8月23日〜9月1日で行われたFUNKISTの南アフリカツアーをブログで振り返ってますこの企画。

南アフリカ到着3日目の朝

僕らは泊めてくれたアラン叔父さんが書いてくれたいい加減な地図を頼りに2時間のロングドライブへと旅立つのでした

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向かう先は『genesisケアセンター』

この場所は2005年に地元の教会が母体になって始めたホスピス。

当時HIVへの正しい知識が中々伝わっていない中、南アフリカではHIVが爆発的に広まりを見せていました。

「空気感染するんじゃないか?」

「触れたらうつるんじゃないか?」

そんな間違った情報が広まり、HIVに感染した方は酷い差別を受け、ホームレスとなり町で一人死んでいく

そんな状況が至る所にあったそうなんです。

また正しい知識が中々広まらな事で、予防をすることもままならず、HIVの猛威は広がる一方でした。


genesisの方々は当時教会の周りのタウンシップで次々と人が亡くなっていく状況に疑問を持ち、調べていくとそれがHIVによるものだと知ったそうです。

しかしいち教会として出来る事は限られていて、それでも「何かしたい」と、せめて最後に亡くなる時に温かい布団と温かい食事と、人の温もりの中で看取ろうと教会の一角を改築してこのgenesisを作りました。



ちょうど僕らがgenesisに初めて行ったのは、そんなgenesisが始まってまだ間もない2006年の事でした。



実際その時も僕らの目の前で一人の方が息を引き取りました


この場所で僕らは「命と音楽」というテーマを突き付けられ

途方にくれたのでした

「音楽で世界は変えられる」

その時僕らは本気でそう思っていたし、それは今でも変わらない僕の信念です

でも2006年のあの日

初めてgenesisに来た僕は

歌いながら自分の無力がただただ悔しかった

まだ10代前半の少女が、酷くやせ細った姿で力なく僕らのライブを見ていて

病室の端の方で息を引き取った方が運ばれていく


「おぉ走り出せる今なら この光導くまま」

「声を声を声をあげて 越えよう越えよう誰かが引いたBORDERを」


自分の歌が薄っぺらな希望を乗せて流れ出る

「俺は死を待つ人にいったいなにを歌ってるんだ?」

頭が真っ白になって、景色がぐらんぐらんで

ライブが終わって自分の無力感に押しつぶされそうになった


「世界を変える?」笑わせんな。結局音楽じゃなにも出来ねぇじゃねぇか!!


それが俺の目の前に確かにある

「現実」

だった。


でもそんな中、消えそうな声で

「thank you for good music」

と手を差し出してくれた人がいて

痛みや苦しさの中で、必死で笑顔を見せてくれた人がいて

ありがとう、ありがとう、って一生懸命手を握ったけど

その人達と再び出会うことは

二度となかった

命の長さは

残酷だ。


混乱の中、悔しさと自分への失望感が心を満たしていて、なにがなんだかわからなかった。


その日の夜、ぐるぐる回る自問自答の中で、一つの自分への質問に感情が止まった

「もしも音楽がなんでも叶えてくれるなら、本当はなにをしたかった?」

って自分に問いかけた時

「もしも音楽がなんでも出来るなら、、、、、


俺は、あの人達の病気を治したかった。」


その答えに辿り着いた時、止めどなく涙が溢れた





俺はライブを一生懸命見てくれたあの人達の病気を、消してしまいたかったんだ。でもそれは、、、、叶わないんだ。


酷く当たり前だけど


音楽は万能じゃないことを


その時に初めて知ったのかもしれない。


孤独な世界から音楽が救い出してくれて


仲間とともに奏で沢山の奇跡を見てきたからこそ


音楽の力を過信していたのかもしれない。


「音楽じゃ命は救えない」


その圧倒的な現実が


一つの答えに繋がっていく



「じゃあ俺になにが出来るんだ?」


その時にgenesisで働くスタッフの人達の事を思い出した。

患者さんの前で、いつも笑顔で、陽気で、底抜けに明るいんだ。

毎日人の死を看取り、その度落ち込んでいる癖に、一度病棟に立つと、すっげぇ笑顔で患者さんを勇気づけるんだ


多かれ少なから人はいつか死ぬ


それは俺だってそうだ


生きるってなんだろう?


どうせいつか死ぬなら


その一度きりの人生


どれだけ「幸せ」だったか


どれだけの時間を笑顔で過ごせたか

なんじゃないか?


