雰囲気が漂うアルバムです。
例えば、2ndアルバム「テアトロ・ディーラVol.1」から顕著となる骨太ロックなギター・リフなどはまだまだ控えめで、どちらかと言うと、ポップでファンクなクリーン・トーンのバッキング・ギターが印象的な楽曲が多いと感じました。
特にアルバム前半は、男性アイドル・コーラス・グループと言われても「ふうん、なるほどね」って思うくらい、ポップでキャッチーでメロウな雰囲気の楽曲が並んでいます。
これは日本盤CDライナーにも書かれていましたが、当時の彼らはまだバンドの方向性が明確になっておらず、オーディションを勝ち上がった知名度を武器に作品を売るという所属レーベルの思惑なども絡み、様々な方向性を試しつつポップでキャッチーな曲を求められた……結果なのだとか。
※と言ってもライナー文も憶測的な記述でしたが。
う~む、確かに。
もしもマネスキンがこの1stアルバムの方向性のまま次作を出していたら、ロック好きオジサンである僕は、彼らの音楽に心を掴まれることはなかったかもしれません。いやまあ、オジサンは関係ないのですが……。
ただ、マネスキンのサウンドの面白さ※と個人的に思っているのですがである様々な年代のロックへのリスペクトはチラホラと見え隠れしている気がします。
収録曲は12曲です。
イタリア語の楽曲が多いので曲名はカタカナで紹介させていただきます。
ニュー・ソング
トルナ・ア・カーザ
ラルトラ・ディメンショーネ
シット・ブルーヴァード
フィアー・フォー・ノーバディ
レ・パローレ・ロンターネ
インモルターレ
ラッシャミ・スターレ
アー・ユー・レディ?
クロース・トゥ・ザ・トップ
ニエンテ・ダ・ディーレ
モリロ・ダ・レ
先ず、オープニングナンバーの「NEW SONG」を聴いて真っ先に思い浮かべたのは、QUEENの名曲「地獄へ道づれ」でした。
これは、「パクリ」とかそーゆーことではなく、過去の名曲に対するリスペクト……と言うか、「ああ、マネスキンのメンバーって本当にロックが好きなんだな」っていう、ある種の親近感を感じる的な……、そういう感じです。
その後の3曲は、ロックと言うよりはラテン的な雰囲気漂うメロウなポップ・ナンバーが続きます。
イタリア語特有の巻き舌歌唱が新鮮です。
そして、CMソングにもなった5曲目の「Fear For Nobody」でロック・テイストな曲へ戻り……
バラード・ナンバーの「レ・パローレ・ロンターネ」で前半の6曲が終了です。
正直、ここまで聴いた感想は、新世代ロック・バンドというより、どこにでもいるメロウ・ポップなアイドル・バンドって感じ。アマゾンのレビューにもありましたが、マネスキンはデビューEPの「チョーズン」以外は聴かなくていい……という意見も分かる気がします。
ただし、後半の6曲は、その後のマネスキンの活躍を予感させるようなバラエティ豊かなロック・ナンバーが続きます。
先ず、ラッパーのヴェガス・ジョーンズをフューチャーした「インモルターレ」で、ダミアーノのラップ歌唱的な早口イタリア語歌唱が披露され、その後もポップ・ロック、ラテン・ロック、ガレージ・ロックなどなど、幅広いタイプの楽曲で一気に最後まで聴かせてくれます。
もしかすると、意図的にそういう選曲になってるのかも?
レコードのA面はレーベルの意向に沿った一般ウケするメロウ・ポップで、B面はバンドの意向を反映したロック・ナンバー。
海外ではCDの需要はホトンドなく、アナログ・レコードの方が売れているって話を聞くので、曲順自体がそれに合わせた並びになっているのかもしれません。
実際、iTunesのプレイリストで2~4、6曲目の楽曲を抜いて、残りの8曲だけを聴くとアルバムの印象がガラリと変わります。
決して「チョーズン」に劣ることのないロック・アルバムになっています。
そして、なんと言っても、当時若干19歳のボーカル、ダミアーノの歌唱力の高さにぶっ飛びです。
基本的にはハスキーでロックなシャガレ声系の声質※僕が好きな声質なのですが、アルバム前半で「男性アイドル・コーラス・グループみたい」と感じた通り、甘い美声でも唄えるし、高音ファルセット・ボイスも出せるし、とにかく歌唱力が高いです。
最新アルバム「ラッシュ!」の日本初回盤にボーナス・ディスクとして付いていた初来日時のライブ音源を聴いても、ダミアーノの歌声にはブレがありません。
逆に……他のメンバーの演奏の未完成さ※演奏が下手という意味ではなく、ベテラン・バンドばかり聴いているオジサンの耳にはフレッシュな演奏に聴こえるという意味でが目立ってしまっていると感じるくらいの歌唱力です。
そしてもうひとつ。
これは個人的な好みなのですが、マネスキンの楽曲にはフェード・アウトで終わる曲がありません。まだ全アルバムを聴き込んでないのですが、多分、全曲フェード・アウトしないと思います。ここまで徹底的にフェード・アウト無しで演奏を完了するバンドは珍しい気がします。
逆に、アウトロがあまりにもアッサリしすぎてて、曲を聴き終った後の余韻のようなものは少ないかも?
でも、こういう拘りも、ロック・バンドとしてマネスキンがオジサンの心を掴んだ理由のひとつだと思います。
ただ、こういう曲構成に対し、一部では「似たような曲が多い」という意見もあるようです。
確かに、マネスキンを聴き込んでいない状態の僕自身も、「似たような曲」「曲の区別がついていない」と感じる部分はあるのですが、これに関しては、とくに気にすることはないと思っています。逆に、新しいバンドを聴き始めた時は、それが普通だとさえ思っています。
問題は、その「似たような曲」が好きか嫌いか……です。
似たような曲が多いけど、どの曲もカッコイイと感じたなら、多分、マネスキンのアルバムは全て好きになれるはず……です。
ちなみに、2017年に発売されたデビューEP「チョーズン」は、オリジナル曲2曲とカバー曲5曲の7曲入りで、全曲オリジナル・アルバム未収録です。
粗削りなロック・サウンド……と言うか、個人的には80年代後半~90年代初めのインディー・オルタナティブ・ロック(+ファンクを少々?)の殺伐としたギター・ロックの雰囲気を感じました。
いや、それ以上に、オープニング曲「チョーズン」で、いきなりバンド名を紹介しているのに思わず笑いそうになりましたが……、もちろん良い意味で。
今まで、スタジオ・レコーディングの楽曲で自身のバンド名を紹介したバンドって、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンか米米クラブくらいしか知りませんから……。
ちなみにEP「チョーズン」収録曲にもフェード・アウトで終わる楽曲はありません。
興味のある方は、是非、新世代のロック・バンド、マネスキンを聴いてみて下さいね。