■元自衛官が皇居を襲撃
【消火器を皇居にうち込む、元自衛官を逮捕】 (読売新聞 9月18日)
18日午前2時40分ごろ、東京都千代田区隼町4の皇居沿いの国道20号で、警視庁麹町署のパトカーが「ドン」という爆発音を数回聞き、歩道に乗り上げたトラックの近くに不審な男が立っているのを発見した。
同署員が職務質問したところ、男は「皇居に向けて消火器5本をうち込んだ」と話したため、同署で付近を捜索した結果、お濠(ほり)の水中や土手から消火器3本と火薬を詰めた時限発火装置付きの小型ドラム缶(直径41・5センチ、高さ50センチ)2本が見つかった。同庁公安部は、爆発物取締罰則違反(使用)容疑で男を逮捕した。
発表によると、男は、神奈川県相模原市の元陸上自衛官で、灯油販売業小川俊之容疑者(34)。時限発火装置は同日午前8時に爆発するようセットされていたが、同庁爆発物処理班が処理した。
公安部幹部によると、消火器には火薬が詰め込まれ、トラックの荷台に積んだ土のうを発射台代わりに、皇居に向けて発射されたとみられる。荷台にはリード線や着火スイッチのようなものもあったという。同庁はドラム缶や消火器の構造、火薬の成分などを調べている。
小川容疑者は「自分は愉快犯。世の中がどのような反応を示すか興味があったのでやった」と供述。皇居を狙った理由については「広くて、安全だと思った」と話しているという。
国家の防衛、国民の生命・財産防衛を担う元自衛官が、よりにもよって皇居を襲撃しました。
国家統合の象徴を脅かすなど言語道断です。
小川容疑者は自身のHP を持っており、政治家を目指していたようです。
自身の高校時代の成績表なども公開しており、軍事経験も詳細に記載するなど、強い自己顕示欲が伺えます。
【職歴】
元陸上自衛隊(約2年)
前期教育 第31普通科連隊(朝霞)
後期教育 空挺普通科郡後期(習志野)
第一空挺団普通科郡2中隊
後予備役→現即応予備
元仏陸軍外人部隊(約半年)
選考(中央選考所) 第1外人連隊(オーバニュー)
教育 第4外人連隊2中隊(カステノダーリ)
国家統合の象徴を襲撃した凶悪犯が、政治家を目指すなど、笑わせるな。
自衛隊への国民の信頼をこれ以上失墜させるな、莫迦愚物が。
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■国籍不明潜水艦事案で中国が日本に抗議
【国籍不明艦の領海侵犯、中国外務省が日本政府に抗議】 (読売新聞 9月17日)
国籍不明の潜水艦による領海侵犯事件で、中国が日本政府に対し、「日本政府の対外説明が国籍不明の潜水艦を中国潜水艦と結びつけている」として抗議していたことが16日、分かった。
今回の侵犯は中国艦によるものではないとの立場を示したものだ。ただ、日中両国とも抗議自体を公表しておらず、日本側は引き続き真相解明を急ぐ構えだ。
関係者によると、抗議は15日、中国外務省が在北京日本大使館に伝えた。一方、防衛省・自衛隊は16日、現場周辺海域での捜索活動を打ち切った。
・今回の領海侵犯事案
状況から考えると、どう見ても中国の潜水艦のようにしか思えないのですが。
鹿児島県の鹿屋航空基地にP-3C対潜哨戒機が配備されていますし、2004年の中国海軍「漢」級原潜領海侵犯事件のように、P-3C哨戒機によるパッシブソナー、アクティブソナーの投下などをして徹底的に追い出してやればよかったのです。
「あたご」には曳航式ソナーと、対潜ヘリが搭載されていませんから、より正確な潜水艦の位置を特定しつつ追跡することも少なからず困難だったことは推測できますが、それでも捜索活動の打ち切りは、若干早いような気もします。
16日には護衛艦4隻、Pー3C哨戒機2機体制で捜索が行われましたが、同日中に捜索は打ち切られました。
■他国潜水艦の可能性
それでは、中国が主張するように中国の潜水艦ではなかったのか、検証してみましょう。
◎アメリカ
日米政府間の照会により、米原潜でないことが証明されています。
さらに、アメリカが豊後水道の日本領海を侵犯する必要などありません。