あと数時間の命の人がいたとして


俺に出来ることはせいぜい演奏してる5分、10分

演奏してる間だけでも苦しみを忘れ、楽しんでもらう

本気で命を賭けてもやれるのはせいぜいそのくらいの事だ

でも逆に残り数時間の命の中に

5分、10分、


笑顔の時間を作ることは、無力か?


それは人生を賭すだけの価値があるんじゃないか?


病気を治したり、命を救うのは医者にしかできない


でも死にゆく人さえ笑顔にする力は、医者にはない


が、俺にはある

それが出来る

生半可じゃない

現実は辛いんだ。痛いんだ。苦しいんだ。

でもそんな事全てを忘れてしまえる瞬間を、全身全霊で描く、作る!それが音楽には出来る!


そう腹を決めて向かったのが、2度目のgenesisだった

不謹慎かもしれない

間違ってるのかもしれない


でも


翌年から俺はしゃぎまくった!!


歌って踊って


見てくれる人が全力で笑顔になれるよう祈り叫んだ


人生の内のたった1秒でもいい

苦しみが消える瞬間を増やしたい!!

そしてそれは

「世界が変わる」と等く同じだと気づいた


そうしてgenesisに通いだして今年で10年になる。


今ではスタッフのみんなが

「FUNKISTが帰ってくるぞ!!」

と楽しみに待っててくれるようになった


アランのいい加減な地図のせいで確実に僕らは道に迷いながら
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それでも


今年も帰ってきたんだgenesisに!

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今年もgenesisの代表を務める女性が迎えてくれました。


genesisという場所、今の状況、この10年の歴史



色々な事を聞かせてくれて
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この10年の歩みの中で

今では病院と連携をとって、治療も出来るようになったこと。

お医者さんやカウンセラーも常駐していて、いつでもここに来た人のケアーが出来るようになったこと。

一つしか無かった病棟は今では男性病棟は、女性病棟に分かれ、ガーデンでは菜園も行われ、施設としても充実していること

そして今では元気になって社会に復帰していく人も少なくないということ

など話してくれました。

またHIV以外の病気の患者さんも受け入れていて、必要に応じて病院で手術をしてもらうことも可能になったこと。

元気になって社会に復帰していく人が増えた事で、復帰後の収入を安定させる為アクセサリー教室も初め、アクセサリーの作り方を教え、復帰後にアクセサリーを作ってgenesisに持ってくるとgenesisがそれを買取り販売する。

というサイクルも作った(今回ここで販売していたアクセサリーもいくつか買ってきて物販で販売しているので是非チェックしてみて!すごくカワイイよ)


