■国籍不明潜水艦が日本の領海を侵犯
【国籍不明艦が領海侵犯 高知沖 防衛省が発表 (1/2ページ)】
(読売新聞 9月14日)
【国籍不明艦が領海侵犯 高知沖 防衛省が発表 (2/2ページ)】
(読売新聞 9月14日)
14日午前6時56分ごろ、高知県足摺岬の豊後水道周辺の領海内で、国籍不明の潜水艦が潜望鏡を出して航行しているのを、周辺海域を航行していた海上自衛隊のイージス艦「あたご」が発見した。あたごはソナー(水中音波探知機)による捜索を続けたが、約1時間半後に見失った。防衛省は国籍不明の潜水艦による領海侵犯事件としてP3C哨戒機や護衛艦などを出して潜水艦の行方を捜索している。
照会結果などから潜水艦は自衛隊や米軍所属でないことが判明した。あたごに発見された潜水艦は領海内を南方に5分程度航行し、領海外に出た可能性が高いという。あたごは潜水艦を発見後、アクティブソナーによる水中音波探査などを使い追尾を続けたが、潜水艦は午前8時39分に追跡を振り切った。
防衛省によると、潜水艦が発見されたのは、足摺岬の南南西約57キロで、日本領海の内側約7キロの海域。あたごの艦長や見張り員が潜望鏡らしきものを目視で確認した。外国の潜水艦は領海内では浮上航行が国連海洋法条約で決められており、潜望鏡を出しての航行は領海侵犯だとすれば意図的だった可能性が高い。
福田康夫首相は14日、防衛省に「追尾、情報収集を徹底して、万全の態勢をとるように」と指示した。政府は、潜水艦の国籍が判明すれば、相手国に抗議し、再発防止を求める方針だ。林芳正防衛相は同日、「(イージス艦の)アクティブソナーなどから判断しておそらく潜水艦だろう」と述べた。ただ、防衛省関係者は「クジラや魚群を潜水艦と誤認するケースは多い。潜水艦でない可能性も含めて慎重に調べている」と語った。
外国潜水艦の領海侵犯事件では、平成16年11月に中国の潜水艦が沖縄県石垣島周辺の領海を侵犯し、政府が海上警備行動を発令したケースがある。政府は中国海軍の原子力潜水艦と断定し、中国側に抗議した。
防衛相は警察機関では対処が不可能と認められる事態が発生した場合、首相の承認を得て自衛隊部隊に海上警備行動を発令することができる。今回は潜水艦と判断した時点ですでに領海外に出ており、再び領海内に引き返す可能性が低いことから発令を見送った。
・今回の領海侵犯事案
ここまで出張ってくる潜水艦は、中国の潜水艦しか考えられません。
しかも、中国大陸から見て、大隅海峡、奄美大島~宝島、沖縄本島~宮古島、与那国島~台湾、及び台湾海峡の5箇所の国際海峡を越えた潜水艦活動ではなく、四国・九州海域(豊後水道)の活動であり、明確な政治的意図を持って行われた潜水艦活動であることが読み取れます。
なぜここまで領海侵犯を行われていながら、海上警備行動を発令しないのか、はなはだ疑問です。
2004年(平成16年)11月10日、中国海軍の「漢」級原子力潜水艦が日本の領海侵犯事件を行った事件では、国土交通省と防衛庁との間の調整と政治決断に時間がかかり過ぎたため、中国政府は中国海軍所属潜水艦による日本領海侵犯を認めない中で、日本政府は国籍不明潜水艦として海上警備行動を発令しました。
2004年の領海侵犯事件の背景には、中国の外洋志向が根底にあります。
これによれば中国海軍は、将来的に大洋艦隊を創設することを目指しており、その際に国益を維持する制海権を握るラインとして、「第一列島線」での沿岸防衛海軍から、「第二列島線」を主眼とした外洋海軍への発展を目論んでおり、台湾有事の際にアメリカ海軍の空母打撃群や原子力潜水艦を足止めする海域として「第一列島線」を考えており、「第二列島線」の米原潜基地グアムへも偵察活動を意図するようになりました。
・「第一列島線」と「第二列島線」
また、第一列島線では東シナ海ガス田問題が日本との間で問題となっており、中国軍は示威的な軍事活動を強めています。
・東シナ海日中境界線付近で示威行動を取る中国の爆撃機
南シナ海での活動も活発で、南沙諸島、西沙諸島での中国の領土拡大の意図は明白で著しいものがあります。
・東沙諸島での中国軍漁業施設
これらの東沙諸島、西沙諸島での中国軍の覇権拡大は、ベトナムやブルネイ、フィリピンなどの周辺国との摩擦が大きくなっています。
何より、南シナ海は日本の重要なシーレーンであり、ここに中国軍が一定の影響力を保持してゆくということは、長期的に見て日本の国益を阻害する懸案となっています。
・日本のシーレーン
中国名インド洋での覇権拡大も視野に入れており、ミャンマーのココ諸島、パキスタンのグワダル港湾の整備に力を注ぎ、日本のシーレーンを脅かしています。
再度、日本近海に目をやると、沖縄近海では、中国の海洋調査船が潜水艦の運用能力向上のために海水温の分布や海底地形を探査しており、日本政府に無断で日本の排他的経済水域内での海洋調査を続けており、日中政府の懸案になっています。
また、近年では中国政府より、沖ノ鳥島周辺の日本政府の排他的経済水域(EEZ)の主張に対する異議が申し立てられています。
2004年(平成16年)頃に、中華人民共和国が沖ノ鳥島を「岩」だと主張し、これを日本領と認めず、日本に無断で周辺の海洋調査を進めています。
2001年頃から、中国海洋調査船による調査が沖ノ鳥島近海の日本排他的経済水域内で多く行われ、この件について日本は2004年、事務レベル協議で抗議しました。これに対し2004年4月11日、中国側は、沖ノ鳥島は「島」ではなく「岩」であり、日本の領土とは認めるが、排他的経済水域は設定出来ないと主張しました。
この中国の主張は、アメリカとの軍事的対立に備えて、この海域の詳細な海図を製作するためといわれていまうす中国は南西諸島を「第一列島線」、小笠原諸島からマリアナ諸島、グアム、パラオを結ぶ線を「第二列島線」として、自国の防衛網に組み入れています。この両列島線のほぼ中間に位置するのが沖ノ鳥島であり、この周辺の広大な海域が確保されていないと、軍事行動に大きな支障をきたすため、近年になってこのような主張を行っていると考えられています。
日本がインド洋で行っている有志国艦艇への給油活動は、危機に晒されています。
公明党が党利を優先し、海自のインド洋派遣を諮るべき臨時国会の会期を短くするよう強く求めているためです。
先日には、イラクに派遣されている空自の輸送部隊が撤退されることが発表されました。
テロとも戦いに名を連ねている日本がインド洋でのプレゼンスを喪失するとなれば、中国によるインド洋覇権は大きく伸張する事となるでしょう。
それ以上に、対テロ戦争から身を引くと表明した日本の国際的信用力に傷がつくことは明白なはずです。
そうならぬよう、国会議員の皆様には、日本の安全保障政策を実証的に指向し、インド洋での給油活動継続に努力を傾注する必要があるということを、重々承知していただきたいものです。
【参考HP】
■週刊オブイェクト 様
■NIPPON MARITAIME CENTER 『中国のエネルギー・ルート多様化戦略とマラッカ・シンガポール海峡』 (※PDF形式)
【参考書籍】
平松茂雄
志方 俊之
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