同盟国であれば、堂々と浮上航行して無害通航するでしょうし、勿論事前に日本政府に通告を行うでしょう。
◎ロシア
ウラジオストクには「キロ」級通常動力型潜水艦4隻がおり、うち1隻は修理中です。
残り3隻では沿岸哨戒を行うのが精一杯であると思われるので、こちらではないでしょう。
カムチャツカ半島のペトロパブロフスク・カムチャツキーのアバチャ湾には原潜基地があり、こちらにロシア太平洋艦隊潜水艦部隊の主力(第10潜水艦師団、第182潜水艦旅団)が詰めています。
・「オスカーⅡ」級巡航ミサイル原潜 6隻
うち2隻修理中、1隻保管中で、稼動数は3隻
・「アクラ」級攻撃原潜 6隻
うち4隻修理中で、稼動数2隻
・「キロ」級通常動力型潜水艦 4隻
最も豊後水道に出現し易いのは、連続水中航行が可能な「アクラ」級でしょうが、これは稼動数2隻に落ち込んでおり、カムチャツカ沿岸~オホーツク海を交代で哨戒するのが関の山でしょう。「キロ」級に至っては通常動力潜水艦なので、長距離の隠密作戦にそれほど向きませんし、何より稼動数の落ちている「アクラ」級を補完するために、近海での哨戒活動を行わなければなりません。
その他、ロシア太平洋艦隊には4隻の「デルタⅢ」級戦略原潜が配備されていますが、こんなものが何の護衛も無しに豊後水道にまで来るわけがありません。
◎韓国
韓国の潜水艦部隊は、第9小艦隊として鎮海に配備されています。
・「孫元一」級通常動力型潜水艦 2隻
1隻修理中、1隻艤装中で、稼動数は0隻
・「チャン・ボゴ」級通常動力型潜水艦 9隻
航続距離 7500海里/9kt、水中速力 22kt
静粛性はなかなかのようですが、補給なしで通常動力型潜水艦が豊後水道まで侵入するでしょうか。
韓国は原子力潜水艦を保有していません。長距離、数十日の潜航航行が不可能な通常動力型潜水艦で、豊後水道の日本領海を侵犯するには、無理があると思われます。
そもそも、鎮海からの出撃では、日本のSOSUS網にひっかかる可能性の方が高いと思うのです。
以上に見てきたように、米露韓の潜水艦では、豊後水道への侵入は困難であることが分かります。
■中国海軍新型潜水艦「商」級である可能性
【中国潜水艦の可能性=海自の能力見直しを-「官邸への連絡遅い」・識者指摘】 (時事通信 9月14日)
高知県沖の領海内を航行した国籍不明の潜水艦について、専門家は中国軍の可能性を指摘。事前に察知できなかった海上自衛隊の能力に疑問を投げ掛けた。
軍事アナリストの小川和久氏は「こういうことをするのは中国海軍」と指摘。狙いに関し「中国共産党指導部への何らかの主張が考えられる。福田政権が脳死状態かどうか、三連休の真ん中にぶつけてチェックした可能性もある」と話す。
領海内に入られるまで察知できなかった海自には「潜水艦を探知、追尾する能力は米国に次ぐとされ、日本列島周辺に対潜水艦網を築いているが、突破されたのは深刻。能力を回復する必要がある」とした。
潜望鏡の確認から官邸への連絡まで約1時間半かかった点も問題とし、「発見と同時に情報共有すべきだ。戦争ならとっくに攻撃されている。(首相への連絡の遅れが問題となったイージス艦)あたごの事故の反省が生かされていない」と述べた。
防衛省防衛研究所の元研究室長平松茂雄氏も「領海内に入られたのは、お粗末。事前に察知できず、追尾もできなかったとすれば問題。たるんでいるとしかいいようがない」と批判する。
「日本の周辺海域は中国の潜水艦がどこにいてもおかしくない」とした上で、「中国の潜水艦は音が大きく探知しやすいといわれてきたが、能力が上がってきている。海自の探知能力を試したのかもしれない」と話した。
私は、今回の領海侵犯を行った潜水艦は、中国海軍新鋭の攻撃原潜「商」級ではないかと推測しています。
・「商」級攻撃原潜
・1番艦が2006年12月に就役。
・水中速力 30kt
・米「ロサンゼルス」級攻撃原潜、露「ヴィクターⅢ(プロイェクト671RTM)」級攻撃原潜と同等の高度な静粛性を持つ。
