■海自隊員死亡:自衛隊・防衛省の身内に甘い姿勢が明確に | FUNGIEREN SIE MEHR !!

■海自隊員死亡:自衛隊・防衛省の身内に甘い姿勢が明確に

【【海自集団暴行事件】「15対1」必要認めず 調査委が中間報告】  (産経新聞 10月22日)


 広島県江田島市の海上自衛隊第1術科学校で、特殊部隊「特別警備隊(特警隊)」の養成課程にいた男性3等海曹(25)が15人を相手にした格闘訓練中に倒れ死亡した問題で、防衛省は22日、中間報告を公表した。2日後に養成課程を外れる予定だった3曹に「(訓練を)行う必要性は認めがたい」と指摘。教官2人は格闘訓練の経験が未熟で、「計画や管理が適切になされていなかった」と教官の監督責任も厳しく問う内容。制裁目的の集団暴行との見方を明確に否定するには至らなかった。
 中間報告は海自呉地方総監部の事故調査委員会が養成課程の学生や教官らへの聴取をもとに作成した。
 1対15の格闘訓練は学生の間に送別の「伝統」と認識されていた可能性があると指摘する一方、「(3曹が訓練を)やらないと言える雰囲気ではなかった」と証言した学生もいた。
 安全管理については「(学生の)技量や人数などの点を十分に考慮したとは認められない」とした。格闘訓練の実施要領はなく、海上幕僚監部や自衛艦隊司令部による教育内容の監督に不備があることにも言及している。最終報告では訓練の意義を検証し、再発防止策をどこまで打ち出せるかが課題になる。



 広島県呉市の海上自衛隊第1術科学校において、特殊部隊(特別警備隊)の課程を辞退した隊員に対する集団格闘訓練致死当ブログでは、批判的見地から「致死」という言葉を用いさせて頂きます事件で、防衛省の纏めた中間報告書には、個人的に大きな疑問があります。


 .1対15という格闘訓練は、生死に直接関わる業務に携わる自衛隊とはいえ、当該死亡隊員が養成課程を辞退したことを考えれば、その必要性が認められないのではないか。

 同席した教官2名が徒手格闘訓練の教育課程を履修していなかったことは、現場責任の放棄ではないか。

 .誰の発案による訓練なのか。その際、当該死亡隊員は拒否出来る状況にあったのか。

 .単なる私的制裁ではないか。


 このような疑問があるのです。


 体育会系の組織において、鉄拳制裁などの「伝統」を否定する意図はありません(※適切な安全管理が行われていれば、過酷な状況に投入される自衛隊の特性を考えて、必要な訓練ではあると考えられます。)が、今回の事件は、国民の目から見て、明らかに訓練を逸脱していたと見えるのです。



 中間報告を纏めた防衛省の、事件を有耶無耶にしてしまおうという意図も、次の記事からは見え隠れします。


【格闘訓練死亡「公務災害」認定へ、私的制裁の意図は否定】  (読売新聞 10月22日)


 海上自衛隊第1術科学校(広島県江田島市)で先月、「特別警備隊」の養成課程にいた3等海曹の男性(25)が同僚15人との格闘訓練後に死亡した問題で、防衛省・自衛隊は22日、事故は「訓練の一環だった」として「公務災害」に認定する方向で調整に入った。
 近く公表される海自事故調査委員会の中間報告や海自警務隊の捜査結果を見極めたうえで認定作業に入るが、「1対15」という無謀な格闘訓練を正規の公務と位置づけることで、今後、当事者の刑事責任の追及や真相の究明があいまいになる恐れもある。
 防衛省職員給与法などでは、自衛隊員の死亡事故を公務災害に認定する基準について、〈1〉公務遂行性〈2〉公務起因性――の二つを条件にしている。先月9日に起きた事故の場合、2日後に養成課程をやめることが決まっていた3曹の男性に対し、15人の同僚が次々に徒手格闘した行為について、通常の訓練として認めるかどうかが二つの条件を満たすポイントになる。
 海自事故調査委の内部調査では、15人の同僚は嫌がらせやいじめなど私的制裁の意図は否定し、「格闘は送別行事だった」などと説明しているという。
 防衛省は、この調査結果や、事故が養成課程の訓練時間内に起きていることから、「送別行事だったとしても私的な行為ではなかった」として公務災害とする判断を固めた。同省によると、公務災害に認定されると、遺族に対しては補償としての一時金や葬祭補償、特別金が支給される。