そんなアクセサリープロジェクトのこんな話を聞かせてくれた

一人の女性がgenesisに来た時の事

彼女はタウンシップから差別され、genesisに来た。

だが英語もあまり得意じゃなく、タウンシップの中の世界しか知らない彼女にとって、突然連れてこられたgenesisは恐怖でしかなかった

それでも毎日語りかけ、沢山の時間をなるべく一緒に過ごし

少しづつ少しづつ彼女の心が解けてきて

次第に彼女が小さな笑顔を見せてくれるようになり、慣れない英語で一生懸命言葉を語ってくれるようになった

その中で彼女が病気になったことでいかに傷つき、そして自信を失ってしまったかを知ったと言う。

そしてそれを聞いたスタッフが

「ねぇ!もし良かったら一緒にビーズでアクセサリーを作らない?」

と持ちかけたそうだ。

しかし彼女は

「私には出来ないわ。うまく作れないと思う」

と断られてしまったそうだ。

無理強いはしなかったが、それから数ヶ月

スタッフは事あるごとに

「ねぇ!一緒にアクセサリー作ろうよ〜」

と語りかけ

その度に

「うんうん。私には無理よ」

「そうかなぁ。絶対出来ると思うのに」

という会話を繰り返した。

そしてさらに数ヶ月が過ぎた時だった

彼女はスタッフを呼び出すと、すごく緊張した表情で切り出した

「ねぇ。本当に出来るかなぁ?」

「うん?なにが?」

「私でもアクセサリー、出来るかなぁ?」

と。

スタッフは彼女その気持ちが嬉しくて嬉しくて

「絶対出来るよ!!一緒にやろう!!」

と伝えると彼女は小さく頷いたという。
 
そしてビーズを使ったアクセサリー教室が始まった。

「好きなビーズを使っていいのよ!好きな色で作っていいのよ!!」

と伝えると彼女は最初にピンクのカワイイビーズを手にし、それをゆっくりと糸に通した

そして

「ねぇ。これであってる?変じゃないかなぁ?」

とスタッフに訪ね

「すごく素敵よ!とってもいいと思うわ!」

とスタッフは返した。

そこからまたビーズを一つ手にし

糸に通す。そして再び

「これで大丈夫かなぁ?間違ってない」

「うんとっても素敵!」

一つ糸にビーズを通すたびに彼女はスタッフに「これで大丈夫かなぁ」と訪ねる。

そこに彼女がどれだけ傷つき自信を失ってきたか、彼女の歩いてきた厳しい日々が見えた

でもそれを乗り越えようと一生懸命ビーズを糸に通し

「これでいいかなぁ?」と不安そうに聞いてくる彼女に、しっかりと寄り添うように、スタッフはその度に笑顔で

「とっても素敵よ!!」

と繰り返し伝えたそうだ


という話をgenesisの代表の方が目を潤ませながら僕らに聴かせてくれて、そして彼女はおもむろに机の引き出しを開けると


「そしてその時に彼女が作ってくれたネックレスがこれなの!!」


と大切そうに取り出したピンクのネックレスはとっても綺麗で、繊細で、


そしてそれを嬉しそうに僕らに見せる代表の女性の笑顔がまた眩しかった。


「今では彼女とっても元気になってね、genesis一番のアクセサリー職人なのよ!!」


と誇らしげに語る代表の女性の表情にまた患者さんたちとの信頼関係を見た気がした。


そうして僕らはライブをさせてもらいに病棟へ


楽器の準備をして

自分の中でスイッチを入れた

パーティーの始まりだ!!

MAMA AFRICA


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ちょっとづつ笑顔が増える

 段々盛り上がっていく「会場」

そしてそれに呼応して踊りだす陽気なスタッフのみんな

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おお!部族のダンスが始まった!!

迫力がすごい!!

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ありったけの想いで

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歌い奏で


スタッフの人がはしゃぐ度に、笑いを堪えきれなくなってベットで寝ている患者さんも吹き出して笑いが生まれる


この環境の中で全力ではしゃぐ宮田と俺とは対照的に

ナオトとSIMAはすごく葛藤しながら演奏してるのがわかった

そりゃそうだ!初めての経験だもん。

命と向き合うライブなんて。

ツアーが終わった最終日、個別に二人に質問してみたんだ

「今回のツアーで一番印象に残ってるのは?」

と。そしたら二人ともが

「genesis」

と迷わず答えた


これから二人が葛藤の中どんな答えを見つけていくのか楽しみだなぁ


そしてそれはFUNKISTのライブにも大きな力を与えるんだろう


genesisがまた一つバンドにギフトをくれた瞬間でもありました


そしてそんなライブを優しい目で見ていた代表の女性

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ライブが終わるとすぐに俺のところに飛んできてくれて

「あのね、実はつい数時間前、患者さんが一人亡くなったばかりだったの。スタッフもすごく仲が良くなっていた患者さんで。それでも強く私たちは笑いましょう!って話したけど、やっぱりみんな今日は辛そうで。でも見て!FUNKISTの音楽がみんなの笑顔を取り戻してくれたは!本当にありがとう!本当にありがとう!!」

って強く手を握って彼女は笑顔と涙で僕に教えてくれた。


そして最後に今度はスタッフのみんなが歌を聴かせてくれた

その大きな愛が

とてつもなく大きな愛が

病棟を包んでいく

震えた。






涙が溢れた


こうして今年もgenesisでのライブが幕を閉じた

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ライブ後にナオトが楽器を片付けに一人病棟に戻ると

一人の男性がベットに横になりながら

「thank you」

と声をかけてくれたそうで


ナオトは「thank you」と彼のか細い手を握ったそうだ。

そして無理やり絞り出した声で

「see you」

と伝えると、

彼もまた「see you」とナオトに伝え


そしてナオトは病棟を後にしたそうだ。



「see you」



それが叶うかどうかはわからない



でも僕らは一度だけの出会いを胸に

「またな!」

とまたそれぞれの日々を歩き出す

その「またな」の先にある道は

その出会いがくれた新たな物語が待っている

胸の中に

思う人がいる。

それだけで人はまた強くなれる

きっとgenesisにまた僕らは来るだろう

会える人、会えない人がいるだろう

葛藤も、寂しさも、消えない想いがあるだろう

でもその先にある

笑顔を信じて

きっとまた

音楽は鳴り続ける

太陽よりも熱く人生を踊れ!

リミット付きの命を抱え

今日はなにを描こうか?

今日も僕らは

その先の未来を信じて

やっぱり音を放つだろう

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