・最大潜行深度は700~800mと推測。
最近では、東シナ海に敷設されているといわれるアメリカ海軍のSOSUS網(水中固定パッシブソナーによる潜水艦捜索ライン)を解明するため、時折中国潜水艦による威力偵察まがいの活動が見受けられます。
今回の中国政府の抗議は、このような事例を棚にあげた舐めくさった抗議です。
護衛艦4隻、P-3C2機を動員して発見できなかったとすれば、従来の潜水艦ではない、新型の潜水艦と考えるのが妥当でしょう。
この機に音紋の採取を行い、今後の突発事案に対処していただきたいものです。
しかし、豊後水道は海自最大の水上艦基地である呉に程近く、ここに国籍不明の潜水艦が現れたのは大問題です。
また、時事通信記事が指摘するように、首相官邸に報告が遅れているのも問題です。
日本の安全保障を担う省庁、首相をはじめとする政府には、しっかりとした国防意識を持ち、敵対行為には毅然とした態度で対処することを、強く望みます。
【参考HP】
■外交と安全保障をクロフネが考えてみた。
様
■アジアの真実
様
■Небесный бытьネベスニィ・ビィチ~ロシア・ソ連海軍~
様
■博士の独り言 様
■The planet earth
様
■義によりて勇を馳せる、保守派へ
様
■Acoustic Monitoring Program 『SOund SUrveillance System (SOSUS)』
【参考書籍】
平松茂雄
平松茂雄
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■北朝鮮が新たなミサイ発射基地を建設中か
北朝鮮が、新たなミサイル発射施設を建設中であり、近々運用が始まるというニュースが流れています。
【北朝鮮、長距離ミサイル基地を完成か 衛星写真分析】 (朝日新聞 9月11日)
AP通信は10日、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル発射基地を完成させていたと報じた。軍事防衛情報を扱う「ジェーンズ情報グループ」が商業用の衛星写真などを分析して分かったもので、従来知られていた基地よりも、規模、能力ともに上回るという。
報道によると、基地は北朝鮮の西海岸にあり、少なくとも8年前から建設開始、05年には運用可能な状態になっていたが、これまでは使用されていない。主目的は発射実験とみられるが、別の専門家は「核弾頭を搭載し米本土に到達する能力を持ったミサイルを、実戦で使用できると確信できる水準まで完成させようという意図があるのではないか」と語っている。
北朝鮮は06年7月、長距離弾道ミサイル「テポドン2」を発射した際は、北東部の咸鏡北道舞水端里(ムスダンリ)の基地を使った。新たな基地は舞水端里を規模でも技術水準でも上回っているという。
【北朝鮮、新たなミサイル発射基地を建設か】 (日本経済新聞 9月11日)
米シンクタンクのグローバル・セキュリティーは10日、北朝鮮が長距離弾道ミサイルの新たな発射基地を建設しているとの情報を明らかにした。衛星写真を分析した結果で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)と衛星の打ち上げが可能とみられている。
これに関連し、AP通信は同日、新たな基地は少なくとも8年前に建設を開始し、発射台は2005年から使用可能な状況にあると報じた。新施設は06年7月に「テポドン2号」を発射した北東部の舞水端里(ムスダンリ)発射基地よりも大規模で、短期間に複数発射することが可能だという。
衛星写真の解析にあたったグローバル・セキュリティーのアナリストは、新設基地の発射台が米国を射程に入れ、核弾頭を搭載できるICBMのものであることに懸念を示したという。
【北朝鮮、鉄山郡に新ミサイル基地を建設=AP通信】 (朝鮮日報 9月12日)
