1年半前から動き出した川根小学校50周年祭のプロジェクト
球舞のマルコさんを中心にどんなステージにするかのミーティングを重ね
役1年の歳月を費やし、映像とパフォーマンスとが一つになった作品を子どもたちと作るアイデアが形になっていった
そんな中で2018年5月29日に子どもたちとの第一回ワークショップが始まり
ドキュメント#1の冒頭マルコさんの
『僕たちは張り切って、もうすでに色々考えて作り込んで来てます』
と言っていた言葉は事実で、この最初のワークショップの頃には大枠のステージングは決まっていた。
でも子どもたちがどこまで出来るか?
やりたいか?
それが未知数だったため、最終的にどんなステージまで持っていけるかは誰にも分からなかった。
それがこのマルコさんの最初の子ども達へのメッセージには込められていた
つまりどんなステージになるかは
『君次第』なんだと。
そんな中歌担当の僕らとラップ担当のハマー(2BACKKA)さん
島田市立川根小学校〜その1〜にも書いた通り
子どもたちから川根の好きな所を聞いた僕らは
学校から宿に戻ると一夜で曲を書き上げた。
僕とハマーさんとで曲作りをしながら明け方頃
『西郷君いつもそんなスピードで曲書けるの?そりゃあれだけリリース出来るわけだわ!スゲェなぁ!!』
と僕をハマーさんは持ち上げ、僕が天狗になろうかと思った刹那、その横でハマーさんは子どもたちが歌うトラックの音源をたった一夜で作り上げ僕のまだ伸びてもいない鼻はへし折られる事となる
それぞれに得意な物が違うプロフェッショナルが集まり、刺激しあえる環境は僕にとってもこの上なく幸せなチャレンジだった。
そしてその全ては
『川根の子どもたちの為に』
5月30日
新たに生まれた楽曲を学校に持っていき子どもたちと練習。
そして最後に各グループ毎の発表が行われ
このドキュメント#1ラストの事件が起きた。
歌グループ
全く歌えず
けして歌を覚えていないから歌えなかったわけじゃなかった。
練習ではちゃんと歌えていたのだ。
それでも、これまでいつものどかな環境で育ってきた彼女達にとっては、この『自分で作詞した曲を人前で歌う』と言うことは僕が予想していた以上にハードルの高いものだった。
そりゃそうだ!そんな経験した事無くて当たり前だ。
なのにどこか『これだけ練習で歌えれば大丈夫でしょう!』と安易に考えていた僕のミスだった。
発表が終わると体育館に歌グループのみんなと集まり円になった。
どんよりとした空気の中誰も喋り出さなかった。
『なんで歌えなかったとおもう?』
と聞くとかなりの沈黙が流れたあと、歌グループリーダーの女の子が
『多分緊張しちゃったり、恥ずかしかったりしちゃった。』
と勇気を出して言葉にしてくれた。
歌グループのリーダーの女の子はとても穏やかで優しい子だ。
でもけしてみんなをグイグイ引っ張って行く活発なタイプではない。
でもそのかわりみんなの想い一つ一つに丁寧に寄り添える優しい子だ。
今回のプロジェクトを通して
『リーダーの私が言わなきゃ!!』
と彼女が意を決して言葉にしてくれる姿を何度も見た。プロのミュージシャンに自分の意見をぶつけるなんて、きっと怖かったと思う。大人数の前で自分の想いを言葉にするのはすごく勇気が必要だったと思う。
僕は絶対に子ども達の意見を否定するような事はしないけど、それでもきっと毎回僕の前で想いを言葉にする時には凄く振り絞っていたと思う。
その喋り出すまでの間や、振り絞って喋り出した彼女の言葉が僕は大好きで、いつも『カッコいいなぁ』と思って見ていた。みんなの為に強くあろうとした勇気あるリーダーだった。
かくして僕たち歌グループの最初の発表はなんとも悔しい結果で幕を閉じた。どうしたって僕はその後東京に帰らなくてはいけなくて
落ち込む子ども達に
『どうしたら次回緊張しないで歌えるか?どうしたらもっと楽しんで歌えるかを、来月までに考えて、みんなで挑戦して欲しい!!』
と子どもたちに課題を渡し
静かに頷く子どもたちの背中を見つめながら
東京への帰路についた。
正直子どもたちの初挑戦を笑顔で終わらせてあげられなかった事がつらくて、帰りの車も一人落ち込んでいた。最後のうなだれる子どもたちの背中が何度も浮かび、辛かった。
もっと違うやり方があったはずだ。
きっと笑顔で今日を終わらす方法があったはずだ。
綺麗事や偽善なんかじゃ無く、単純に自分の力不足に腹が立った。
そんな中だった。数週間が過ぎた頃映像班のレイさんから子どもたちの映像が届いた
是非これを見てほしい
子どもたちがあれからの日々
どうしたら恥ずかしさを克服出来るか?
どうしたら楽しく歌えるか?
をみんなで考え様々な挑戦を繰り返す姿が収められていた
『振り付けを考えてみんなで踊りながら歌ったら楽しくなるんじゃないか?』
というアイデアが出れば子どもたちはみんなで踊れる振り付けを考えて実践した
『大きい声で歌えるようになるために山に向かってみんなで大声で叫んでみよう!』
と誰かがアイデアを出せばすぐさま校庭まで駆けて行き山に向かって叫んでみた
正直泣いた。
そして僕も決めた。出来なかった過去に囚われるのは僕もやめよう。
この子たちのように前だけを見て僕もこのプロジェクトに当たろう!そう思った。
きっとこの挑戦には数々の失敗や挫折がついて回るだろう。
でもそれを乗り越える強さを、子どもたちの中に見た。
強い子たちだ。
きっと乗り越えていける!
こうしてよく月のワークショップを僕らは迎える事となる
悔しさとの戦いが
まだ僕らには待っていた
ー続くー