 「海自事故調査委の内部調査では、15人の同僚は嫌がらせやいじめなど私的制裁の意図は否定し、「格闘は送別行事だった」などと説明している」と、記事中にありますが、次に掲げる読売新聞の記事中にもあるように、事故調査委員会という防衛省の高官による事情聴取に対し、一般隊員が率直に答えられるとは思えません。



【「身内に甘い」識者ら批判 海自格闘死中間報告】  (読売新聞 10月23日)


 海上自衛隊第1術科学校(江田島市)で3等海曹が格闘訓練後に死亡した問題の中間報告が公表された22日、海自呉地方総監部の事故調査委員長を務める福本出・同総監部幕僚長は「これで調査は終わったわけではない。1日も早く、国民の皆さんが納得できるような調査報告を出せるよう努力する」と述べた。一方、元海自関係者や識者からは、「身内に甘い調査に感じられる」などの声が上がった。
 福本幕僚長はこの日、呉市役所を訪れ、小村和年市長に、▽訓練の必要性は認めがたい▽計画や管理が適切になされていなかった――などとする中間報告の内容を説明した。
 第1術科学校元教官の男性は、中間報告について、「参加した隊員の証言など開示された情報量が少ない。内部に甘いと言われても仕方がない内容」と指摘した。特に、立ち会った教官2人が格闘課程を履修していなかったとされたことについて、男性は「未熟な教官の経験に頼った甘い判断が招いた結果ではないか。そして、なぜ仲間を死なせるまでやったのか。異常な訓練と思う」と語った。
 別の元教官の男性は、「辞めることが決まっていた隊員になぜ訓練をする必要があったのか。事故調査委は形だけの調査ではなく、組織の問題点を掘り下げなければ、若い隊員の死は報われないと語った。
 第1術科学校に在籍したことがある元海上自衛官の男性は「事故調査委の高官の事情聴取に、階級の低い隊員が率直に答えられるとは思えない」と調査への疑問を示し、「本当に、亡くなった3等海曹が『やる』と言ったのだろうか。断れなかっただけではないか」と語った。



 以上に見るように、元自衛官からも、今回の中間報告に対し、疑問の声が上がっています。


 特殊な職種であり訓練に危険が付きまとう自衛隊において、適切な安全管理を怠り、訓練で死傷してしまっては、元も子もないのです。

 訓練で死傷してしまっては実戦で意味が無いわけで、それによって失う経済的・人的損失と、教育にかけた必要な時間がすべて無駄になってしまう上、自衛隊に対する国民の信頼が大きく揺らいでしまうのです。



【防衛大臣臨時記者会見概要(10月22日)】  (防衛省HP)(抜粋)


 Q:中間報告が出ましたけれども、受け止めを聞かせて下さい。
 A:事実関係をできるだけしっかりと書くということが重要だと思っていましたので、一応そういう形にはなっているというふうに思っています。


 Q:大臣が先だって示された訓練からは逸脱しているのではないかという認識がこの報告書には出てきませんけれども。
 A:そこは書いてあると私は思っております。要するに、訓練の部分でも辞める二日前にそういった訓練をするということが極めて異例ということも含めて考えれば、かなりそこは逸脱していると言っても仕方がないのかなと、これは当然であろうというふうに思っております。


 Q:監督責任を含めて関係者の処分というのは、現時点でどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
 A:不具合の部分が出れば、考えるのは当たり前のことだと思いますので、今回は事実確認も含めてやっているわけですから、そこで足らざるところが出てくればそこは直していかなければいけない。その責任はどこにあるのかというのは、明確にしていかざるをえないと思います。



 防衛省事故調査委員会は、再発防止に最善を尽くす為に、形式上の調査だけに留まらず、問題を深く掘り下げ、この部隊の根底からの再教育・組織改革を行わなければなりません。

 防衛省事故調査委員会の調査が、単なる形式的なものに終始することは、絶対に避けなければなりません。


 防衛省、自衛隊への国民の真剣な眼差しを無視することは、自衛隊の組織運営上大変問題であり、自衛隊全体の士気にも関わることです。


 この事件に関し、今後も報道を注視してゆきたいと思います。



 【参考エントリ】


 海自江田島で私的制裁か:格闘訓練で隊員死亡



 【参考HP】


 日本国防衛省HP 『防衛大臣記者会見の概要 10月22日』





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