北朝鮮が、既に知られている大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射基地より規模が大きく性能が向上した新しい長距離ミサイル発射基地を、8年前から平安北道鉄山郡東倉里に建設している。AP通信が11日、軍事専門家の発言を引用し報じた。北朝鮮は現在、咸鏡北道ファデ郡舞水端里に長距離ミサイル発射基地を保有しており、東倉里基地の存在はこれまで外部に公開されていなかった。
軍事情報分析を取り扱う民間企業「ジェーンズ・インフォメーション・グループ」のジョセフ・バーミューデッツ先任研究員と民間衛星写真分析会社タレント・キーホール社のティム・ブラウン氏がこの基地の建設を推測し、今回、衛星写真を世界的な軍事情報ウェブサイト「ジェーンズ・ドットコム」に公開した。二人は18年前、初めて北朝鮮の舞水端里ICBM発射基地の存在を確認した。東倉里基地の発射台は移動可能で、弾道ミサイルやロケットを保持できる高さ10階建て相当のタワーで構成されており、人工衛星の打ち上げも可能だ、とAP通信は報じた。
バーミューデッツ研究員はAP通信に対し、「北朝鮮は射程距離が長く命中精度も良いICBMを開発するために、この基地を活用しようとするだろう」と語った。この基地のミサイル発射台は2005年以降稼動状態にあるが、まだ一度も使われていない、と分析されている。
一方李相熹(イ・サンヒ)国防長官は11日、国会の国防委員会への報告で、東倉里の長距離ミサイル発射基地に関連し、「よく知っている。現在工事の進ちょく度は80%で、注視している」と語った。また米国のある関係者は、匿名を条件として、AP通信に対し「米国の情報当局は、北朝鮮に新しいミサイル基地が存在しているという事実を数年前から知っていた」と語った。
【北、寧辺核施設付近の西海岸にミサイル発射基地を建設中】 (中央日報 9月12日)
北朝鮮が西海(黄海)岸に新しいミサイル発射基地を建設中であることが11日、確認された。
李相熹(イ・サンヒ)国防部長官はこの日、国会国防委会議に出席し「現在工事の8割が進み、注視している」と述べた。
国防部によると、建設中の発射基地の位置は平安北道鉄山郡東倉里(トンチャンリ)で海浜に近い。北朝鮮が現在稼動中のミサイル発射基地は東海(日本海)岸に近い咸境北道花台郡舞水端里(ムスダンリ)の基地で、99年大浦洞(テポドン)ミサイルなどを東海に打ち上げた。
北朝鮮が建設中の新しいミサイル発射基地が位置する鉄山郡は、北朝鮮の核施設が密集している寧辺(ニョンビョン)の核施設との距離がわずか70キロメートルにすぎない。寧辺の核施設で開発された核弾頭をミサイルの本体に搭載し、発射実験を行うのにそれほど遠くない位置だ。現在運営中の舞水端里の基地は寧辺から300キロ以上離れている。寧辺で開発された核弾頭または模型の核弾頭をミサイルに搭載するために移動するには容易ではない距離だった。
これに先立ちAP通信は10日「北朝鮮が中国の国境地帯から約50キロが離れた平安北道雲田郡ポンドン里地域に新しいミサイル発射基地を建設中であり、1~2年以内に基地の建設が完了するだろう」と、米民間専門家の話として報じた。また衛星専門家のコメントとして「北朝鮮は8年前からミサイル発射基地の建設を開始した」と伝えた。これに関し、国防部当局者は「雲田郡ポンドン里ではなく鉄山郡東倉里が正しい」としている。
新しい発射基地は舞水端里に設置された以前の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射基地より規模が大きく機能が向上したのが特徴だ。すでに移動可能な発射台と、弾道ミサイルやロケットを支えられる10階の高さのタワーからなる。また、イランのテヘラン郊外にできたロケット実験施設と似た規模のロケットモーターのテスト用施設もあるという。
新設される基地では特に人工衛星の打ち上げも可能とされる。AP通信は「北朝鮮が、射程距離がさらに長く正確度も高いICBMの開発に、この基地を活用しようとしている」という専門家の見解も伝えた。
これまで北朝鮮が使用してきた咸境北道の舞水端里の発射施設は、東朝鮮海に面し、日本海で遊弋する日米イージス艦や、アメリカのミサイル追跡艦による捕捉が容易でした。
・米海軍ミサイル追跡艦「オブザヴェーション・アイランド」
これを、西朝鮮海の平安北道の鉄山郡東倉里に移すという計画を8年以上前から進行させていたということは、寧辺核施設の無能力化などに、北朝鮮が全く興味を示していないということです。
・無水端里発射基地、寧辺核施設、新設された東倉里発射基地の概略地図
無水端里から東倉里に発射施設を移設・増強することで、日米が想定する弾道弾の初期(ブーストフェイズ/加速段階)迎撃が困難になることが予想されます。
・日本が想定する弾道弾迎撃プラン
これは無水端里での発射が前提であった。
残るは中間(ミッドコースフェイズ)段階でのイージス艦搭載の、RIM-161B SM-3弾道弾迎撃ミサイルによる迎撃、あるいは再突入(ターミナルフェイズ)段階でのPAC3による迎撃しか打つ手がなくなってしまいます。
ノドンミサイルは、発射されると、ロケット推進装置により約2分間加速した後、再突入体(弾頭)を分離し、以後惰性で大気圏外を弾道コースで飛翔します。最高高度は約200kmで、大気圏再突入時の速度は秒速3km以上となり、北朝鮮からの発射から日本着弾までの時間は約10分です。
また、無水端里から東倉里に発射施設を移設しても、ノドンミサイルは日本本土を射程に収めています。
・ノドン、テポドン、テポドン2
・北朝鮮が保有する弾道弾の射程距離図(発射中心は無水端里)
■日本のBMD体制
在日米海軍は横須賀港にアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「フィッツジェラルド」、「カーティス・ウィルバー」、「ジョン・S・マッケーン」、「ステザム」、「ラッセン」、「マスティン」「マクキャンベル」を弾道ミサイル監視艦として、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「シャイロー」を弾道ミサイル迎撃艦として配備しています。
・「シャイロー」
日本は、ミサイル防衛システムは2004年度から調達が開始され、2007年度から順次運用を開始しています。2008年現在、海上自衛隊が弾道弾迎撃能力を保有したスタンダードミサイルSM-3を搭載可能なミサイル防衛対応型イージス艦を長崎に実戦配備しており、航空自衛隊が弾道弾迎撃能力を保有した「パトリオットミサイル PAC-3 Config.2」を航空自衛隊の埼玉入間基地の第1高射群の首都圏各高射隊(入間、習志野、武山、霞ヶ浦)4カ所と、教育部隊がある静岡県浜松基地の高射教導隊に実戦配備されています。
・航空自衛隊のPAC-3(入間)
・PAC-3ミサイルの模擬弾道弾直撃画像
日本では2011年度までに、これらの迎撃ミサイルシステムや各種レーダー等を増備し、当初のミサイル防衛体制の構築を完了させる予定となっています。 現在、次世代型「スタンダードミサイル SM-3ブロックⅡ」を日米共同開発中であり、開発が完了する2015年以降はミサイル防衛の更なる能力向上が予定されています。
(ブロックⅡからは日米共同で開発されている。ブロックⅡは、2分割式のノーズコーンに変更し、2段および3段ロケットを直径21インチ(53センチ)に大型化し射程を延伸させ高速化させて迎撃範囲を広げる。迎撃範囲が大幅に伸びることでイージス艦のレーダ探知範囲(185~370キロ程度)を超えるので、前方に展開する航空機や艦船からのレーダ情報とデータリンクさせて目標を探知し迎撃させる。日本は防衛省技術研究本部(技本)と主契約者の三菱重工により、主に2分割式ノーズコーンと2段および2段ロケットのステアリング&コントロール・システム(SCS)と3段ロケットの開発をしている。
日本製ノーズコーンを使用した機体は2006年3月9日に初飛行した。2006年6月23日にはブロックⅡAの日米共同開発に合意した。ブロックⅡAではキネティック弾頭と赤外線シーカーを大型化させ,破壊力と識別能力を向上させ、ロケットもさらに改良して速度を向上させるなどして高性能化をさせる。キネティック弾頭はアメリカ主導で試作し、赤外線シーカーは日米で別々の方式で試作・選考する。研究開発総費用は21~27億ドル。日本側負担は10~12億ドルである。2011年に地上試験、2013年に飛行試験、2014年に完成予定で、2015年から配備を始めるスケジュールとなっている。このブロックⅡAが現在配備されているブロックIAを更新する予定である。)
◎「こんごう」型4隻
「こんごう」が、2007年12月18日のハワイ、カウアイ島沖での迎撃実験で、スタンダードSM-3ブロックIA(RIM-161B)により、高度100キロ以上の大気圏外を飛行する標的ミサイル1発の迎撃に成功。
4隻とも弾道弾迎撃用に改修中である。
・「こんごう」
◎「あたご」型2隻
「こんごう」型と違い、最初からミサイル防衛での使用を考慮して建造されているが、現在は弾道ミサイルの捜索・追尾のみ可能で迎撃能力は有しない。将来的な弾道弾迎撃能力の付与については、将来的に付与される見通し。
・「あたご」
【海上迎撃ミサイル ハワイ沖で発射・標的迎撃実験に成功】 (毎日新聞 2007年12月18日)
防衛省は米ハワイ沖で17日正午(日本時間18日午前7時)過ぎ、海上自衛隊のイージス艦「こんごう」に搭載した海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の発射実験を実施し、標的の模擬中距離弾道ミサイルの迎撃に成功した。米国以外の国によるSM3の発射実験は初めて。こんごうは来月上旬、長崎県佐世保市の海自佐世保基地に実戦配備される。
実験では、ハワイ・カウアイ島の米ミサイル発射施設から17日午後0時5分、米海軍が標的の模擬ミサイルを発射。こんごうは数百キロ離れた海上で探知、追尾し、同12分、SM3を発射して高度100キロ以上の大気圏外で標的のミサイルを撃ち落とした。米イージス艦も標的の探知、追尾訓練に参加した。「現場海域に障害物があった」として、当初の目標時間より約3時間遅らせて実施された。
日本では、地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)も含め、ミサイル防衛(MD)システムで初の迎撃ミサイル発射実験。米国では02年からSM3実験を13回実施し、2回迎撃に失敗している。
政府は昨年7月の北朝鮮による弾道ミサイル発射実験や同年10月の核実験を受け、来年3月に予定していたこんごうの実戦配備を2カ月前倒しした。PAC3は今年3月から配備を始めており、日本のミサイル防衛(MD)システムが本格的に稼働する。防衛省は、12年度までに8000億~1兆円の整備費用を見込むが、倍増する可能性も指摘されている。
周辺国がミサイルを発射直後は標的が日本なのか分からない可能性があるが、集団的自衛権の行使に関する憲法上の課題も残されている。
石破茂防衛相は閣議後の記者会見で「成功は極めて意義深い。今後は信頼性を高めていくのが課題」と述べた。
◎「こんごう」による弾道弾迎撃実験(動画)
日本は、北朝鮮によるミサイル・核の恫喝に屈することなく、BMD計画を推進し、国土防衛に万全の体制を整えていただきたいものです。
【参考HP】
■日本国防衛省 『弾道ミサイル防衛システムの整備等について』
■日本国外務省 日米外相共同発表 『同盟の変革:日米の安全保障及び防衛協力の進展(仮訳)』
■日本国際問題研究所 『弾道ミサイル防衛(BMD)と日米同盟』 (※PDF形式)
■日本国防衛省 『弾道ミサイル防衛(BMD)用誘導弾技術の研究のうちキネティック弾頭要素の性能確認試験の結果について』
【参考書籍】
能勢 伸之
『日本はすでに北朝鮮核ミサイル200基の射程下にある―金正日の核とミサイル問題の深層』
矢野 義昭
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